悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。


「うっさいなクロム。こういう怪談話で大事なのは、聞き手を怖がらせること。本当かどうかなんてどうでもいいんだよ」
「そういうものなのですか。それは失礼」

 クロムって絶対、小中学校の修学旅行で夜中にほかの男子が盛り上がっていても一緒にバカ騒ぎしない学級委員長タイプよね。わが弟ながら、お固い。

「そんなに否定するならクロムが本当にあった怖い話してよ。作り話じゃない怖いやつ」
「……そうですね。伯父上の領地の話なら」

 コホンと咳ばらいを一つ。

「10年前のことだ。ソノ村という村で盗難事件が相次いだ。はじめのころは置物だったり、ペンだったり、些細なものだった。村人は犯人を捕まえようと話し合い、張り込んだけれど、その間事件は起こらず。あきらめて張り込みをやめたころにペンダントが盗まれた。まるで張り込みがあるのを知っていたかのような犯人の行動パターンを怪しみ、一人の若者が誰にも言わず張り番をした。そうしたら、犯人はなんと村長だったんだ」

 ものすごく真剣な顔で話すからどんな怖い話なのかと思ったら、盗難事件の話だった。

「……クロム。それのどこが怖い話なの?」

「怖くないですか姉上。信頼して村を任せていた村長が窃盗犯なんですよ!? 領主は誰を信じたらいいんですか」

「あーはいはい。領主目線だとたしかに怖いかもしれないけどさ、うん。おれが聞きたいのはそういうんじゃないんだよクロム。ホラー! ゴーストが出るやつ!」

「そうだったのか」

 怖いの意味がかみ合わない次期当主二人。