悪役令嬢に転生した干物女は酒の肴を食べたい。

 母親との、幼い日の思い出を語るコリンはさみしそうだ。銀座のセレブメニューを語るときよりよっぽどいい顔をする。

「まだクリームを作っただけだから、今日は予定変更してシュークリームにしましょうか」
「えええっ」

 コリンがパッと顔を上げる。嫌って顔ではないからシュークリームでいいな。

「シュー生地を作ったら、あなたもクリームを詰めるときに手伝って」

「えー。あたし、お客様で公爵令嬢なのに」

「前に同じことを言った次期伯爵がいたけど、問答無用で手伝わせたわよ」

「ってことはミゲル? あの天使に料理させる人間がいるなんて」

 私たちのいる世界のミゲルは転生者で、しかも中身がヒモ男ってことは言わないほうがいいのかもしれない。乙女の夢を壊しちゃいけない。

「それでねー、あたしモデルになりたくて東京に行ったんだけどオーディション落ちまくって、あきらめて就職して、たまの贅沢が銀座のスイーツだったの」

「へえ、私は東京に行こうって思わなくて県外に出なかったの。ガッツがあるのねあなた」

 コリンが上京する前の話を聞いてシュー生地を作る。