次の日。
世界はすでにおかしくなっていた。
朝の教室、ドアを開けた瞬間に分かった。
空気が、おかしい。
ねっとりとした気配。
いつもならうるさいはずの場所。
なのに、今日は奇妙なほど静かだ。
みんな、自分の席に座っている。
誰1人として前を向いていない。
スマホ。
スマホ。
スマホ。
その顔には、笑みがあった。
楽しそうな笑いじゃない。
カチ、カチ、カチ、カチ。
画面をタップする音が嫌なほど大きく聞こえる。
「あ、十愛、おはよ」
友達が私に気づいて近づいてきた。
その目が輝いている。
「ねえ、これ見た?」
友達がスマホを突きつけてくる。
画面には、クラスメイトのストーリー。
学年のカーストの頂点麗奈。
神様の言うことは、絶対だ。
『陸上部のエースくん、裏垢特定ww』
『表では爽やかぶって、裏ではみんなのことアホって言ってますwwマジ幻滅』
スクショに並ぶ、醜い言葉の数々。
アイコンは真っ黒な画像。
(嘘……)
頭が凍りつく。
「ヤバいよね」
友達が囁く。
「キモいよね」
別の女子が繋ぐ。
「信じられない」
また別の声。
みんなが、同じ言葉を口にする。
みんなが、頷き合う。
その光景がひどく恐ろしい。
個人の意志なんてそこにはなく、全員の脳が同期しているみたいだ。
「十愛もそう思うでしょ?」
友達の顔が目の前に迫る。
『お前はどっち側だ?』と。
もしここで違った答えを出せば、次は自分が殺される。
教室の隅の席を見る。
そこにはすでにそれがあった。
彼方の席。
机の上に、びっしり貼られた付箋と油性ペンでの落書き。
『裏切り者』『キモい』
まだ彼は登校していない。
本人がいない場所で、世界はもう彼を悪と決定していた。
綺麗な朝の光が窓から差し込んでいる。
それなのに、教室の中は狂気のみ。
「ねえ、十愛」
友達の手が、私の肩に置かれる。
「な、なに?」
「彼方くんって、サイコパスだよね」
みんなの視線が、私に集まる。
私は、息を吸い込んだ。
「……うん」
自分の声が、他人のものみたいに聞こえた。
「そうだね。最低だと思う」
その瞬間、みんなが満足そうに笑った。
私の心は、完全に死んだ。
世界はすでにおかしくなっていた。
朝の教室、ドアを開けた瞬間に分かった。
空気が、おかしい。
ねっとりとした気配。
いつもならうるさいはずの場所。
なのに、今日は奇妙なほど静かだ。
みんな、自分の席に座っている。
誰1人として前を向いていない。
スマホ。
スマホ。
スマホ。
その顔には、笑みがあった。
楽しそうな笑いじゃない。
カチ、カチ、カチ、カチ。
画面をタップする音が嫌なほど大きく聞こえる。
「あ、十愛、おはよ」
友達が私に気づいて近づいてきた。
その目が輝いている。
「ねえ、これ見た?」
友達がスマホを突きつけてくる。
画面には、クラスメイトのストーリー。
学年のカーストの頂点麗奈。
神様の言うことは、絶対だ。
『陸上部のエースくん、裏垢特定ww』
『表では爽やかぶって、裏ではみんなのことアホって言ってますwwマジ幻滅』
スクショに並ぶ、醜い言葉の数々。
アイコンは真っ黒な画像。
(嘘……)
頭が凍りつく。
「ヤバいよね」
友達が囁く。
「キモいよね」
別の女子が繋ぐ。
「信じられない」
また別の声。
みんなが、同じ言葉を口にする。
みんなが、頷き合う。
その光景がひどく恐ろしい。
個人の意志なんてそこにはなく、全員の脳が同期しているみたいだ。
「十愛もそう思うでしょ?」
友達の顔が目の前に迫る。
『お前はどっち側だ?』と。
もしここで違った答えを出せば、次は自分が殺される。
教室の隅の席を見る。
そこにはすでにそれがあった。
彼方の席。
机の上に、びっしり貼られた付箋と油性ペンでの落書き。
『裏切り者』『キモい』
まだ彼は登校していない。
本人がいない場所で、世界はもう彼を悪と決定していた。
綺麗な朝の光が窓から差し込んでいる。
それなのに、教室の中は狂気のみ。
「ねえ、十愛」
友達の手が、私の肩に置かれる。
「な、なに?」
「彼方くんって、サイコパスだよね」
みんなの視線が、私に集まる。
私は、息を吸い込んだ。
「……うん」
自分の声が、他人のものみたいに聞こえた。
「そうだね。最低だと思う」
その瞬間、みんなが満足そうに笑った。
私の心は、完全に死んだ。



