私は一歩前に出た。
彼の手をギューッと握りしめた。
「十愛……?」
「いいよ、別に。彼方がどれだけ私のことキモいと思ってても、どうでもいいって」
私は彼の目を見つめた。
「私、彼方の綺麗なところだけが好きだったわけじゃないし。裏で愚痴を吐いてるとこが、もっと大好き」
彼方の目が丸くなった。
王子様だから信じるんじゃない。
綺麗な正解なんてこの世界には最初からどこにもない。
だったら私は、私の意志でこの目の前にいる、めんどくさい生身の人間を、全部引き受ける。
それが私だけの正解なのだろう。
「行くよ彼方」
彼方の手を引いて私はまた歩き出した。
彼方は気まずそうに私の後ろをついてくる。
教室のドアの前に立つ。
向こう側からは、いつものざわざわ声が聞こえる。
(みんなは、誰かをたたいて正義の味方になった気でいるんだ)
だったらぶち壊してやる。
誰かが作った、そのくだらないままごとの世界を。
ガラガラ、と。
私は自分の手で、教室のドアを開けた。
一瞬で教室の中が静まり返る。
みんなスマホを隠すようにして一斉に私たちを見た。
麗奈が真ん中でニヤニヤしながらこっちを見ている。
私の友達は気まずそうに目を逸らした。
私は、教壇に向かって真っ直ぐに歩いた。
彼方の手を握ったまま。
「おい、十愛、何して……」
彼方が焦った声を出す。
教壇の上に立ち、私は教室全体を見下ろした。
みんな変な物を見るような目で私を見ている。
私は大きく息を吸い込んだ。
そして大声で叫んだ。
「みんな。スマホ見るのやめて私のこと見て」
全員が驚いた顔をした。
笑みが消える。
「麗奈なんかがストーリーに載せた彼方の裏垢、全部本物だよ。彼方は本当に、みんなのこと中身のない自慢ばっかでアホらしいって思ってたし、私のこともストーカーっぽくてキモいって思ってたって」
「え、十愛……何言って!?」
彼方が絶句している。
クラスのあちこちから「え、マジ?」「やっぱキモいじゃん」と声が広がる。
「でも!!」
私はそれをさらにでかい声でかき消した。
「キモいのは彼方じゃなくて私」
誰も声を出せない。
「私は昨日、みんなにハブられるのが怖くて本当は彼方のことが大好きなのに、最低だって嘘をつきました……。中学のときも同じことをした。自分が傷つきたくないからって友達を1人ぼっちにして学校来れなくした。……私はずっと……卑怯者」
涙が、ボトボト溢れてきた。
なのに、不思議なくらい苦しくなかった。
「みんなもそうでしょ!?」
私はクラスのみんなを指差し、もう一度大きな声で叫んだ。
「誰かが悪い奴だって言ったら、自分で確かめもしないで一斉に群がって叩いてさ!!自分は何も悪くないフリをして、みんな自分の意見なんか1個も持ってないじゃん!!」
誰も何も言い返せない。
みんなただ口を開けて私を見上げている。
麗奈の顔が真っ赤に変わっていく。
「勝手に裏垢をのぞき見して、正義の味方ぶるのもうやめなよ」
私は教壇から足を踏み出した。
「私は、どれだけ性格が悪くてもこの彼方が大好きなの。みんなが何と言おうと知らない!文句がある奴は直接私に言いに来いよ!」
言い切った瞬間身体が軽くなった。
私は教壇を降りて、呆然と立ち尽くしている彼方の元へ歩み寄った。
彼の顔は呆れたような笑顔に変わっていた。
「……十愛、お前本当にやばいな」
「は、何?あんたに言われたくないよ」
私は、彼の手を引っ張った。
彼方はもう何も言い返さなかった。
ただ後ろからてくてくついてくる。
私たちは繋いだ手を離すことなく自分たちの席へ向かって歩き出した。
クラスのみんなが、私たちのことをガチのキモい奴らを見る目で避けていく。
私の左手には彼の手。
『17歳というのは、こういうものだ』
ガラガラ、と。
ドアが閉まる音を聞きながら、私は自分の椅子に腰を下ろした。
彼の手をギューッと握りしめた。
「十愛……?」
「いいよ、別に。彼方がどれだけ私のことキモいと思ってても、どうでもいいって」
私は彼の目を見つめた。
「私、彼方の綺麗なところだけが好きだったわけじゃないし。裏で愚痴を吐いてるとこが、もっと大好き」
彼方の目が丸くなった。
王子様だから信じるんじゃない。
綺麗な正解なんてこの世界には最初からどこにもない。
だったら私は、私の意志でこの目の前にいる、めんどくさい生身の人間を、全部引き受ける。
それが私だけの正解なのだろう。
「行くよ彼方」
彼方の手を引いて私はまた歩き出した。
彼方は気まずそうに私の後ろをついてくる。
教室のドアの前に立つ。
向こう側からは、いつものざわざわ声が聞こえる。
(みんなは、誰かをたたいて正義の味方になった気でいるんだ)
だったらぶち壊してやる。
誰かが作った、そのくだらないままごとの世界を。
ガラガラ、と。
私は自分の手で、教室のドアを開けた。
一瞬で教室の中が静まり返る。
みんなスマホを隠すようにして一斉に私たちを見た。
麗奈が真ん中でニヤニヤしながらこっちを見ている。
私の友達は気まずそうに目を逸らした。
私は、教壇に向かって真っ直ぐに歩いた。
彼方の手を握ったまま。
「おい、十愛、何して……」
彼方が焦った声を出す。
教壇の上に立ち、私は教室全体を見下ろした。
みんな変な物を見るような目で私を見ている。
私は大きく息を吸い込んだ。
そして大声で叫んだ。
「みんな。スマホ見るのやめて私のこと見て」
全員が驚いた顔をした。
笑みが消える。
「麗奈なんかがストーリーに載せた彼方の裏垢、全部本物だよ。彼方は本当に、みんなのこと中身のない自慢ばっかでアホらしいって思ってたし、私のこともストーカーっぽくてキモいって思ってたって」
「え、十愛……何言って!?」
彼方が絶句している。
クラスのあちこちから「え、マジ?」「やっぱキモいじゃん」と声が広がる。
「でも!!」
私はそれをさらにでかい声でかき消した。
「キモいのは彼方じゃなくて私」
誰も声を出せない。
「私は昨日、みんなにハブられるのが怖くて本当は彼方のことが大好きなのに、最低だって嘘をつきました……。中学のときも同じことをした。自分が傷つきたくないからって友達を1人ぼっちにして学校来れなくした。……私はずっと……卑怯者」
涙が、ボトボト溢れてきた。
なのに、不思議なくらい苦しくなかった。
「みんなもそうでしょ!?」
私はクラスのみんなを指差し、もう一度大きな声で叫んだ。
「誰かが悪い奴だって言ったら、自分で確かめもしないで一斉に群がって叩いてさ!!自分は何も悪くないフリをして、みんな自分の意見なんか1個も持ってないじゃん!!」
誰も何も言い返せない。
みんなただ口を開けて私を見上げている。
麗奈の顔が真っ赤に変わっていく。
「勝手に裏垢をのぞき見して、正義の味方ぶるのもうやめなよ」
私は教壇から足を踏み出した。
「私は、どれだけ性格が悪くてもこの彼方が大好きなの。みんなが何と言おうと知らない!文句がある奴は直接私に言いに来いよ!」
言い切った瞬間身体が軽くなった。
私は教壇を降りて、呆然と立ち尽くしている彼方の元へ歩み寄った。
彼の顔は呆れたような笑顔に変わっていた。
「……十愛、お前本当にやばいな」
「は、何?あんたに言われたくないよ」
私は、彼の手を引っ張った。
彼方はもう何も言い返さなかった。
ただ後ろからてくてくついてくる。
私たちは繋いだ手を離すことなく自分たちの席へ向かって歩き出した。
クラスのみんなが、私たちのことをガチのキモい奴らを見る目で避けていく。
私の左手には彼の手。
『17歳というのは、こういうものだ』
ガラガラ、と。
ドアが閉まる音を聞きながら、私は自分の椅子に腰を下ろした。



