合理的な俺が、幼なじみを愛してしまった理由

 そうに、違いない。他に理由など、あるはずがないのだ。
 幼なじみ、なんて……俺たちは、そんなどこにでもいるような間柄なのか。

「お前さ……自分がなんでそんなに不機嫌なのか、本当に分かってないだろ」
「っ、俺は別に……!」
「俺が他の奴と仲良くするのが嫌なら、幼なじみなんて曖昧な位置にいるなよ。……俺は、お前が好きだ。ずっと前から」

 怜依の胸に両手を置き、見つめあった。こいつの綺麗な瞳を見つめ、俺は気がついてしまった。
 小林と仲良くするのが、嫌いな理由。イライラするなど、非効率だ。

 人は感情が高ぶると、余計な失態を犯す。それなのに、俺としたことが無意味なことをしていた。
 怜依の真っ直ぐな、告白。俺は自分が、浅はかだったことに気がついた。

 もっと、前から知っていた。俺の気持ちなど、当の昔に決まっていた。

 俺は、怜依が好きだ。

 怜依以外など、眼中にない。どうして、今まで分からなかったんだ。

「怜依……俺は」

 怜依の胸に耳を当て、鼓動を聞く。好きだから、全てが欲しかったんだ。
 一緒に住みたいのも、料理が食べたいのも。そんなの、昔からずっと知っていた。

 しかしこいつは、俺とは違う。真逆と言っても、問題ない。
 俺は自分でも言うのもどうかと思うが、非常にめんどくさい。

 怜依に依存して、離れられないようにしていた。甘えて、俺以外を見ないように仕向けていた。
 怜依は、自分とは違い社交的だ。スポーツだけではなく、それ以外にも頼りにされることが多い。

 友達も多く、恋愛感情を向けられることが多かった。そのため、無意識に心に蓋をしていた。

「涼平、お前の気持ちをきか……んぐっ!」
「痛い」
「それは、こっちのセリフだ……今のって」
「……察せよ、馬鹿」

 怜依が全て言う前に、俺は唇を重ねた。素直に言うのは、こっぱずかしいからだ。
 初めてのため、歯が当たってしまった。計算外だったが、悪くないな。

 思わず胸ぐらを掴んだため、色気も何もないが。これから、幾度となくするのだから。
 少しづつ、上手くなればいい。痛いと告げると、呆れ返っていた。

 目を丸くして、驚いている。俺は手を離し、怜依の胸に顔を埋めた。
 優しく抱きしめてくれて、心地いい。やはり、こいつは俺のものだ。

「涼平、好きだ。もう、我慢しなくていいんだな」
「ああ、いいぞ」
「言っている意味、理解してんのか」
「く……暗いし、雷も鳴っている……こ、心細いわけじゃないが……このままがいい」
「……敵わないな、お前には。可愛い」
「可愛くなどない。男がそんな風に言われても、嬉しくな」
「はいはい。可愛いよ、涼平」

 見上げると、甘い顔をしている。胸の鼓動が早いが、これが好きと言うことなんだな。
 理論では、分からないものだ。恋愛などくだらないと思っていたが、これはいいものだ。

 これから、デートに行こう。遊園地に水族館に、温泉旅行に京都もいいな。
 考えてみたら、家族や修学旅行で行っている。今更、目新しいものはないな。

 まあ、怜依となら全てが楽しい。輝いて見えて、有意義な時間になるだろう。
 怜依に頬を触られて、耳に手が当たる。くすぐったくて、思わず目を閉じてしまう。

 キスをされ、軽く触れ合った。ギュッと抱きしめられ、胸にすがりつく。
 可愛いと言われるが、怜依の方が可愛い。それだけは、絶対に譲れないぞ。

「腹が減った」
「お前な……昨日、付き合ったばっかだぞ」
「だから?」

 次の日、怜依の作るご飯の音で目が覚めた。いつものことだが、今日は違って見える。
 外は、綺麗な青空が見える。俺は立ち上がり、頃合いを見計らい後ろから抱きつく。

 照れ隠しに、腹が減ったとアピールする。怜依は今まで通りに、気にせずに料理を作っている。
 しかし俺には、分るようになった。耳だけではなく、うなじまでも赤くなっている。

 今までは、風邪だと思っていた。しかし俺が好きだから、赤くなっている。
 急激に嬉しくなって、うなじにキスをした。体を震わせており、可愛い。
 もっとしたいが、腹が減ったため離れた。とりあえず、顔を洗ってこよう。

「付き合ったんだ。一緒に住もう」
「まあ、断る理由ないし。お互いの両親に聞いてからな」
「ふむ、所謂……プロポーズだな」
「飛躍しすぎ……まあ、それでいいか」

 朝ごはんを食べながら、俺は同棲を提案した。すると怜依は、そっけない態度を取っている。
 それでも嬉しそうに、顔が綻んでいる。最近流行りの、ツンデレというやつか。

 可愛いな、見ていて飽きない。口元に、米粒がついているのも愛おしい。
 お互いにプロポーズしたのだから、結婚も秒読みだな。日本では、男同士は無理だ。

 大学を卒業したら、海外で入籍するか。挙式は、ハワイもいいな。
 美味しいもの、たくさんあるし。怜依のご飯に勝るものは、この世界には存在しないが。

「少し肌寒くなったから、上着を羽織れ」
「今日は、お前と上着が同じか……」
「……おう」

 大学に向かうために、俺は玄関で靴を履いていた。すると肩にふわっと、上着を書けられた。
 高校の時に、お揃いで買ったものだ。一緒に着たいと言っても、恥ずかしがっていた。

 しかしそれを着るということは、付き合っている。その事実が、頭を駆け巡る。
 やはり、最高の嫁である。俺は嬉しすぎて、ニヤけてしまう。

 お互いに目が合って、逸らしてしまう。それでも、どちらか共なく手を繋ぐ。
 好奇な目に、晒されることもあると思う、大好きな怜依となら、乗り越えていける。

 今までなら、そんなものは非効率だと思っていた。面倒で、時間も取られる。
 だから、恋愛なんて必要ないと思っていた。

 けれどーー怜依と一緒にいられるなら、非効率でも構わない。

 それが、俺が出した結論だった。早く、弁当が食べたい。