十人一色 ─トランスジェンダーをかかえたふたり─

「一組は科学だったらしいから、今から行こ。日直だから片付けしてるってさ」

 希紗に言われるままついていく。
 二階の奥にある科学室は、なんだか薄暗い。

 科学室に入ると、黒板の文字を消していた生徒がこちらを向いた。

 真っ黒いライダージャケットを着た、ショートヘアの女子だ。

「よう」

 その子は希紗に片手を上げてあいさつした。

「リク。日直おつかれ」
「なんか用か?」

 リクって基本、男の名前だ。

 見る限りこの子は女子のようだけど、リクはその名で呼ばれることを受け入れている。

 希紗は和香のほうに振り返って、リクと呼んだ子を紹介してくれた。

「ミズっち、紹介するね。同じ中学だったリクだよ」

 正面から向き合うと、リクは赤茶に染めた短髪がよく似合う人だった。

 体型はひと目で女子とわかるけど、仕草はどこか男性じみている。

「オレは田部涼子《たべりょうこ》。あんま自分の名前好きじゃないからさ、リクって呼んでくれ」

 涼子……いや、リクはニカッと歯を見せて笑う。

 喋り方も女らしさはかけらもなくて。

 たしかに、和香と似ている。

 容姿はまったく似ていないけれど、内面、気質が似ていると本能で感じた。