十人一色 ─トランスジェンダーをかかえたふたり─

 三時限目、いかにもな講師が来た。

 寝癖一つない、黒髪をピッチリひっつめた中年女性だ。

 講習会用大教室で、プリントを見ながら講師の話を聞く。

「いいですか? 化粧はナチュラル、派手になりすぎないように。男子は面接室に入ったら座るとき膝の上に拳を乗せる。女性は膝の上で手を重ね合わせる。どこの面接に行っても必ずこれを守ってくださいね。最低限のマナーです」

「靴下は白。マスクは白か黒です。柄物はマナー違反です。面接のときは面接官にいいと言われるまで着席しないように──」

 何色でもいいじゃんそんなの。
 とツッコミたくなるマナーがちらほらある。

「それでは、教室前に用意した椅子に、面接室に入るていで5人ずつ座ってください」
 
 講師に言われるまま5人ずつ座り方を指導されていき、和香の番がきた。

 プリントの指示にあるよう座ってみたが、講師の目がきつく光った。

「あなた、なんでパンツスーツなの? スカートのスーツは持ってないの?」