誰かと同じ場所にいなければ、友達ではいられないのだと思っていた。
*
海へ行った友人たちの写真が、クラスのグループチャットへ届き始めたのは昼を少し過ぎた頃だった。
岸本沙波は自室の床に座り、図書館で借りた本を読んでいたが、机の上へ伏せていたスマートフォンが何度も震えるので、栞を挟んで画面を確かめた。
青い海を背に、四人の女子が顔を寄せている。次の写真では、砂浜に並べたサンダル。その次には、色の違うかき氷を手にした写真があり、《暑すぎ》《でも最高!》《沙波も来ればよかったのにー》とメッセージが続いていた。
楽しそうだと思った。写真の中にいるのは、学校では毎日のように話している友人たちである。誰かと喧嘩をしたわけでもなければ、仲間外れにされたわけでもない。誘われたのに行かないと決めたのは自分なのだから、寂しさを覚える資格がないようにも思えた。
けれど、胸に生まれた感情はそれほど単純ではなかった。
行けばよかった、とは思わない。それでも、自分だけが知らない一日を友人たちが共有していることには、取り残されたような心許なさがある。
《今度は沙波もね!》
名指しで届いた言葉に、沙波は、
《うん! 写真楽しそう》
と返した。
すぐにハートのついたスタンプが返ってくる。
それで会話は終わった。
沙波はスマートフォンを伏せ、読みかけの本を開いたものの、文字が頭へ入ってこなかった。
学校では、四人で行動することが多い。昼休みには同じ机を囲み、移動教室にも一緒に行く。体育で二人組を作れと言われれば、人数に合わせて自然に組み替えるし、放課後に寄り道をする時にはグループチャットで声を掛け合う。
誰か一人と特別に親しいわけではない代わりに、特別に仲が悪い相手もいない。
それで十分だと思っていた。浅いのか深いのかなど考えたこともなく、友達とは、学校で一緒に過ごし、遊びに誘われれば参加し、誕生日にはメッセージを送り合う人たちなのだと思っていた。
それなのに、一度だけ自分から「行かない」と言った途端、その関係が急に不確かなものに見えてくる。
誘いに参加しなくても友達でいられるのか、次も断ったらどうなるのかと考え始めると、胸の奥が落ち着かなかった。
何度も断るうちに誘われなくなり、いつか教室でも話さなくなるのだろうか。
そこまで考えたところで、沙波は本を閉じた。
行かなかったことを後悔しているのではない。行かなかった自分が、この先どう扱われるのかを怖がっている。
その違いに気づくと、かえって落ち着かなかった。
*
海へ行った友人たちの写真が、クラスのグループチャットへ届き始めたのは昼を少し過ぎた頃だった。
岸本沙波は自室の床に座り、図書館で借りた本を読んでいたが、机の上へ伏せていたスマートフォンが何度も震えるので、栞を挟んで画面を確かめた。
青い海を背に、四人の女子が顔を寄せている。次の写真では、砂浜に並べたサンダル。その次には、色の違うかき氷を手にした写真があり、《暑すぎ》《でも最高!》《沙波も来ればよかったのにー》とメッセージが続いていた。
楽しそうだと思った。写真の中にいるのは、学校では毎日のように話している友人たちである。誰かと喧嘩をしたわけでもなければ、仲間外れにされたわけでもない。誘われたのに行かないと決めたのは自分なのだから、寂しさを覚える資格がないようにも思えた。
けれど、胸に生まれた感情はそれほど単純ではなかった。
行けばよかった、とは思わない。それでも、自分だけが知らない一日を友人たちが共有していることには、取り残されたような心許なさがある。
《今度は沙波もね!》
名指しで届いた言葉に、沙波は、
《うん! 写真楽しそう》
と返した。
すぐにハートのついたスタンプが返ってくる。
それで会話は終わった。
沙波はスマートフォンを伏せ、読みかけの本を開いたものの、文字が頭へ入ってこなかった。
学校では、四人で行動することが多い。昼休みには同じ机を囲み、移動教室にも一緒に行く。体育で二人組を作れと言われれば、人数に合わせて自然に組み替えるし、放課後に寄り道をする時にはグループチャットで声を掛け合う。
誰か一人と特別に親しいわけではない代わりに、特別に仲が悪い相手もいない。
それで十分だと思っていた。浅いのか深いのかなど考えたこともなく、友達とは、学校で一緒に過ごし、遊びに誘われれば参加し、誕生日にはメッセージを送り合う人たちなのだと思っていた。
それなのに、一度だけ自分から「行かない」と言った途端、その関係が急に不確かなものに見えてくる。
誘いに参加しなくても友達でいられるのか、次も断ったらどうなるのかと考え始めると、胸の奥が落ち着かなかった。
何度も断るうちに誘われなくなり、いつか教室でも話さなくなるのだろうか。
そこまで考えたところで、沙波は本を閉じた。
行かなかったことを後悔しているのではない。行かなかった自分が、この先どう扱われるのかを怖がっている。
その違いに気づくと、かえって落ち着かなかった。


