あやかしの癒し子 ~餌として捨てられた私は、鬼の王の唯一となる~

 宴は賑やかさを増していた。
 酒が進んだこともあり、初めは緊張していた祓い師たちも、次第に口数が増えている。
 やがて数人が、九重に促されながら紫鬼のもとへやってきた。

 「紫鬼殿、今回の異形化について、ひとつお伺いしたいことが」

 「話せ」

 九重が間に入り、双方の話を取り持つ。
 奈津はその様子を見つめていたが、ふと広間の熱気が少し息苦しく感じた。

 少しだけ、夜風に当たりたい。
 奈津はそっと席を立ち、広間を抜け出した。

 ◇

 庭へ出ると、ひんやりとした夜風が頬を撫でた。
 奈津は小さく息を吐く。宴の賑やかな声が、遠くに聞こえている。
 しばらく夜空を仰いでいた、その時。

 「奈津」

 背後からかかった声に、奈津の身体が強張る。
 振り返ると、宗一が立っていた。

 「……宗一様」

 「少し、話せないか」

 奈津は無意識に距離を取る。

 「……何のお話でしょう」

 その反応にも構わず、宗一は奈津をじっと見つめていた。
 どこか熱を帯びた視線に、奈津は居心地の悪さを覚える。

 「何だか……変わったな」

 「え?」

 「前より顔色もいい」

 宗一は奈津の顔を見つめたまま、続ける。

 「……綺麗になったな」

 奈津は言葉を失った。
 今さらそんな言葉を向けられても、どう受け取ればいいのか分からない。

 「……何のつもりですか」

 「僕が今回ここへ来たのは」

 宗一が一歩、奈津へ近づく。

 「お前と話すためだ」

 「……私と?」

 「ああ」

 奈津の胸に、嫌な予感が広がる。

 「奈津」

 宗一が、まっすぐに奈津を見つめた。

 「僕たち――もう一度、やり直さないか?」