あやかしの癒し子 ~餌として捨てられた私は、鬼の王の唯一となる~

 一行はそのまま客間へ通された。
 近頃相次いでいる異形化について、滞在中に双方が把握している事例や状況を共有すること。
 簡単に今回の目的を確認したのち、その場はいったん解散となった。

 そして、その日の夜。
 人間側の一行を迎えるため、ささやかな宴が開かれることになった。

 もっとも、紫鬼は当初「宴など必要ない」と一蹴したらしい。
 けれど九重が、
 「数日とはいえ、正式に迎え入れた客人です。形だけでも歓迎の意をお見せになるべきかと」
 と説得し、ようやく開催が決まったのだという。

 広間には、普段よりも豪華な料理と酒がずらりと並べられていた。
 奈津は、紫鬼によって当然のようにその隣へ座らされていた。
 すぐそばにはコマもいる。
 そして紫鬼の両脇を固めるように、九重や夜刀。
 その周囲には堂目道家の鬼たちが席につき、人間側の祓い師たちも向かい合うように座っている。

 「……まさか、これほどのもてなしを受けるとは」

 祓い師の一人が、驚いたように呟いた。
 堂目道家は、妖の中でも最上位に位置する一族。
 そのうえ排他的で、外部の者――とりわけ人間を容易には受け入れないことで知られている。
 そんな堂目道家の鬼たちと同じ席につき、酒まで酌み交わすことになるとは思っていなかったのだろう。

 すると、コマが嬉しそうに胸を張った。

 「奈津様のおかげです!」

 「え?」

 奈津が目を瞬く。

 「奈津様が来てから、このお屋敷、前よりずっと変わったんです」

 「コ、コマ……」

 「人間を信用してなかった方たちも、今では奈津様のことをすごく気にかけてます!」

 そう言って、コマが夜刀を見る。

 「ね、夜刀様!」

 「おい。なんで俺に振るんだ」

 夜刀が露骨に顔をしかめた。

 「だって夜刀様も、奈津様のこといつも気にしてるじゃないですか」

 「俺はまだ全部認めたわけじゃねぇからな」

 「でも、気にしてるんですね!」

 「うるせぇ」

 コマが楽しそうに笑う。奈津もつられるように小さく笑った。
 そのやり取りを、少し離れた席から綾乃が見つめていた。