あやかしの癒し子 ~餌として捨てられた私は、鬼の王の唯一となる~

 九条家へ戻る頃には、陽も傾き始めていた。
 奈津は両腕いっぱいの包みを抱え、綾乃とともに屋敷へ入る。
 客間の前を通りかかった時、中に見知った姿があることに気づいた。

 「宗一さん……?」

 正臣と向かい合って座っていた宗一が、奈津たちに気づいて顔を上げる。

 「奈津」

 その表情が、ふっと和らいだ。

 「ちょうどよかった」

 正臣も二人へ目を向ける。

 「綾乃、奈津。二人とも入りなさい」

 「はい、お父様」

 綾乃が先に客間へ入っていく。
 奈津も抱えていた荷物を廊下の端へ置き、そのあとに続いた。
 二人が腰を下ろすと、宗一が奈津へ視線を向けた。

 「昨日は大丈夫だったか?」

 「え?」

 「妖に吹き飛ばされていただろう。肩を打っていたように見えた」

 奈津は自分の肩へそっと触れる。

 「あ……大丈夫です。少し痛むくらいで」

 「そうか」

 宗一は安堵したように息をついた。

 「傷でも残ったら大変だ。無理はするなよ」

 「……ありがとうございます」

 胸の奥が、じんわりと温かくなる。
 宗一だけは、昔から奈津に優しかった。

 浄化の力がなくても。
 出来損ないと呼ばれていても。
 宗一だけは、奈津を蔑むことなく接してくれた。
 だからいつしか、奈津にとって彼は特別な存在になっていた。

 「それで、今日宗一くんが来たのは――」

 「僕から言わせてください」

 宗一が正臣の言葉を穏やかに遮った。