異形化を始めた鬼のもとへ駆け寄り、その身体へ触れる。
「お願い……戻って」
掌から白い光が溢れ、黒い穢れを包み込んでいく。
歪みかけていた身体は少しずつ本来の姿を取り戻し、やがて鬼はその場へ崩れ落ちた。
「よかった……」
けれど、安堵する間もなく背後から別の悲鳴が上がった。
「う、あぁっ!」
背後から別の悲鳴が上がる。
振り返れば、また一人が穢れに呑まれようとしていた。
さらにその向こうでも、別の鬼が身体を折っている。
奈津はすぐさま駆け寄った。
一人を浄化している間にも別の鬼が穢れに呑まれ、救っても救っても、異形化の勢いには追いつけない。
「……っ」
焦りが胸を締めつける。
その時、近くで震えている綾乃の姿が目に入った。
「綾乃!」
名を呼ばれ、綾乃がびくりと肩を揺らす。
「まだ異形化していない方たちの穢れを浄化して。少しでも抑えてほしいの」
「わ、私が……?」
「お願い!」
綾乃は戸惑いながらも、近くの鬼へ手を伸ばした。
掌から淡い光が生まれ、穢れを押し返していく。
しかし、その勢いはすぐに衰えた。
「……どうして……」
綾乃の呼吸が荒くなる。
香玉へ大量の霊力を注ぎ込んだうえ、先ほどまで繋がりを通して力を引き出し続けていたのだ。綾乃自身にも、もう十分な霊力は残っていない。
それでも必死に浄化を続けるが、一人の穢れを僅かに抑えるだけで精一杯だった。
「こんなの……無理よ……」
綾乃が震える声を漏らす。
その間にも、穢れは屋敷中へ広がっていく。
「どうして……みんな……」
コマが呆然と周囲を見回していた。
黒い穢れに覆われていく仲間たちの中で、コマだけはほとんど影響を受けていない。
「コマ……?」
奈津も一瞬だけその違いに気づいたが、考える暇はなかった。
異形化した鬼が、倒れ込んだ祓い師へ飛びかかろうとする。
「危ない!」
奈津が叫んだ、その瞬間だった。
白い影が、勢いよく目の前を駆け抜ける。
「させない!」
コマの身体が眩い光に包まれた。
小さかった姿は瞬く間に大きく膨れ上がり、淡い乳白色に蜂蜜を溶かしたような柔らかな毛並みを持つ狛犬へと変わる。
そのまま異形化した鬼へ体当たりし、倒れた身体を前脚で押さえ込んだ。
『奈津様、今のうちに!』
「コマ……! うん!」
奈津はすぐさま駆け寄り、鬼の身体へ手を伸ばした。
けれど、その背後でも新たな咆哮が上がる。
別の鬼が祓い師たちへ襲いかかろうとしていた。
鋭い妖気が走り、その身体を絡め取る。
「動くな」
紫鬼だった。
妖力で鬼をその場へ縫い止めながら、奈津を見る。
「奈津」
「はい!」
奈津は一人の浄化を終えると、そのまま紫鬼が押さえている鬼のもとへ駆け寄った。
紫鬼は奈津が浄化へ集中できるよう、祓い師たちへ襲いかかろうとする鬼たちを妖力で次々と退けていく。
コマもまた大きな身体で奈津のそばを守り、暴れる鬼が近づけば牙を剥き、その進路へ立ちはだかった。
『こっちは、ぼくが止めます!』
低く唸ると、コマの全身から淡い妖気が溢れた。
それが足元へまとわりつくように広がり、異形化した鬼の動きを僅かに鈍らせる。
その隙を逃さず、奈津が手を伸ばした。
「お願い……戻って」
白い光が穢れを包み、歪んでいた身体が少しずつ元の姿へ戻っていく。
「お願い……戻って」
掌から白い光が溢れ、黒い穢れを包み込んでいく。
歪みかけていた身体は少しずつ本来の姿を取り戻し、やがて鬼はその場へ崩れ落ちた。
「よかった……」
けれど、安堵する間もなく背後から別の悲鳴が上がった。
「う、あぁっ!」
背後から別の悲鳴が上がる。
振り返れば、また一人が穢れに呑まれようとしていた。
さらにその向こうでも、別の鬼が身体を折っている。
奈津はすぐさま駆け寄った。
一人を浄化している間にも別の鬼が穢れに呑まれ、救っても救っても、異形化の勢いには追いつけない。
「……っ」
焦りが胸を締めつける。
その時、近くで震えている綾乃の姿が目に入った。
「綾乃!」
名を呼ばれ、綾乃がびくりと肩を揺らす。
「まだ異形化していない方たちの穢れを浄化して。少しでも抑えてほしいの」
「わ、私が……?」
「お願い!」
綾乃は戸惑いながらも、近くの鬼へ手を伸ばした。
掌から淡い光が生まれ、穢れを押し返していく。
しかし、その勢いはすぐに衰えた。
「……どうして……」
綾乃の呼吸が荒くなる。
香玉へ大量の霊力を注ぎ込んだうえ、先ほどまで繋がりを通して力を引き出し続けていたのだ。綾乃自身にも、もう十分な霊力は残っていない。
それでも必死に浄化を続けるが、一人の穢れを僅かに抑えるだけで精一杯だった。
「こんなの……無理よ……」
綾乃が震える声を漏らす。
その間にも、穢れは屋敷中へ広がっていく。
「どうして……みんな……」
コマが呆然と周囲を見回していた。
黒い穢れに覆われていく仲間たちの中で、コマだけはほとんど影響を受けていない。
「コマ……?」
奈津も一瞬だけその違いに気づいたが、考える暇はなかった。
異形化した鬼が、倒れ込んだ祓い師へ飛びかかろうとする。
「危ない!」
奈津が叫んだ、その瞬間だった。
白い影が、勢いよく目の前を駆け抜ける。
「させない!」
コマの身体が眩い光に包まれた。
小さかった姿は瞬く間に大きく膨れ上がり、淡い乳白色に蜂蜜を溶かしたような柔らかな毛並みを持つ狛犬へと変わる。
そのまま異形化した鬼へ体当たりし、倒れた身体を前脚で押さえ込んだ。
『奈津様、今のうちに!』
「コマ……! うん!」
奈津はすぐさま駆け寄り、鬼の身体へ手を伸ばした。
けれど、その背後でも新たな咆哮が上がる。
別の鬼が祓い師たちへ襲いかかろうとしていた。
鋭い妖気が走り、その身体を絡め取る。
「動くな」
紫鬼だった。
妖力で鬼をその場へ縫い止めながら、奈津を見る。
「奈津」
「はい!」
奈津は一人の浄化を終えると、そのまま紫鬼が押さえている鬼のもとへ駆け寄った。
紫鬼は奈津が浄化へ集中できるよう、祓い師たちへ襲いかかろうとする鬼たちを妖力で次々と退けていく。
コマもまた大きな身体で奈津のそばを守り、暴れる鬼が近づけば牙を剥き、その進路へ立ちはだかった。
『こっちは、ぼくが止めます!』
低く唸ると、コマの全身から淡い妖気が溢れた。
それが足元へまとわりつくように広がり、異形化した鬼の動きを僅かに鈍らせる。
その隙を逃さず、奈津が手を伸ばした。
「お願い……戻って」
白い光が穢れを包み、歪んでいた身体が少しずつ元の姿へ戻っていく。

