あやかしの癒し子 ~餌として捨てられた私は、鬼の王の唯一となる~

 満開の桜が、風に揺れていた。

 奈津(なつ)の髪に降りた桜の花びらを、大きな手がそっと摘む。
 触れた指先はそのまま、愛おしむように奈津の頬をなぞった。

 「奈津」

 「……はい」

 息を呑むほど、美しい。
 白銀の髪を春風に揺らし、深い紫の瞳がただひとり――奈津だけを映していた。

 「俺の、本当の花嫁になってくれ」

 出来損ないだと言われ続けた。
 誰にも必要とされないと思っていた。

 そんな私を、必要としてくれる場所があった。
 ただ、そばにいたいと思う——この鬼の隣に。

 「……っ」

 奈津の目に、じわりと涙が滲んだ。
 それでも今度は、悲しくて流す涙ではなかった。

 「紫鬼様……」

 奈津は、泣きそうになりながら笑った。

 私の返事は――。