夏休みも終盤、探偵研究部の三人は、警察署の小さな会議室に呼び出された。
「おう、坊っちゃん嬢ちゃん、久しぶりだな」
佐藤刑事の声はガサガサで、よれたネクタイと伸びたひげが、事件解決後の後処理の疲労を物語っていた。
「佐藤刑事、お久しぶりです」
背筋を伸ばした制服姿の未知が挨拶を返す。
おなじく制服姿の小川と平屋も緊張した面持ちでぺこりと会釈した。
「取って食わねえから、ほら、すわんな」
と佐藤刑事はぶっきらぼうにパイプ椅子をガタガタと勧めた。
佐藤は、机の上に置かれた茶色い紙袋を、ほら、と未知に渡した。
「嬢ちゃん。あんたのが一番遅くなっちまったけど、証拠品として預かってた、あんたの荷物だよ。
もう問題ないから持って帰りな」
袋の中には、見慣れたスマートフォン、朝顔柄の浴衣、そして手荷物が入っていた。
お祖母様からの浴衣が無事で、ほっとしたように未知は受け取る。
紙袋には、事件中AIロボットに頼んだ、服や靴一式も入っていた。未知が、何か手がかりになるかと思い、後から警察に提出したものだ。
「――結論から言って、その服は手がかりにならなかった。
インターネットショッピングのものだ、ということくらいしか分からなかった。どれもこれも、トカゲの尻尾切りでさ。
それから、タブレットが各ボートに取り付けられていたって参加の中学生たち皆が証言してるけど、それもまだ見つかってない。
もし湖の底に沈められたのなら、七十メートルの深水だ。見つけられる保証はない」
佐藤は、苛立ちを隠せない様子で言った。
その言葉に、未知はひらめいたように目を輝かせた。
「あの……AIロボットはいませんでしたか? 私の監禁されていた部屋にあった、二十センチくらいの筒形で、白い、スピーカーのような形の」
佐藤は眉をひそめた。
「いや? そんなのはなかったはずだ」
佐藤刑事は続ける。
「おかしいな。お前たちが保護されたと同時に、ホテルにもすぐ捜査の手が入ったはず。
遺留品は、子どもたちの荷物以外でとくに問題なかったはずだ。調度品はともかく、AIロボットなら、何か証拠になるだろうから、見落としはしないはずだ」
「じゃあ、その前に、持ち去られた?」と未知は光の強い瞳で尋ねた。
佐藤刑事は手元の分厚いファイルをぱらぱらとめくる。
――おかしい。どのタイミングで?
イワンも安田六郎も、あの時は湖上に行って留守だったはずだ。
あの日のホテル従業員は全てアルバイトだ。
――もしかして、他に誰かいたのか?
『トカゲの尻尾』ではない。
『本体』につながる誰かが、あの時、いたということだ。
ひとつ、なにか明るい一筋の光をみつけたように顔を上げた。
「ありがとうな、嬢ちゃん」
静かな決意を宿した佐藤刑事は、三人の後輩たちの前で数日ぶりに穏やかに笑った。
「おう、坊っちゃん嬢ちゃん、久しぶりだな」
佐藤刑事の声はガサガサで、よれたネクタイと伸びたひげが、事件解決後の後処理の疲労を物語っていた。
「佐藤刑事、お久しぶりです」
背筋を伸ばした制服姿の未知が挨拶を返す。
おなじく制服姿の小川と平屋も緊張した面持ちでぺこりと会釈した。
「取って食わねえから、ほら、すわんな」
と佐藤刑事はぶっきらぼうにパイプ椅子をガタガタと勧めた。
佐藤は、机の上に置かれた茶色い紙袋を、ほら、と未知に渡した。
「嬢ちゃん。あんたのが一番遅くなっちまったけど、証拠品として預かってた、あんたの荷物だよ。
もう問題ないから持って帰りな」
袋の中には、見慣れたスマートフォン、朝顔柄の浴衣、そして手荷物が入っていた。
お祖母様からの浴衣が無事で、ほっとしたように未知は受け取る。
紙袋には、事件中AIロボットに頼んだ、服や靴一式も入っていた。未知が、何か手がかりになるかと思い、後から警察に提出したものだ。
「――結論から言って、その服は手がかりにならなかった。
インターネットショッピングのものだ、ということくらいしか分からなかった。どれもこれも、トカゲの尻尾切りでさ。
それから、タブレットが各ボートに取り付けられていたって参加の中学生たち皆が証言してるけど、それもまだ見つかってない。
もし湖の底に沈められたのなら、七十メートルの深水だ。見つけられる保証はない」
佐藤は、苛立ちを隠せない様子で言った。
その言葉に、未知はひらめいたように目を輝かせた。
「あの……AIロボットはいませんでしたか? 私の監禁されていた部屋にあった、二十センチくらいの筒形で、白い、スピーカーのような形の」
佐藤は眉をひそめた。
「いや? そんなのはなかったはずだ」
佐藤刑事は続ける。
「おかしいな。お前たちが保護されたと同時に、ホテルにもすぐ捜査の手が入ったはず。
遺留品は、子どもたちの荷物以外でとくに問題なかったはずだ。調度品はともかく、AIロボットなら、何か証拠になるだろうから、見落としはしないはずだ」
「じゃあ、その前に、持ち去られた?」と未知は光の強い瞳で尋ねた。
佐藤刑事は手元の分厚いファイルをぱらぱらとめくる。
――おかしい。どのタイミングで?
イワンも安田六郎も、あの時は湖上に行って留守だったはずだ。
あの日のホテル従業員は全てアルバイトだ。
――もしかして、他に誰かいたのか?
『トカゲの尻尾』ではない。
『本体』につながる誰かが、あの時、いたということだ。
ひとつ、なにか明るい一筋の光をみつけたように顔を上げた。
「ありがとうな、嬢ちゃん」
静かな決意を宿した佐藤刑事は、三人の後輩たちの前で数日ぶりに穏やかに笑った。



