八月十三日
「安田六郎の自白により、有栖川美知誘拐事件と、中学生集団拉致事件は、同一犯によるものと判明した。
今回の主犯とみられる「ゲームの達人」。そのゲームサイトと学習アプリを運営していた会社は、ダミー会社であり、実体は社員がおらず、スタッフは皆アルバイトだった。彼らは各々の分担された仕事のみを知らされており、会社の運営にまで関わっている者はいなかった。
そもそもの主犯は、QUEENという参加者に化けていたイワン。そして、背後には日本人の協力者がいると推測される。
彼はまだ、黙秘を続けている。
我々が西湖の湖岸に到着した際、はちあわせた安田六郎の身柄を拘束した。
たまたま現場に落ちた鍵を平屋くんが拾い上げ 、美知さん捜索に勝手に小川君と二人で樹海に足を踏み入れてしまったことは、こちらの過失だ。
しかし、運よくそのカギは美知さんの手に渡り、彼女は自力で解錠し、その後即座にイワンの現行犯逮捕となった……」
うん?と佐藤は眉間のしわを深めた。
(まあ、小川くんの一本背負いは、バカ正直に調書に書くと正当防衛の立証やら検察の聞き取りやらで、あの子に面倒な負担がかかる。ここはイワンが『自分で転んだ』ことにしておいてやろう)
「一歩遅かったら、美知さんはイワンに捕まったまま逃げられていただろう。 そして、他の子どもたちも樹海で危険な目に遭っていたかもしれない。 結果論だが、人質となっていた中学生全員が無事保護されたことが、奇跡だった。
しかし、あのピザの一ピースのような機械を持っていた――六分儀と言ったか? あれで居場所を伝えた小笠原くんは、飛び抜けて優秀だった。
もしかして、またいつかどこかで出会えるかもしれない。
今回のこの大掛かりな仕掛けを可能にしたのは、この西湖のほとりにある私有地だった。そこには、子どもたちを乗せた貸切バスの停まった形跡も、今は一般向けには開放していないホテル――今は、資産家個人の別荘として使われている――もある。
このホテルに、子どもたちは宿泊していた。
安田六郎とイワンが現行犯逮捕されたのち、即座にホテルにも捜査が入った。
子供たちの荷物などがそのまま残っていたが、ホテルには後片付けのための三名のスタッフだけが残っていた。
詳しく聞けば、バイトアプリで雇われたその日限りのスタッフであり、他は面識がないとのこと。業務の内容だけ伝えられており、運営にはこれまた関わっていなかった。
現代の匿名の網をくぐって、安田とイワン以外の運営に関わる人間が姿を見せることはなかった。
西湖のこの広大な私有地とホテルの登記を洗った結果、オーナーである一部上場企業の製薬会社社長に行き着いた。
しかし、ここにきてまた分厚い壁にぶつかった。
事件当日、ホテルはアミューズメント系の別会社に『また貸し』されていたのだ。
アミューズメント系なら、『ゲームの達人』との関わりも考えられる。
そして捜査の手を伸ばそうとしたところ、その別会社の社長は事件直後から行方をくらまし、時を同じくして会社自体も不自然な倒産を迎えた。
現場の裏帳簿やデータも、もぬけの殻だ。 これは間違いなく、最初から我々警察の追及を逃れるために用意された『計画倒産』であり、トカゲの尻尾切りだったのだろう。決定的な証拠と社長を消し去ることで、その先をたどることは不可能になった」
ここまで書くと、ペンを置く。
同僚のみゆお刑事に声をかけられた。
「佐藤先輩! ランチいきましょうか。」
「おう!」と言って佐藤は席を立った。
「安田六郎の自白により、有栖川美知誘拐事件と、中学生集団拉致事件は、同一犯によるものと判明した。
今回の主犯とみられる「ゲームの達人」。そのゲームサイトと学習アプリを運営していた会社は、ダミー会社であり、実体は社員がおらず、スタッフは皆アルバイトだった。彼らは各々の分担された仕事のみを知らされており、会社の運営にまで関わっている者はいなかった。
そもそもの主犯は、QUEENという参加者に化けていたイワン。そして、背後には日本人の協力者がいると推測される。
彼はまだ、黙秘を続けている。
我々が西湖の湖岸に到着した際、はちあわせた安田六郎の身柄を拘束した。
たまたま現場に落ちた鍵を平屋くんが拾い上げ 、美知さん捜索に勝手に小川君と二人で樹海に足を踏み入れてしまったことは、こちらの過失だ。
しかし、運よくそのカギは美知さんの手に渡り、彼女は自力で解錠し、その後即座にイワンの現行犯逮捕となった……」
うん?と佐藤は眉間のしわを深めた。
(まあ、小川くんの一本背負いは、バカ正直に調書に書くと正当防衛の立証やら検察の聞き取りやらで、あの子に面倒な負担がかかる。ここはイワンが『自分で転んだ』ことにしておいてやろう)
「一歩遅かったら、美知さんはイワンに捕まったまま逃げられていただろう。 そして、他の子どもたちも樹海で危険な目に遭っていたかもしれない。 結果論だが、人質となっていた中学生全員が無事保護されたことが、奇跡だった。
しかし、あのピザの一ピースのような機械を持っていた――六分儀と言ったか? あれで居場所を伝えた小笠原くんは、飛び抜けて優秀だった。
もしかして、またいつかどこかで出会えるかもしれない。
今回のこの大掛かりな仕掛けを可能にしたのは、この西湖のほとりにある私有地だった。そこには、子どもたちを乗せた貸切バスの停まった形跡も、今は一般向けには開放していないホテル――今は、資産家個人の別荘として使われている――もある。
このホテルに、子どもたちは宿泊していた。
安田六郎とイワンが現行犯逮捕されたのち、即座にホテルにも捜査が入った。
子供たちの荷物などがそのまま残っていたが、ホテルには後片付けのための三名のスタッフだけが残っていた。
詳しく聞けば、バイトアプリで雇われたその日限りのスタッフであり、他は面識がないとのこと。業務の内容だけ伝えられており、運営にはこれまた関わっていなかった。
現代の匿名の網をくぐって、安田とイワン以外の運営に関わる人間が姿を見せることはなかった。
西湖のこの広大な私有地とホテルの登記を洗った結果、オーナーである一部上場企業の製薬会社社長に行き着いた。
しかし、ここにきてまた分厚い壁にぶつかった。
事件当日、ホテルはアミューズメント系の別会社に『また貸し』されていたのだ。
アミューズメント系なら、『ゲームの達人』との関わりも考えられる。
そして捜査の手を伸ばそうとしたところ、その別会社の社長は事件直後から行方をくらまし、時を同じくして会社自体も不自然な倒産を迎えた。
現場の裏帳簿やデータも、もぬけの殻だ。 これは間違いなく、最初から我々警察の追及を逃れるために用意された『計画倒産』であり、トカゲの尻尾切りだったのだろう。決定的な証拠と社長を消し去ることで、その先をたどることは不可能になった」
ここまで書くと、ペンを置く。
同僚のみゆお刑事に声をかけられた。
「佐藤先輩! ランチいきましょうか。」
「おう!」と言って佐藤は席を立った。



