クラスの冷笑系は、あの夏の恩人かもしれない件

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 美能(みのう)ほどではないけれど、そこそこの観察力を誇る俺は笠見に対して、とある可能性を検証中だったりする。

「遅くなってゴメン! レジが一台、途中でエラー起こしちゃっててさ。オレ、あんな行列初めて見たわ」

 戻ってきた神北は走ったせいか、うっすら汗をにじませている。
 大は小を兼ねると言うが、こいつが学校で活用しているマイバッグは無駄にでかい。
 サンタクロースが袋の中身を探るような動作で、俺のスポドリを取り出した友人は、不在時に現れた美能に対してナチュラルに話しかける。

「今週末にある亀田山祭(かめだやまさい)、美能は誰かと行く予定あったりする?」

 質問の内容的には、探りを入れて夏祭りデートに誘うようにも聞こえるが、神北の目的は別にあった。
 カバンの中から取り出したチラシを手渡して、神北は早口で説明を始める。

「うちの町内会で毎年クイズ大会を企画してるんだけどさ。参加予定だった大学生グループが急にキャンセルして困ってるんだ。勝者には賞品も用意してるんで、もしちょっとでも興味があったら協力してほしい!」

 チラシを手に取り、数秒ほど情報に目を走らせた美能は近くにいる俺たちではなく、熱のこもった視線を送ってきている笠見に対して軽く手を振り呼びかけた。

「かさみーん! 神北の説明、聞こえてた? 小学校の卒業文集で好きなテレビ番組は『クイズ王』好きな本は『クイズ500』って書いてたでしょ? あと一人足りないから、私たちと一緒に参加してよ」

 小学校が同じだったとしても普通は他人の文集ページを丸ごと覚えてはいない。
 笠見に対して多少興味を持っていたとすれば、個人情報を熟知していても不思議じゃないが、美能の目的は俺たちに接点を作ることにある。
 使える情報を記憶から引っ張ってくることなんて、彼女にとってはイージーモードだ。

「そんな昔のこと、覚えおけるのはお前くらいだ」

 不機嫌そうな表情といつもの塩対応。
 戦隊モノなら智将のブルーではなく、後から加わる皮肉屋冷笑系のブラックだと思う。
 AI男子なんて呼んでるヤツもいるけれど、笠見は意外と感情の抑制がうまくない。
 
「文集の書き出しも暗唱してあげよーか? みんなの個性がちゃんと出てたから、キミ以外のページも忘れてないよ。あ行の子から順番にいこうかな」

 笠見だけが特別じゃないと主張する美能は、場面を支配する能力が高い。
 本気で一人目から始めようとした彼女を笠見が止めた。

「小学校時代の文集なんて、人によっては黒歴史だ。個人情報の開示は無許可でするべきじゃない」
「……りょーかい」

 かすかに声を立てて笑う美能は、止めてもらえることを見越していたようだった。

「それだけ記憶力に自信があるなら、美能ひとりで勝ち抜けるだろう? 俺の助力など必要ないように思うが……」
「かさみん、私の評価高すぎぃ! それはともかく、このクイズ大会は4人グループじゃなきゃ参加できないんだ。キミがどぉーしても都合悪いなら、希望者募っちゃおうかなぁ。神北となっちと仲良くなれるならグループに入りたい人、抽選になっちゃうかもねぇ」

 煽るような笑みを浮かべる美能は、笠見の思考を完全に掌握していた。

「………まあ、でもキミ次第だよ。どうするかさみん?」