クラスの冷笑系は、あの夏の恩人かもしれない件


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「このクラスでいま一番暑いのは、なっちだろうね」

 難儀だねぇと呟いて気の抜けた笑みを見せる美能は、俺の事情を理解している。
 特殊スキル持ちじゃないかと疑ってしまうくらい、情報収集能力が高い。というわけで、相談なんかする前から何もかもお見通しだったりする。
 人差し指で宙をくるくるとかき混ぜながら、美能は会話を続けていった。

「……そんなの脱いじゃえばって言えたらいいんだけどさ。夏服のなっちに、ドキドキが止まらない狼さんがうようよしてるからねぇ。ここはカーディガンの抑止力にすがるしかなさそうかな。エアコンの温度設定変えられないように、根回しすることくらいしか、私にはできないや」

 片目をつぶってみせた美能は全方面に頼もしい。
 名前が同じということで始まった交流が、こんな風に展開するなんて運命は不思議だ。

「それが一番助かる!」

 両手を合わせて協力に感謝すると美能は眉をひそめて、低い声で不満をもらす。

「ウザい視線のハラスメントって何ていうんだろ? カーディガンを魔よけにしてなきゃいけないとか、なっちの負担重すぎ……」

 自分の気持ちを抑えこんで、抗おうとをしないのは俺の悪い癖だ。
 我慢すればいい。自衛すればいい。
 そんな風に感情を置き去りにして、当たり障りがないように振る舞ってきた。
 
 踏み込んでくる気はないくせに、定点カメラみたいに俺を見つめる笠見を嫌いにもなれない。
 本心を暴いたところで、あいつに同じ気持ちを返せないなら傷つけるだけだ。
 むず痒いような視線が好意に由来するものだなんて、鈍くなけりゃ気づく。
 守りたいとか、他のやつらに見せたくないとか。
 優しさと執着が入り混じった複雑な感情は、恋心以外の何物でもない。
 皆を惑わせる俺の魅力の犠牲者その1は、厚着という夏のデバフが弱体化につながることをわかっていない。