恋するだけでは、終われない / 恋したことなら、忘れない


「……じゃぁ美也(みや)ちゃん、おやすみなさい」
「うん、おやすみ千雪(ちゆき)

 真夜中をすぎて、通話終了のボタンを押し終えると。
 わたしはふぅっと、息をする。


 ……千雪の恋の、終了報告。


 突然送られてきたメッセージのあと。
 すぐにスマホが鳴りだして。
 それからあっというまの、二時間トーク。



「えっ? 海原(うなはら)君の背中でなにしたの?」
「ですから……ストレッチですってば」

「やさしさでダメになりそうって、どういうこと?」
「あれ? そんなこといいましたっけ?」


 なんだか、完全に千雪に遊ばれている感じがするけれど。
 ただ、それでもあの子は。

「えいっ!」

 話しの途中でときおり。
「すみません。反射神経をきたえる練習中なんです」
 そんなふうに『ごまかし』ながら。
 涙を……手刀で『バサリと斬って』いるらしく。

「えいっ!」

 そんなにすぐには、割りきれないよねと。
 そのあとはできるだけ静かに。
 わたしは彼女の言葉に……耳を傾けようと思っていた。



 ……ところが千雪は。わたしの心を『おだやか』にはしてくれない。



「えっ……?」
「ですから、それが次回作のタイトルですってば」
「そ、そうなの?」




『恋するだけでは、終われない / すごした日々は、忘れない』




 おまけに彼女は、さらりとわたしに。
「ちなみに、残り二作品らしいですよ」
 なんだかビックリするようなことまで、口にしたので。

「ねぇ。千雪って、もしかして作者のひとじゃないよね?」
 思わずわたしは……聞いてしまった。


「……作者なのに、わたしが失恋するんですか?」
 た、確かにそうだね。なんだかごめん。

「まぁいいですけど。あと、もしそうなら」
「そうなら?」
「まっさきに『狙うひと』がいますけど?」

「そ、そうなんだぁ……」
「いえ、『のんびり』している場合じゃないですよ『美也ちゃん』」
「は、ははっ……」

 ……どうしよう、なんだか『昔の』千雪が帰ってきた。

「それでは、次回作を静かに待ちましょう」
「は、はい……」



 そうやっておやすみのあいさつを終えてから。
 ふと気づくと、写真がいくつか届いている。

「そういえば、千雪のスマホでとったんだっけ?」

 楽しかった『修学旅行』のひとときを眺めながら。
 わたしが幸せな気分になりかけたところで。

 まるで、しまりのないわたしの笑顔をどこかで見ていたかのように。
 今度は彼女からメッセージが飛んでくる。


『あの彼にも、送っておきましょうか?』
『うーん、でも彼。スマホ持ってないよ』
『パソコンなら、あるらしいですよ』
『えっ?』
『ほら』
『な、なに?』
『そういうところですよ』

『……?』
『のんびりしていないで、そろそろまめにやりとりしないと』
『……と?』
『油断するとマズイですよ。せ・ん・ぱ・い』


 どういうことかと聞く前に。
 おやすみの顔文字が送られてきて。

「またわたし……遊ばれた?」
 思わずそうつぶやいてから。
「……じゃないよね」

 いや、それよりも。
 最後の言葉が……気になった。



「……どういうことだろうね、海原君?」
 とりあえず、届いたばかりの集合写真を拡大して。
 答えの『わからなさそう』な彼に聞いてみてから。

「……あれ?」
 ふと『重大なこと』に、気がついた。


「まずい、まずいよ海原君!」
 そうだ、送られてきた写真は。
 全部『わたしが』撮影したものばかりだ。

 ……と、いうことは。

 いつもわたしが立っている場所にわたしはいなくて。
 それはそうとしても、ただそのかわりに。
 どの写真でも、しっかり同じ『ポジション』に収まっているあなたは……。




 決して返事をしない、『画面上のそのひと』に。
 あなたはわたしと……同じようなことを思うのかと問いかける。


 ……ようやくたどりついたこの場所を、わたしは誰にも譲らない。


 恋したことを、『忘れずに』すごしてきたそのひとなら。
 当然じゃないかと……ものすごくいいそうだ。



 ……あぁ、これ以上考えたら絶対眠れなくなる。



 そう思ったわたしは、サッと指で画面を消すと。
 あとはとにかく寝るしかないと横になり。


 枕に顔をうずめて、それから。


「でも、あげないからっ!」
 小さな声で……叫んでみた。









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シリーズ・第八作。
『恋するだけでは、終われない / 恋したことなら、忘れない』

最後までご愛読いただき、誠にありがとうございました。


作者からはまず、前作品から今作品の連載再開まで。
非常に間隔をあけてしまいましたことをお詫び申し上げます。

同時に、そのような状況にもかかわらず。
本シリーズを変わらず読み続けてくださる読者の方々には、深く感謝し。

また、新規でお読みいただけましたみなさまにおかれましても。
星の数ほどある作品の中から、本作をすくいあげていただけましたことに。
心より厚く御礼申し上げます。



さて、彼ら『丘の上』放送部員たちのすごす日々は。
作中でポロリと紹介されましたとおり。
あと二作品で、ひとつの区切りを迎える予定です。

なお、次回作以降の連載開始時期に関しましては。
この冬と春を目標に、鋭意創作活動を進めており。

なにかお知らせすることができました際には。
本作の紹介ページ。
およびこの『あとがき』ページに、掲載させていただきます。


それでは、また次回作でも。
みなさまとお会いできますことを……楽しみにしております。




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つくばね なごり
最新作



……お願い、それなら『答え』を教えて。



『恋するだけでは、終われない / すごした日々は、忘れない』



2026年冬、連載開始(目標)です。



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