桜とガラスの靴

ピ、ピ、ピ……と電子音が鳴る。
うつらうつら、まぶたが落ちてくる。
まぶたを擦り、また本に視線を落とす。

ここは〇〇市総合病院の7階小児病棟の2号室。個室だ。

怪我をした。事故だった。
ただ、ボールを取ろうとしたら車がやって来ただけだ。

……と、まるで本の中の小さい子供みたいな言い訳を心の中でした。

僕は本から目を離し、前を見ると……。

僕と同い年くらいの女の子がいた。

「だれ……?」

話しかけてみた。
女の子は、「ふふふ」と笑うだけ。

なんだかごまかされたような気がしてむっとする。

「名前を聞くなら自分から名乗るものよ」

そういえばそうだった。
僕は自分の名を名乗る。
すると女の子は、「そう……いい名前ね」とほほ笑む。

なんだかこの年にしては随分と大人びた雰囲気に少しどぎまぎする。

女の子は、僕についていた器具を外してしまう。

「ちょ……ちょっと」
「ん?」

どうかしたのか、と女の子が首を傾げる。

「怒られちゃわない……?」
「んーそうね……少しだけなら怒られないわよ」

女の子は少し笑い。

「それに、私は夢の住人だから」

と、変な事を言った。
少し子供っぽいような気がした。

女の子に手を引かれるまま、病院の中を散歩する。
不思議な事に、僕らに気づいてないようだ。

病院の外も見てみよう、と女の子が言った。
僕は楽しそうだったので頷いた。

病院の玄関の自動ドアをくぐると。

「わあ……!」

そこは一面の花畑だった。
コスモス、ヒャクニチソウ、ガーベラ、チューリップなど色々あった。
後ろを振り返ると、不思議な事に病院が無くなっていた。

僕は女の子に「こんな場所があったんだね」と話しかける。
女の子は「そうね」とうなずき、花冠をくれた。
こういうのは好きじゃないけどうれしかった。

そこで鬼ごっことかだるまさんがころんだとかをして遊んだ。
とても楽しかった。







。〇●〇。

ぼんやりと目が覚める。

すると、病室に戻っていた。
器具もつながっているし、女の子もいない。

僕は、(夢だったんだ)と思った。
そう思うと、少し切なくなった。
僕はもう一度目をつむり、夢の続きを見た。

そんな男の子の頭には花冠があった。

「また、夢を見たら会えるよ。」