優奈の背中が、駅の改札の向こうへと消えていくのを、私はただ見送っていた。
「じゃあね李奈!また明日!」
振り返って手を振った彼女の顔は、涙の跡で濡れていたけれど。
世界で一番な光を放っているように見えた。
バイバイ、と振り返した私の右手は驚くほど震えていた。
家までの道のりをどうやって歩いたのかは、ほとんど覚えていない。
ただ、すれ違う見知らぬ人たちの話し声がすべて私雑音のように聞こえた。
「ただいま」
というは、リビングにいる親の耳に届いたかどうかもわからない。
私は2階の自分の部屋へと駆け込み、ドアを閉めると同時に鍵をかけた。
部屋に閉じ込められた途端動悸が襲ってくる。
不快な音を立てる胸を手で押さえながら、私は机の前に座った。
肩からスクールバッグを床に落とす。
どさりと音が響いた。
私は指を、制服のスカートのポケットへと移動させた。
押し広げ、中にあるそれに触れた瞬間、緊張が走る。
ゆっくりと取り出したのは一通の手紙だった。
――『李奈へ』
白い紙の表面にある、彼の筆跡。
さっきまで校舎で感じていた彼の大きな手の温度はもうすっかり消え失せていて、手元にあるのはただの冷たい紙の塊のはず。
開けばいい。
そんなことは分かっている。
だってこれは、私がずっとそれこそ席替えで彼の後ろの席になってから毎日毎日夢に見続けてきた奇跡の瞬間なのだ。
誰も気付いてくれない私を、彼だけが見つけてくれた。
「俺、そういうのちゃんと見てるから」
あの雨の日の図書室で、私を覗き込んできた彼の綺麗な瞳。
廊下ですれ違う瞬間の、2人だけの秘密のような小さな囁き。
この手紙を開いて書かれているであろう言葉をなぞれば、私は間違いなく世界で一番幸せな女の子になれる。
だけど。
「じゃあね李奈!また明日!」
振り返って手を振った彼女の顔は、涙の跡で濡れていたけれど。
世界で一番な光を放っているように見えた。
バイバイ、と振り返した私の右手は驚くほど震えていた。
家までの道のりをどうやって歩いたのかは、ほとんど覚えていない。
ただ、すれ違う見知らぬ人たちの話し声がすべて私雑音のように聞こえた。
「ただいま」
というは、リビングにいる親の耳に届いたかどうかもわからない。
私は2階の自分の部屋へと駆け込み、ドアを閉めると同時に鍵をかけた。
部屋に閉じ込められた途端動悸が襲ってくる。
不快な音を立てる胸を手で押さえながら、私は机の前に座った。
肩からスクールバッグを床に落とす。
どさりと音が響いた。
私は指を、制服のスカートのポケットへと移動させた。
押し広げ、中にあるそれに触れた瞬間、緊張が走る。
ゆっくりと取り出したのは一通の手紙だった。
――『李奈へ』
白い紙の表面にある、彼の筆跡。
さっきまで校舎で感じていた彼の大きな手の温度はもうすっかり消え失せていて、手元にあるのはただの冷たい紙の塊のはず。
開けばいい。
そんなことは分かっている。
だってこれは、私がずっとそれこそ席替えで彼の後ろの席になってから毎日毎日夢に見続けてきた奇跡の瞬間なのだ。
誰も気付いてくれない私を、彼だけが見つけてくれた。
「俺、そういうのちゃんと見てるから」
あの雨の日の図書室で、私を覗き込んできた彼の綺麗な瞳。
廊下ですれ違う瞬間の、2人だけの秘密のような小さな囁き。
この手紙を開いて書かれているであろう言葉をなぞれば、私は間違いなく世界で一番幸せな女の子になれる。
だけど。



