異世界でのサイン会。
その言葉が、私の頭の中で呪いのように繰り返される。
高額な報酬と、フォルジェ王国の平和。
そして何より、シリル憑き鈴村君の「暴動に繋がりかねない」という脅し文句が、私の背中を押していた。
「まさか、私が異世界に行くことになるとは……漫画や小説の中だけの出来事だと思っていたのに」
ため息をつく私に反して、アレクシスは目を輝かせた。
「俺がアヤノを伴って帰還する日が来るとはな」
彼はそう言いながら、くるりと身を翻す。
その手には、見慣れない外套と、フード、そして大きな丸眼鏡。
どうやら、榊原から念のために変装するように言われたらしい。
かのフォルジェ王国で、王子の顔が理想の男性像としてバズっている手前、そのままの姿では騒ぎになる、という榊原の指示だった。
「完璧な変装だろう? これならば、誰も俺をアレクシス本人だとは気づくまい」
そう言って得意げにフードを深く被り、丸眼鏡をかけるアレクシス。
しかし、その変装は、彼の完璧な顔立ちと、周囲から浮き立つようなオーラを全く隠しきれていなかった。
隠しきれていないどころか、『訳ありの高貴な逃亡者』感が増して、不審者なのに致死量の色気を放っている。
「アレクシスさん、それ、余計に目立ってると思います、よ……?」
私の指摘に、彼は「む……眼鏡をかけると君の顔がぼやけてしまうな」と至近距離から的外れな感想を漏らすばかりだ。
どうやら度入りレンズを用意してしまったらしきシリル憑き鈴村君が「時間無かったんで手持ちのやつもってきました」と消え入りそうな声を落とす。
なんと、私物だったのか。
感想を付けづらい返答に、私はただ難しい顔をして頷くしかなかった。
その言葉が、私の頭の中で呪いのように繰り返される。
高額な報酬と、フォルジェ王国の平和。
そして何より、シリル憑き鈴村君の「暴動に繋がりかねない」という脅し文句が、私の背中を押していた。
「まさか、私が異世界に行くことになるとは……漫画や小説の中だけの出来事だと思っていたのに」
ため息をつく私に反して、アレクシスは目を輝かせた。
「俺がアヤノを伴って帰還する日が来るとはな」
彼はそう言いながら、くるりと身を翻す。
その手には、見慣れない外套と、フード、そして大きな丸眼鏡。
どうやら、榊原から念のために変装するように言われたらしい。
かのフォルジェ王国で、王子の顔が理想の男性像としてバズっている手前、そのままの姿では騒ぎになる、という榊原の指示だった。
「完璧な変装だろう? これならば、誰も俺をアレクシス本人だとは気づくまい」
そう言って得意げにフードを深く被り、丸眼鏡をかけるアレクシス。
しかし、その変装は、彼の完璧な顔立ちと、周囲から浮き立つようなオーラを全く隠しきれていなかった。
隠しきれていないどころか、『訳ありの高貴な逃亡者』感が増して、不審者なのに致死量の色気を放っている。
「アレクシスさん、それ、余計に目立ってると思います、よ……?」
私の指摘に、彼は「む……眼鏡をかけると君の顔がぼやけてしまうな」と至近距離から的外れな感想を漏らすばかりだ。
どうやら度入りレンズを用意してしまったらしきシリル憑き鈴村君が「時間無かったんで手持ちのやつもってきました」と消え入りそうな声を落とす。
なんと、私物だったのか。
感想を付けづらい返答に、私はただ難しい顔をして頷くしかなかった。



