王子サマはBL漫画家(わたし)の部屋にパラサイト中



イベント会場の喧騒から逃れるように、私、アレクシス、そして未だ戸惑いを隠せない担当編集者鈴村君(中身はシリル)の三人は、ステージ裏の薄暗い通路に身を潜めていた。
興奮冷めやらぬ会場のざわめきが遠く聞こえる中、目の前の現実に、私の頭の処理能力が音を上げそうである。

漫画家の思考力を以てしても理解するのが非常に難しい。

「……つまり、貴方は私の担当編集者である鈴村君の身体を間借りしている、異世界から来た護衛……シリルさんの幽体? で合ってますか?」

恐る恐る尋ねる私に、担当編集者……いや、彼の身体に宿るシリルさんは、疲弊したようなため息をついた。

『ええ、その通りです。まさか、この場で殿下の魔力開放に出合うとは思いもせず、私も焦ってしまい……』

シリルさんの言葉の途中、鈴村君の顔が痙攣したかと思うと、彼の口から全く別の、切羽詰まった声が漏れた。

「シリルさん! これ以上、僕の身体でペラペラ喋らないでください!っていうか、今、僕の身体、めっちゃ重いです! 幽体なのに質量とかあるんですか!?」

『これは、大賢者様が特別に用意してくださった『現界の術式』が不安定になった影響でしょう。落ち着いてください、今はこの状況をアレクシス様にご説明せねばなりません』

シリルさんが鈴村君の身体を半ば強引に操り、アレクシスに向き直った。

……これ、声優さんがイベントでやる『多重人格キャラの生アフレコ』みたいな状況だけど、リアルで見るとただのホラーである。
アレクシスは、先ほどの興奮が嘘のように冷静な表情で、目の前の二人の『一人二役』を観察している。