王子サマはBL漫画家(わたし)の部屋にパラサイト中

アレクシスが発動させたらしき光は、会場の熱狂に拍車をかける一方、私には冷や汗しかかかせなかった。
あれは明らかに異常な現象だ。
演出で説明できるレベルではない。

私はステージ袖から、何とかアレクシスを止めようと身構えていた。

その時、ステージの照明がわずかに揺らめき、背後から忍び寄っていた人影がはっきりと見えた。
その人物の視線は、ステージ上のアレクシスに釘付けになっていた。

「その輝きは、まさか……!」

声に、私は聞き覚えがあった。
いや、聞き覚えがあるどころではない。
この声は、紛れもなく私の担当編集者である鈴村君の声だ。

「待ってください! え! 鈴村君……!? なんで!?」

私は思わず叫んで、ステージに飛び出そうとした。
だが、時すでに遅し。鈴村君はアレクシスに向かって一直線に駆け寄っていった。

『アレクシス様! やはり……貴方様でしたか! お探ししておりました、フォルジェの第三王子!』

見慣れた私の担当編集者、その人が、先ほどとは全く違う真摯な表情を浮かべ、その場に額ずく。
顔には極度の疲労が色濃く、どこか怯えたような、だがしかし、ある種の強い意志を宿した瞳でアレクシスを見上げている。
頬には、かすかに魔法陣のような紋様が浮かび上がっているのが見える。

どういうことだ。これは。

「俺の……名は、アレクシスだが……」

アレクシスは、突然現れた人物の言葉に戸惑いながらも、どこか警戒した様子で尋ねた。

『アレクシス様。私は、とある方の計らいで、貴方様の護衛を命じられたシリルと申します。こうして密かにこの世界に身を置いておりました。幽体のみで飛ばされてしまった為、幸いにも、この者の身体を間借りしておりますが……』

シリルと名乗る男は、深々と頭を下げた。
その言葉に、私の担当編集者の身体が、ブルリと震えた。
その瞳には、恐怖と困惑が入り混じっていた。

「え、え! え! まさか、本気で僕に乗り移っていたんですか、シリルさん!? しかも担当作家の連載キャラが本物の異世界の王子で!? 自分がその護衛で、挙げ句の果てに、ぼ、ぼ、僕のカ、カラダに、身体に幽体ってどういうことなんですかーーー!?」

担当編集者である鈴村君は、混乱のあまり頭を抱え、叫び始めた。
どうやら、彼自身もシリルという存在の『幽体』が自分に宿っていたことを、現実のものとして認識していなかったようだ。