お家を存続させるための結婚です。情はありません!

 昇二は、紳士だった。正式な妻の美也子を、無理やり従わすことも出来たはずなのに、
「同意もないのに同衾(どうきん)など、求めないさ」
 と、美也子を慮った。
「色々言ってしまったが……。翼を折りたいわけじゃない。君が誇り高く生きられる道を選びなさい」
 諭すような昇二の言葉に、美也子は悲しくなる。昇二は、既に諦めている。美也子が自分を選ばないことを。
 美也子も昇二に何と声をかけたらいいか、分からなかった。
 自分の気持ちすらわからず、間近に迫っている進路すら決めきれない、優柔不断さなのだから。
「申し訳ありません、昇二様」
 これ以外、言葉が出てこない。頭を下げる美也子に、昇二は「構わない」と首を振った。
「まだ君は若い。これから数多の出会いがあるはずだ」
 暗に自分を選ぶな、と伝えてくる昇二に気付かれないように。美也子はベッドの上で布団に包まって、静かに涙を流したのだった。
 ※
 その日を境に、昇二は松平の家に寄りつかなくなった。半月も経たない内に、アメリカへ居を移すのだ。慌ただしいのは、仕方ない。
 けれど、話す機会すらない。美也子は、自問するしかなかった。

 そして。悩み抜いた美也子は、一つの答えに辿り着いたのだ。