「あら。門のところが騒がしいわね」
美也子の隣で千代がボソリと呟いた。
学年一の秀才である千代は、美也子の一番の友である。父が医師である千代は、女子医学専門学校に進学を希望していた。
花嫁修業の一環として女学校に通っている生徒も多い中、明確な目標を持ち、好成績を維持している千代だ。
家柄だけは立派な貧乏華族と、爵位こそないが裕福な家系。育ちは真逆だが、夢を持つ者同士が意気投合するのは当然である。
今日も千代の家で勉強をするのだ。それにしても、人だかりはすごい。門の外をチラリとみては、きゃあきゃあと黄色い声を上げている。
「意中の学生を待っているのでしょう」
美也子の言葉に千代はうんざりしたように、はぁ、と大きなため息をついた。
大正になり、随分恋愛も自由になった。女学校の前で男子学生が待ち伏せしているのも、見慣れた光景だ。異性に好まれるタイプでない美也子も、数回だが門の前でラブレターを渡された経験がある。
「千代のことを待っているんじゃない?」
美也子はからかう。千代は美しい。渡された恋文も学校で一、二を争うだろう。本人は全く喜んでいないが。今も、「勘弁してよ」と、眉をしかめている。美也子は黙る。千代がへそを曲げるとわかっているからだ。
しかし、ここまで騒がれる相手は珍しい。どんな見目麗しい人間が立っているのか。美也子は千代に不審に思われない程度にそっと背伸びをして。その場に固まってしまった。
そこに立っていたのは、昇二だった。出てくる女学生を眺めていた昇二は、すぐさま美也子の姿を見つけて歩み寄ってくる。きゃあ、と周りからひときわ大きな声が上がる。その声に圧倒されてしまった美也子は、逃げ出す機会を失った。
美也子の隣で千代がボソリと呟いた。
学年一の秀才である千代は、美也子の一番の友である。父が医師である千代は、女子医学専門学校に進学を希望していた。
花嫁修業の一環として女学校に通っている生徒も多い中、明確な目標を持ち、好成績を維持している千代だ。
家柄だけは立派な貧乏華族と、爵位こそないが裕福な家系。育ちは真逆だが、夢を持つ者同士が意気投合するのは当然である。
今日も千代の家で勉強をするのだ。それにしても、人だかりはすごい。門の外をチラリとみては、きゃあきゃあと黄色い声を上げている。
「意中の学生を待っているのでしょう」
美也子の言葉に千代はうんざりしたように、はぁ、と大きなため息をついた。
大正になり、随分恋愛も自由になった。女学校の前で男子学生が待ち伏せしているのも、見慣れた光景だ。異性に好まれるタイプでない美也子も、数回だが門の前でラブレターを渡された経験がある。
「千代のことを待っているんじゃない?」
美也子はからかう。千代は美しい。渡された恋文も学校で一、二を争うだろう。本人は全く喜んでいないが。今も、「勘弁してよ」と、眉をしかめている。美也子は黙る。千代がへそを曲げるとわかっているからだ。
しかし、ここまで騒がれる相手は珍しい。どんな見目麗しい人間が立っているのか。美也子は千代に不審に思われない程度にそっと背伸びをして。その場に固まってしまった。
そこに立っていたのは、昇二だった。出てくる女学生を眺めていた昇二は、すぐさま美也子の姿を見つけて歩み寄ってくる。きゃあ、と周りからひときわ大きな声が上がる。その声に圧倒されてしまった美也子は、逃げ出す機会を失った。

