勇者たちの使命2 次なる異世界

【追加情報カフェ『森の隠れ家』】

 神官エレーネ
「アルフォンヌ公爵と私の婚約者アランが会っていたという『森の隠れ家』というカフェがありました。何らかの犯罪の窓口かも知れません。行ってみようと思いますが……如何でしょうか?」

 ヨシタカ
「エレーネのような女の子だと少し危険だな。俺とミキオ、サトシの三人で行ってみるよ」

 サトシ
「そうだね、女性陣はゆっくりしていてよ」

 ミキオ
「たまには男同士で騒ぐとするか」

 エレーネ
「承知しました。変なところへ遊びに行かないで下さいね」

 ミズハ
「ヨシタカくん、夜は絶対に空けておいてね。二人っきりになるの久しぶりだもの」

 ヨシタカ
「積もる話はいっぱいあるからな、楽しみにしてるよ」


 ◇


【カフェ】

 ミキオ
「来たな……普通の喫茶店みたいな感じだ。照明が少し薄暗いぐらいか」

 サトシ
「油断せずに乗り込もう。地下に違法カジノとかあるかも」

 ヨシタカ
「……特に店自体は悪そうには見えないなぁ」

 ヨシタカ達三人はカフェへ入った。カランカランと入口扉の鐘が鳴り、白いシャツに黒のベスト、黒いふわっとしたスカートの可愛らしい格好の制服ウェートレスが二人迎えに出てきた。

 二人ともとても可愛らしく真面目そうな二十歳前後、制服が特に可愛らしいデザインであり、黒髪と併せて、とても清楚に見えた。笑顔が眩しい。二人とも胸は普通の感じだが、制服の胸部の形が好いのか、柔らかそうなC~Dカップに見える。

 ウェートレス・ミカ&ユキ
「「いらっしゃいませーーっ。お客様は何名様でしょうか?」」

 サトシ
「三人です」

 ウェートレス・ミカ
「こちらの席へどうぞ。マスター、三名様のご来店でーす」

 サトシ
「ありがとう」

 丸テーブルに椅子が四つある場所を指定され、ヨシタカたちはそれぞれ椅子に座った。テーブルの上にはメニューが乗っており、特に不自然なところはなかった。三人は足元をはじめ隠し扉、飛び道具など店内に注意し、観察しながら警戒を続ける。

 ミキオ
「これがメニューだな。サンドイッチとかパスタとか普通にあるんだ。オレはコーヒーだな」

 サトシ
「ぼくはアイスコーヒー……。はないのか。ホットで」

 ヨシタカ
「アイスコーヒーは地球だって普通に海外でも取り扱いが少ないからな。自動販売機でのアイスコーヒーに出会えればラッキーだぞ。自動販売機ですら滅多に見かけないが」

 ミキオ
「ヨシタカ、何にするんだ?」

 ヨシタカ
「うーんと、そうだな、ミカジューとユキジューってのがあるな。冷たいのかな?」

 サトシ
「ミカ()ジュースなら冷たいんじゃない?」

 ヨシタカ
「よし、ミカンジュースにしよう。あの、すみません、ミカジューください。あとホット二つ」

 ウェートレス・ユキ
「は、はいっ」

 急に顔を赤くしたウェートレス。少し焦っている感じがする。特に理由もなく態度が変わるというのは不自然である。ヨシタカは警戒レベルを一つ上げた。

 ウェートレス・ユキ
「マスター、ホット二つにミカジューが一つです」

 マスター
「ミカちゃん、ちょっとこっちに来て。お店の裏に」

 ウェートレス・ミカ
「は、はい……。あ、あの、マスター、わたし初めてなんです」

 マスター
「ああ、誰もが経験する通過儀礼だから、心配しなくてもいい」

 そう会話をしながら店の裏口に二人が向かって出て行った。店内にいるのは一人のウェートレス・ユキだけである。この不自然極まる行動から紐解くと、次は攻撃で狙ってくる可能性が高い。ヨシタカはミキオとサトシに目配せで合図を送った。サトシが小さくうなずく。戦闘態勢に入った。

 マスターとウェートレスのミカちゃんという娘が裏口から外に消えてから、少し時間が経ったが、未だ何も起きなかった。ヨシタカたちに緊張感が走っていた。

 すると妙な声が聞こえてきた。

「ああ……い、いや……そんなに……あっ、あっ、強くしてはダメです、マスター……、あっ」

 ミキオ
「な、なんだ……?」

 サトシ
「こ、この声は……喘ぎ声か……誘拐と関わってるのかも、緊急事態か」

 ヨシタカ
「ま、待て、静かになったぞ」

 ウェートレス・ユキ
「あ、お客様、何も問題ございませんから……」

 ヨシタカ
「何か店内で都合の悪い事でも起きたのかな?」

 ウェートレス・ユキ
「いえ、すこしだけ……」

 ヨシタカは、少し探りを入れるかのような台詞を言ってみた。それに反応して、ウェートレスは少し涙目になった。このカフェは危険な臭いがする……ミキオとサトシは顔を見合わせた。ヨシタカが攻撃魔法の発動準備をする。

 ヨシタカ
「……まだ何とも言えないが」

 するとガチャリと裏口からマスターとミカと呼ばれるウェートレスが戻ってきた。ミカは呼吸が荒れているように見える。何があったのか? まだ誰にも分からなかった。

 不思議なことにウェートレス・ミカの顔は先ほどより真っ赤であり、恥ずかしいのか下を向きっぱなしであった。

 ミキオは、このカフェが女性(さら)いの窓口として怪しいと想定を確定させ、女性誘拐前の何らかのリアクションが、これかもしれないと独断していた。

 ウェートレスは二人とも飛び抜けて奇麗で可愛いく、スタイルもよく胸も程よく柔らかそう、そして重要なのが気弱そうで真面目っぽい……という点。人攫いに狙われるならアリだろう。

 ウェートレス・ユキ
「お待たせしました、えっと、搾りたてのミカジューでございます」

 ヨシタカ
「うん? ミカンジュースの色をしていないな。まるでミルクだぞ?」

 ウェートレス・ユキ
「は、はい。ミカジューやユキジューは乳白色をしているのが通常です。あ、あの、恥ずかしいです」

 ミキオ
「何だと……。まさかミカジューとはミカンジュースの事ではなくて、しかもユキジューというのも……?」

 モジモジしながら顔を赤くしたウェートレスのユキが、応えにくそうに首を縦にして「ユキジューを注文されますと、それは私のです」と返事をする。

 ミキオ
「マジかよ……怪しい店を探しに来たら、全く方向が斜め上の怪しさとかで、正直戸惑うな」

 ウェートレス・ミカ
「み、ミカジューをお待たせして申し訳ありませんでした。はぁ、はぁ、わたし初めてでしたので、はぁ、はぁ、少し苦労してしまいまして、お恥ずかしいです。美味しく飲んで頂けると私も嬉しいです」

 ヨシタカ
「ミカジュー……というのはミカさんので、なぜか店裏で一緒に行ったマスターが絞って来るのですね?」

 ミキオ
「ユキジューは、ホイップクリームがのってる様な白いジュースではなく、ユキさんの、なのか」

 ウェートレス・ユキ
「は、はい。サッパリしつつ濃厚な味だとお客様に人気です。おひとつ如何でしょうか?」

 ミキオ
「つーことは、もしユキジューを注文したらマスターが絞るのか? ユキさんの胸を」

 ウェートレス・ユキ
「は、はい。私は小ぶりなので一日に何杯もお出し出来ませんが……」

 サトシ
「……なんて、うらやま恐ろしい店だ……」

 ウェートレス・ミカ
「そ、そ、そんなに胸じっと見ないで下さいっ! は、恥ずかしいです、メッですよ、お客様」

 サトシ
「このカフェ店の名前は『()の隠れ家』……ぼくたち店名、間違えて来てないかな……?」

 ヨシタカ
「ああ……そうみたいだな。気づくの遅すぎだ。本来、俺たちが行くべき店は『()の隠れ家』だったな」

 サトシ
「もう僕たちホテルに帰るべきでは」

 ミキオ
「で、注文したミカジュー……、これ飲んでけよ? ヨシタカ」

 ヨシタカ
「マジかよ、鬼だなミキオ……」

 こんな世界があっただなんて……ヨシタカ達は万感の思いを胸に(いだ)き、宿泊ホテルへ足を向けていた。彼らの足取りには力が込められてなく緩やかだった。敵の攻撃を受けるよりも遥かに衝撃を受けた心を映すかのように。


 ◇


 ユアイ
「お兄ちゃん、おつかれさまっ」

 女神ハル
「ヨシくん、おかえりーー、あら? 顔色悪いわね」

 ミズハ
「あれー、大丈夫? すごく体調悪そうよ、回復魔法かけようか?」

 神官エレーネ
「ど、どうされたんですか!? お三方とも」

 侍女ユキシ
「異様に疲れていませんか? 怪しいお店の調査、どうでしたか?」

 渓流神マナ
「変な香りがします」

 男三人
「いや、すまん、確かに怪しかったのだが、店の名前を間違えてしまったようで」
「オレは部屋に戻るよ。少し独りにしてくれないかな」
「僕……、今は何も聞かないでください」


 ◇


 恐るべきカフェ『丘の隠れ家』。
 この店は次の日には霧のように隠れてしまった。

 ミキオ
「お店が無くなってるな……まるで夢の魔法のように」

 ヨシタカ
「どうして再度カフェ店『丘の隠れ家』に来てるんだよ。今日は『森の隠れ家』を調査する筈だろ?」

 ミキオ
「ヨシタカ、お前、ミズハやハルにお代わりしてもらった方が良くないか? 今なら許す」

 サトシ
「待て! ハ、ハルちゃんだけはダメ! 僕の戦力が百分の一になっても好いのかい?」

 ヨシタカ
「だ、誰が絞る役をするんだよ!」


『森の隠れ家』の調査はすっかり忘却の彼方へ。
 リンドバーグ伯爵領は、ますます謎が深まるのであった。