夏祭り、君と初めて。

1.

祭りで人が賑わう中、待ち合わせ場所に時間よりも早めに来たことから暇潰しにとスマホを弄っていた。
が、すぐに気が散ってしまい、側面にある電源ボタンを押し画面を真っ暗にした。そこに映るのはどことなく緊張した面持ちの自分。

彼氏と呼ぶ相手と夏祭りに行くのは初めてだ。
初めてだからこそ、緊張する。

「ごめん、待たせたね」
「あ、いや。俺も来た、ところ──⋯⋯」

顔を上げた瞬間、言葉を失った。
普段は癖っ毛でくるふわっとしている髪が、ワックスらしきものを付け、片側に流すように撫でつけ、今までに見たことがない彼がそこにいた。

「⋯か、カッコいい⋯⋯」
「えへへ、ありがとう。ワックスを付けてみて良かった。夏生も浴衣、素敵だね」
「そっちも! 浴衣を着てくるとは思わなくてびっくりした⋯⋯」
「だって、夏生と初めてのお祭りだよ? やっぱり浴衣で行きたいじゃないか」

容姿を褒められて満更ではなさそうな凪が穏やかにそう言った。
"初めて"に酷く反応してしまった。
そうなのだ。これはいわゆるお祭りデートなのだ。
意識すればするほど鼓動が速まり、落ち着かなくなっていく。

「顔を赤くしてどうしたの?」
「あ、いや! なんでも!なんでもない!」
「⋯⋯可愛いね」

手を絡めてきた凪が耳元で囁いてきた。
途端、囁かれた耳が真っ赤になった。

「お、おま⋯⋯っ! 人がいんのにっ!」
「僕は人目なんて気にしてない。夏生しか見てないんだから」
「だからって、お前そんなことよく平気で言えるな⋯⋯っ!」

もーっ! と振り払い、「夏生っ!」と呼ぶ声には耳を貸さず、一人でさっさと鳥居を潜った。