受けか攻めか、争奪戦? 高校男子ゲイカップルにはとても大きなモンダイです!


「こうしてみるとさ、受けって可愛いとか中性的な男子が多いな。二次元の世界だけど」 
 放課後、サッカーの自主練を終えてから一緒に帰るのが僕たちの日常。
 九月が終わるけれど、夕方になってもジワっと汗が滲む。
 隣に並ぶ琉翔は自主練の熱が残っているのか、冷えたペットボトルを首に当てている。
 運動部らしい小麦色の肌。ペットボトルを支える逞しい腕。上気した筋肉が綺麗に浮き上がっている。
 ――カッコよ。
 見ているだけで僕の心臓がドキドキと速く動く。じっと見つめるのが照れてしまって、目線を地面に移す。
「ははは。ま、筋肉受けとか、おじ受けとか色んなタイプがあるみたいだよ」
「マジ⁉ 俺の知らない世界だ~」
 琉翔は片手で姉から借りたというBL漫画をペラペラめくっている。
「つか、堂々と男が読むもんじゃないって」
 琉翔には恥じらいがないのだろうか。BL本って歩き読みするようなモノではないと思うけど。
「お。そっか。ついさぁ、知らなきゃならないと思うと必死になっちゃって。なぁ、春樹はどこで、知った?」
 ドキッとする。
「どこで? まぁ、普通に、ネットとか。読み放題のサイトなんかで」
 エロ本の好みを伝えるようで気恥ずかしい。そんなことを思う僕がおかしいのだろうか。
「へぇ。どんなサイトか教えて」
「ん。これ」
 スマホの画面を琉翔に向ける。琉翔が本をパタンと閉じて、僕の手元を覗きこむ。
 近づくと琉翔の熱がフワッと伝わってくる。
 その匂いに脳がクラリと揺れる。たぎる血流を自覚して顔が熱い。
 火照る顔を隠すように下を向いた。
「あ、これね。俺も会員登録しよ。あ、つか、どうした?」
 ――近い! 今はダメだ!
 バッと顔を背けてしまった。
 一瞬、琉翔がビクっと反応したのが分かった。
 ――あ、傷つけた?
 そんな不安が過る。
「あ、ごめ……」
「いや、急に近づいて、悪かった」
 微妙な沈黙が流れる。気まずさに冷汗が滲んだとき。
「な、土曜に一緒に出掛けよーぜ」
 琉翔の明るい声が僕の心を軽くする。
「あ、うん。いいね」
 心がホワッと温かくなる。これ、デートだ。僕たちの初デート。嬉しい。
「じゃ、九時半に駅前な。俺のが受けっぽいっって納得させたる」
 ――いやいや、行動力と言い、十分お前は攻めタイプだろうが。
 そんな言葉はグッと飲みこんだ。そして一抹の不安が過る。
「なぁ、女装とかしてくるなよ?」
「俺の思考を読んだのかよ?」
「やっぱしな! やだよ、ガタイの良い高校男子の女装」
「じゃ、春樹も女装なしだぞ。勝負はフェアじゃないとな」
 ――だから、フェアって何だよ!
 そう思いながらも、ははは、と笑いを返した。

 琉翔は良い奴なのだけど、ちょっとズレているところが微笑ましい。
 真っすぐ過ぎて、カッコいいのに可愛い。
 こんなトコも良いんだよなぁ。好きだなぁ、と考えると頬が緩んだ。