「はい! この問題解ける人! この前やった公式使えば簡単だよ!」
「はいはーい!」
うみちゃんの問いに、教室のいたるところから調子のいい声が上がる。うみちゃんは柳を指名。優等生の柳は、すらすらと黒板に数式の答えを書き付ける。
そう――公式だ。
〈攻略本〉には、『いかなる場合も俺の利益を最優先する』という公式がある。
『水嶋瞑を助け、教室内の揉め事を丸く収めるためにはどうすべきか』
俺の〈問い〉に〈攻略本〉がそう答えたということは、水嶋瞑を助ける方策がないというより、彼女と関わることは俺に何らかの不利益が及ぶ可能性があるということなのだろう。
理解はできる。
水嶋は、このクラスの女王とも言える静内瑠夏のグループと対立してしまっている。どう上手く立ち回ろうと、静内のグループと対立せずに水嶋の立場を改善するのは困難を極める。
だからこそ俺は〈攻略本〉の力に頼ろうと思ったのだ。こんな形で〈攻略本〉にすら匙を投げられるとは思いもしなかった。
「…………」
問題を解かせている最中、うみちゃんは教室後ろの窓際へちらりと視線を向けた。
そこには、昨日まで学校を休み続けていた水嶋瞑がいる。表面上は、休み始めるまでと何も変わらない、無表情の鉄面皮だ。
気にしているのはむしろ周りの方だった。ちらちらと視線を向けてはひそひそ話をしたり、明らかに眉を顰めたり。
〈攻略本〉の答えの理由について、もう一つの可能性がある。
俺が何らかの行動を起こした場合、水嶋瞑にとっても良い結果にならないという示唆である可能性だ。
余計なことをして静内の逆鱗に触れるよりは、このまま放っておいて時間が解決するのを待つ方が賢い――〈攻略本〉の〈答え〉は、そういう示唆である可能性もある。
ならば、このまま何もせずに放っておくのも、一つの方策なんじゃないか。
心の中には二つの声がある。
それでいい、そうすべきだ――という俺と、それではだめだ、そんなのは〈正しく〉ない――と叫び続ける俺。どちらの声を優先すべきなのか。
どちらが〈正しい〉のかは、今の俺には判断がつかない。
事件は、その日の昼休みに起きた。
「はいはーい!」
うみちゃんの問いに、教室のいたるところから調子のいい声が上がる。うみちゃんは柳を指名。優等生の柳は、すらすらと黒板に数式の答えを書き付ける。
そう――公式だ。
〈攻略本〉には、『いかなる場合も俺の利益を最優先する』という公式がある。
『水嶋瞑を助け、教室内の揉め事を丸く収めるためにはどうすべきか』
俺の〈問い〉に〈攻略本〉がそう答えたということは、水嶋瞑を助ける方策がないというより、彼女と関わることは俺に何らかの不利益が及ぶ可能性があるということなのだろう。
理解はできる。
水嶋は、このクラスの女王とも言える静内瑠夏のグループと対立してしまっている。どう上手く立ち回ろうと、静内のグループと対立せずに水嶋の立場を改善するのは困難を極める。
だからこそ俺は〈攻略本〉の力に頼ろうと思ったのだ。こんな形で〈攻略本〉にすら匙を投げられるとは思いもしなかった。
「…………」
問題を解かせている最中、うみちゃんは教室後ろの窓際へちらりと視線を向けた。
そこには、昨日まで学校を休み続けていた水嶋瞑がいる。表面上は、休み始めるまでと何も変わらない、無表情の鉄面皮だ。
気にしているのはむしろ周りの方だった。ちらちらと視線を向けてはひそひそ話をしたり、明らかに眉を顰めたり。
〈攻略本〉の答えの理由について、もう一つの可能性がある。
俺が何らかの行動を起こした場合、水嶋瞑にとっても良い結果にならないという示唆である可能性だ。
余計なことをして静内の逆鱗に触れるよりは、このまま放っておいて時間が解決するのを待つ方が賢い――〈攻略本〉の〈答え〉は、そういう示唆である可能性もある。
ならば、このまま何もせずに放っておくのも、一つの方策なんじゃないか。
心の中には二つの声がある。
それでいい、そうすべきだ――という俺と、それではだめだ、そんなのは〈正しく〉ない――と叫び続ける俺。どちらの声を優先すべきなのか。
どちらが〈正しい〉のかは、今の俺には判断がつかない。
事件は、その日の昼休みに起きた。

