幼馴染と離れられないのは、呪いじゃなくて恋のせいでした

放課後。夕暮れの校門を出て、いつものように尚と並んで家路につきながら、僕は昼休みの会話を頭の中で反芻していた。

「僕、スカート似合うらしい」
「履くな」

尚が、いつもより一段低い声で、即座に言った。
横を見ると、尚は前を向いたまま、珍しく不機嫌そうに眉をひそめている。昼休みはあんなに面白がって爆笑していたのに。

「なんで?」

尚はしばらく不貞腐れたように黙り込み、やがて、

「……俺以外に見せんな」

と吐き捨てるように低く呟いた。
僕は足を止め、尚の顔を横からじっと覗き込む。

俺以外に見せるな。
ということは、尚にだけなら見せても問題ないということだよな。

「じゃあ今度履く」
「……は?」
「尚にだけ見せる」
「……そうじゃなくて」

尚は「はぁー……もういい……」と頭を抱えて今日一番の深いため息をつき、歩く速度を速めた。

「尚?」

小走りで追いついて隣に並ぶが、尚は前を向いたまま一向に歩幅をゆるめてくれない。

「……腹痛いのか?」
「……は?」
「顔色は悪くないな」
「違う」
「じゃあ頭? 痛いのか?」
「違う」
「風邪? それともどっか怪我した?」
「違うって」
「大丈夫か?」
「……なんでもないから」

尚はそれ以上何も言わずに、ずんずんと先へ歩いていってしまう。
明らかに機嫌が悪い。……僕が何か不機嫌になるようなことをしたんだろうか。

尚を追いかけながら思考を巡らせてみたが、思い当たる節は一向に浮かんできない。
ゲームは僕の連敗中だし、今日は尚のパンも横取りしていない。

……早くいつもの尚に戻ればいいのに。
置いていかれないように歩幅を広げて、僕はまた尚の隣に並んだ。