~尚side~
朝から、何かがおかしかった。
「ほっくん、今日の昼なに食う?」
普段なら、「ポテト」なんて購買では絶対売ってないものを注文してきたり、「尚のパン奪う」と事前予告してきたりする。
なのに――。
「……カブトムシって樹液好きらしい」
……樹液?
一瞬、何を言われたのか本気で分からなかった。
「会話しろ」
思わず笑ってしまう。
北斗は真顔のまま首を傾げた。
「会話してる」
「してねぇよ」
「樹液の話」
「今、昼飯の話してたよな?」
「そうかも」
やっぱり変だ。
いつもの北斗なら、話がズレること自体は珍しくない。思考が変な方向に飛んでいくし、むしろ日常だ。
でも今日のズレ方は違う。
今日の北斗は、反応そのものが遅い。
授業中、先生が黒板に文字を書く音に合わせて、北斗の頭がゆっくりと前後に揺れている。居眠りかと思ったが、目は開いている。開いたまま、虚空を見つめている。
「ほっくん」
「……ん?」
「寝た?」
「……寝た、……てない」
「どっちだよ。なんか考え事?」
北斗は、んー、と少し考えて。
「今日の空って近いなって」
「哲学始めた?」
本当に何なんだ。
呼べば返事はする。話しかければ答える。
でも、その答えが一拍も二拍も遅れて返ってくる。
まるで頭の中で、遠くにある何かを一生懸命探しているみたいだった。
笑いながら返したけど、胸の奥に、小さな違和感が残った。
その違和感が確信に変わったのは、体育の前だった。
更衣室。クラスメイトが着替える音が響く中、俺はジャージに着替え終わった北斗を見ていた。
……いや。
正確には、着替え終わっていない北斗を。
「ほっくん?」
返事がない。
目の前で北斗は、片腕だけジャージに袖を通したまま固まっている。
「北斗」
少し声を大きくすると数秒後、ようやく「……ん」と顔が上がった。
焦点が、微妙に合っていない。
俺の方を見てるはずなのに、どこか遠くを見ているみたいだ。
「大丈夫か?」
「大丈夫」
即答だったが、その声に力がない。
「北斗」
「うん?」
「今、自分が何してたか分かってる?」
「……着替え」
「何分止まってたと思う?」
よほど考え込んでいるのか、北斗がまた止まる。
もういいよ、と口を開きかけた時、ようやく北斗の口元が動いた。
「……三十秒?」
「五分」
「長い」
「北斗の感想じゃなくて」
ため息をついた、その時だった。
北斗が体育館の方を見て、大真面目なトーンで宇宙の真理でも語るかのように言ってきた。
「……尚」
「ん?」
「体育館ってさ」
「うん」
「デカい」
数秒、沈黙が流れる。
……ああ、確信した。
「熱あるだろ」
「ない」
「いやある」
「絶対ない」
「なんで否定するんだよ」
「体育できるから」
「今、体育館がデカいって言った奴が?」
北斗は真剣な顔で頷いた。そして自信満々に言った。
「デカいけど、いける」
「意味分かんねぇ」
北斗本人は、何一つおかしいことを言っていない顔をしていた。
その瞬間、無性に腹が立った。
心配と、呆れと、なんで気づかないんだっていう苛立ちが全部混ざる。
北斗はいつもそうだ。
靴下履かせろとか、起こしてとか、ジュース買ってとか、そういうことは何でも言うくせに。
なんでいつも、肝心な時だけ「大丈夫」って、一人で済ませようとするんだ。
「北斗」
腕を掴む。服の上からでも分かるくらい、熱い。
「保健室行くぞ」
「体育」
「無理」
「いける」
「お前ジャージも一人で着れないんだぞ」
その言葉に、北斗は自分の袖を見下ろした。
「……今やってた」
「片腕だけ袖突っこんで、五分以上フリーズしてたやつが言うセリフじゃないだろ」
北斗は少し不満そうな顔をした。
「でも体育」
「休む」
「でも」
「休む」
有無を言わさず引っ張ると、更衣室を出たところで、呑気な声が飛んで来る。
「あれ、どうした? サボり?」
市橋が俺と北斗を不思議そうに見比べている。
「悪い。俺と北斗、休むって先生に伝えといて」
それだけ言い捨てて歩き出す。
「及川?」
呼ばれても、振り返らなかった。
今の俺にはそんな余裕は一ミリも残っていなかった。
「先生いないな……」
保健室には誰もいなかった。
室内は静まり返っていて、白いカーテンが窓からの微風で静かに揺れている。
授業が始まったのか、体育館の方からホイッスルの音が聞こえた。
「ほら、横になれ」
窓側のベッドへ北斗を座らせる。
「まだ体育……」
「いいから」
少し強めに肩を押すと、北斗はされるがままにベッドに倒れ込み、シーツの中に沈んだ。
珍しい。
普段なら「やだ」とか「あとで」とか、不毛な押し問答をするはずなのに。
……やっぱりおかしい。
布団を胸まで掛けてやると、北斗はぼんやりと天井を見上げたままで。相変わらず焦点が定まっていない。
そのまま、北斗の額に恐る恐る手を当てる。
「――っ」
熱い。
思った以上だった。
「北斗」
「ん……?」
「これ、いつから」
「今日」
「今日の朝?」
「昨日……かも」
かも、じゃねぇだろ。
思わず奥歯を噛み締める。
昨日……。
昨日の夜まで一緒にゲームして、くだらないことで勝った負けたって騒いで。
北斗は、その時もう熱があったのか。
「……なんで黙ってた」
気付けば、自分でも聞いたことがないくらいにドスの利いた低い声が出ていた。
北斗は毛布を顎のあたりまで引き上げ、重そうに瞼を揺らしながら、ぼーっと天井を見つめている。
「言うほどでもない」
「あるだろ」
「寝たら治るし」
「治ってねぇじゃん」
「……うん」
あっさり認める。
そういうところなんだよ。腹が立つ。本当に。
「お前さ」
椅子を引いてベッドの横へ座る。
「そういう時くらい頼れよ」
言った瞬間、自分でも少し驚いた。怒鳴るつもりなんてなかった。それも病人相手に。
でも、止まらなかった。
「腹減ったとか眠いとかは普通に言うくせに」
普段のこいつは、俺を都合のいい奴隷か何かだと思っている節がある。
恋人って言葉を盾にしているんじゃないかって思う時だってある。
俺に甘えることも、頼ることも、当たり前の権利みたいに使いこなしているくせに。
「なんで熱だけ黙るんだよ。そういう時くらい、頼れよ」
保健室が静かすぎる。さっきまで聞こえていた体育館の歓声だけが遠く響いていた。
北斗は何も言わない。
怒られてると思ったのか、それとも熱で頭が回っていないのか、ただ毛布をぎゅっと握っている。
その手を見ているうちに、少しだけ頭が冷えた。
……違う。
俺は怒りたいんじゃない。
怖かったんだ。
更衣室で立ち止まったまま動かない北斗を見た瞬間。
焦点の合わない目を見た瞬間。
もし倒れていたらって。
もし俺が気付かなかったらって。
そんなことばかり考えていた。
「……悪い。言い方きつかった」
その時だった。
北斗は熱で潤んだ目を少しだけ丸くして、それから小さく首を傾げた。
「……頼ってるけど」
「は?」
思わず聞き返す。
頼っている? 北斗が? どの口で言っているんだ。
昨日から熱があったことを隠し通そうとして、更衣室でフリーズして、俺に力ずくで連れてこられるまで「体育できる」と言い張っていた奴のセリフか。
「頼ってる」
「いや、どこが」
「尚いるし」
意味が分からない。
「僕、尚のこと好きだよ?」
その一言で、頭の中が真っ白になる。
いま、何て言った?
熱でぼんやりとした顔のまま、北斗は毛布の端をぎゅっと握り直した。
そこにロマンチックな雰囲気なんて一ミリもない。
やはり、照れもない。
いつも通りの、真顔。
ただ、思ったことをそのまま口にしただけ、という顔だった。
「迎え来るし。僕、困ったら尚いるって思ってる」
北斗はゆっくり瞬きをする。
「だから安心」
また少し考えてぽつりとつぶやく。
「好きだから」
俺は何も言えなかった。
そんな理由で、そんな当たり前みたいな顔で、そんな一番最強のストレートを投げてくるなんて聞いていない。
……反則だろ。
「……違った?」
不安そうに聞かれて、ようやく我に返る。
それからあまりのキャパオーバーに顔を両手で覆う。
熱い。北斗の額に触れたときと同じくらい、自分の顔が急速に熱くなっていくのが分かった。
……無理。これは効く。
幼稚園の時からずっと、俺は北斗の予測不能な言動に振り回され続けてきた。
変なゲテモノドリンクを飲まされた時も、今まで何回「好き」って言われても、その場でどうにか耐えてきた。
でも今日のこれは、耐えられない。
完全に不意打ちだ。
ずるすぎるだろ、こんなの。
言葉を完全に失った俺は、ただ茫然と椅子に座っているだけで。
心臓はうるさいくらいに脈打っている。
「……尚」
「喋るな。寝ろ」
「顔見えない」
「見なくていい」
指の隙間から覗いた北斗は、まだ少し首を傾げたまま、やがて満足したようにゆっくりと瞼を閉じた。
スースーと規則正しい寝息が聞こえ始める。
眠ってしまった北斗は、さっきまで俺を振り回していた本人とは思えないくらい静かだった。
「……本当に、勝てねぇな」
熱で思考回路が壊れてるくせに。本人は、何を言ったのか覚えてすらいない。
……それが、一番たちが悪い。
朝から、何かがおかしかった。
「ほっくん、今日の昼なに食う?」
普段なら、「ポテト」なんて購買では絶対売ってないものを注文してきたり、「尚のパン奪う」と事前予告してきたりする。
なのに――。
「……カブトムシって樹液好きらしい」
……樹液?
一瞬、何を言われたのか本気で分からなかった。
「会話しろ」
思わず笑ってしまう。
北斗は真顔のまま首を傾げた。
「会話してる」
「してねぇよ」
「樹液の話」
「今、昼飯の話してたよな?」
「そうかも」
やっぱり変だ。
いつもの北斗なら、話がズレること自体は珍しくない。思考が変な方向に飛んでいくし、むしろ日常だ。
でも今日のズレ方は違う。
今日の北斗は、反応そのものが遅い。
授業中、先生が黒板に文字を書く音に合わせて、北斗の頭がゆっくりと前後に揺れている。居眠りかと思ったが、目は開いている。開いたまま、虚空を見つめている。
「ほっくん」
「……ん?」
「寝た?」
「……寝た、……てない」
「どっちだよ。なんか考え事?」
北斗は、んー、と少し考えて。
「今日の空って近いなって」
「哲学始めた?」
本当に何なんだ。
呼べば返事はする。話しかければ答える。
でも、その答えが一拍も二拍も遅れて返ってくる。
まるで頭の中で、遠くにある何かを一生懸命探しているみたいだった。
笑いながら返したけど、胸の奥に、小さな違和感が残った。
その違和感が確信に変わったのは、体育の前だった。
更衣室。クラスメイトが着替える音が響く中、俺はジャージに着替え終わった北斗を見ていた。
……いや。
正確には、着替え終わっていない北斗を。
「ほっくん?」
返事がない。
目の前で北斗は、片腕だけジャージに袖を通したまま固まっている。
「北斗」
少し声を大きくすると数秒後、ようやく「……ん」と顔が上がった。
焦点が、微妙に合っていない。
俺の方を見てるはずなのに、どこか遠くを見ているみたいだ。
「大丈夫か?」
「大丈夫」
即答だったが、その声に力がない。
「北斗」
「うん?」
「今、自分が何してたか分かってる?」
「……着替え」
「何分止まってたと思う?」
よほど考え込んでいるのか、北斗がまた止まる。
もういいよ、と口を開きかけた時、ようやく北斗の口元が動いた。
「……三十秒?」
「五分」
「長い」
「北斗の感想じゃなくて」
ため息をついた、その時だった。
北斗が体育館の方を見て、大真面目なトーンで宇宙の真理でも語るかのように言ってきた。
「……尚」
「ん?」
「体育館ってさ」
「うん」
「デカい」
数秒、沈黙が流れる。
……ああ、確信した。
「熱あるだろ」
「ない」
「いやある」
「絶対ない」
「なんで否定するんだよ」
「体育できるから」
「今、体育館がデカいって言った奴が?」
北斗は真剣な顔で頷いた。そして自信満々に言った。
「デカいけど、いける」
「意味分かんねぇ」
北斗本人は、何一つおかしいことを言っていない顔をしていた。
その瞬間、無性に腹が立った。
心配と、呆れと、なんで気づかないんだっていう苛立ちが全部混ざる。
北斗はいつもそうだ。
靴下履かせろとか、起こしてとか、ジュース買ってとか、そういうことは何でも言うくせに。
なんでいつも、肝心な時だけ「大丈夫」って、一人で済ませようとするんだ。
「北斗」
腕を掴む。服の上からでも分かるくらい、熱い。
「保健室行くぞ」
「体育」
「無理」
「いける」
「お前ジャージも一人で着れないんだぞ」
その言葉に、北斗は自分の袖を見下ろした。
「……今やってた」
「片腕だけ袖突っこんで、五分以上フリーズしてたやつが言うセリフじゃないだろ」
北斗は少し不満そうな顔をした。
「でも体育」
「休む」
「でも」
「休む」
有無を言わさず引っ張ると、更衣室を出たところで、呑気な声が飛んで来る。
「あれ、どうした? サボり?」
市橋が俺と北斗を不思議そうに見比べている。
「悪い。俺と北斗、休むって先生に伝えといて」
それだけ言い捨てて歩き出す。
「及川?」
呼ばれても、振り返らなかった。
今の俺にはそんな余裕は一ミリも残っていなかった。
「先生いないな……」
保健室には誰もいなかった。
室内は静まり返っていて、白いカーテンが窓からの微風で静かに揺れている。
授業が始まったのか、体育館の方からホイッスルの音が聞こえた。
「ほら、横になれ」
窓側のベッドへ北斗を座らせる。
「まだ体育……」
「いいから」
少し強めに肩を押すと、北斗はされるがままにベッドに倒れ込み、シーツの中に沈んだ。
珍しい。
普段なら「やだ」とか「あとで」とか、不毛な押し問答をするはずなのに。
……やっぱりおかしい。
布団を胸まで掛けてやると、北斗はぼんやりと天井を見上げたままで。相変わらず焦点が定まっていない。
そのまま、北斗の額に恐る恐る手を当てる。
「――っ」
熱い。
思った以上だった。
「北斗」
「ん……?」
「これ、いつから」
「今日」
「今日の朝?」
「昨日……かも」
かも、じゃねぇだろ。
思わず奥歯を噛み締める。
昨日……。
昨日の夜まで一緒にゲームして、くだらないことで勝った負けたって騒いで。
北斗は、その時もう熱があったのか。
「……なんで黙ってた」
気付けば、自分でも聞いたことがないくらいにドスの利いた低い声が出ていた。
北斗は毛布を顎のあたりまで引き上げ、重そうに瞼を揺らしながら、ぼーっと天井を見つめている。
「言うほどでもない」
「あるだろ」
「寝たら治るし」
「治ってねぇじゃん」
「……うん」
あっさり認める。
そういうところなんだよ。腹が立つ。本当に。
「お前さ」
椅子を引いてベッドの横へ座る。
「そういう時くらい頼れよ」
言った瞬間、自分でも少し驚いた。怒鳴るつもりなんてなかった。それも病人相手に。
でも、止まらなかった。
「腹減ったとか眠いとかは普通に言うくせに」
普段のこいつは、俺を都合のいい奴隷か何かだと思っている節がある。
恋人って言葉を盾にしているんじゃないかって思う時だってある。
俺に甘えることも、頼ることも、当たり前の権利みたいに使いこなしているくせに。
「なんで熱だけ黙るんだよ。そういう時くらい、頼れよ」
保健室が静かすぎる。さっきまで聞こえていた体育館の歓声だけが遠く響いていた。
北斗は何も言わない。
怒られてると思ったのか、それとも熱で頭が回っていないのか、ただ毛布をぎゅっと握っている。
その手を見ているうちに、少しだけ頭が冷えた。
……違う。
俺は怒りたいんじゃない。
怖かったんだ。
更衣室で立ち止まったまま動かない北斗を見た瞬間。
焦点の合わない目を見た瞬間。
もし倒れていたらって。
もし俺が気付かなかったらって。
そんなことばかり考えていた。
「……悪い。言い方きつかった」
その時だった。
北斗は熱で潤んだ目を少しだけ丸くして、それから小さく首を傾げた。
「……頼ってるけど」
「は?」
思わず聞き返す。
頼っている? 北斗が? どの口で言っているんだ。
昨日から熱があったことを隠し通そうとして、更衣室でフリーズして、俺に力ずくで連れてこられるまで「体育できる」と言い張っていた奴のセリフか。
「頼ってる」
「いや、どこが」
「尚いるし」
意味が分からない。
「僕、尚のこと好きだよ?」
その一言で、頭の中が真っ白になる。
いま、何て言った?
熱でぼんやりとした顔のまま、北斗は毛布の端をぎゅっと握り直した。
そこにロマンチックな雰囲気なんて一ミリもない。
やはり、照れもない。
いつも通りの、真顔。
ただ、思ったことをそのまま口にしただけ、という顔だった。
「迎え来るし。僕、困ったら尚いるって思ってる」
北斗はゆっくり瞬きをする。
「だから安心」
また少し考えてぽつりとつぶやく。
「好きだから」
俺は何も言えなかった。
そんな理由で、そんな当たり前みたいな顔で、そんな一番最強のストレートを投げてくるなんて聞いていない。
……反則だろ。
「……違った?」
不安そうに聞かれて、ようやく我に返る。
それからあまりのキャパオーバーに顔を両手で覆う。
熱い。北斗の額に触れたときと同じくらい、自分の顔が急速に熱くなっていくのが分かった。
……無理。これは効く。
幼稚園の時からずっと、俺は北斗の予測不能な言動に振り回され続けてきた。
変なゲテモノドリンクを飲まされた時も、今まで何回「好き」って言われても、その場でどうにか耐えてきた。
でも今日のこれは、耐えられない。
完全に不意打ちだ。
ずるすぎるだろ、こんなの。
言葉を完全に失った俺は、ただ茫然と椅子に座っているだけで。
心臓はうるさいくらいに脈打っている。
「……尚」
「喋るな。寝ろ」
「顔見えない」
「見なくていい」
指の隙間から覗いた北斗は、まだ少し首を傾げたまま、やがて満足したようにゆっくりと瞼を閉じた。
スースーと規則正しい寝息が聞こえ始める。
眠ってしまった北斗は、さっきまで俺を振り回していた本人とは思えないくらい静かだった。
「……本当に、勝てねぇな」
熱で思考回路が壊れてるくせに。本人は、何を言ったのか覚えてすらいない。
……それが、一番たちが悪い。



