俺は静かな方が好きだ。
別に人と話すのは嫌いじゃないけど、ハイテンションで遊んだりどんちゃん騒ぎしたりするよりは、静かな所で茶をすすりながらでもやりたいことをして落ち着く方が好き。
「雨芽くん、それ読み終わったら貸して」
「あー、うん」
こうやって、お互い好きなことをしていても居心地が悪くないような。ずっと無言で、たまに会話があるくらいでも落ち着いていられるような、そんな人と過ごす方が好き。
「それ面白い?」
「あんまり」
「マジか」
「普通」
子育てを終えた熟年夫婦ばりの会話をしてくれる、まさにこの人がそうだ。俺の前の席に座り、こっちを向いて本を読んでいる。俺は俺で、授業のノートを写させてもらっていて視線は交わらない。
周りには男子達が大笑いしながら談笑する声、走り回って机にぶつかる音、女子達の高い声で繰り広げられるマシンガントークが響いているのに。俺達の所だけ、別空間みたいに静かだ。
前の席の橋本雨芽くん。高校に入ってから知り合った。1年で同じクラスになり、席替えで席が近くなった時になんとなく暇で話しかけた。「雨芽くんっていうんだね、名前」そうやって後ろから声をかけた時、怪訝そうな顔でこちらを見てきたのを覚えてる。
でも、普通に「俺、夜月っていうの。なんか名前似てね?」って真顔で言ったら少し表情が緩んだように感じた。「…いや、似てないし」って気まずそうに呟いてたの面白かったな。
そこから何となくつるむようになり、2年生になってもそれは健在。お互い教室の隅っこで静かに過ごしてる大人しいタイプだからか、波長が合うようだ。雨芽くんも俺と同じで、静かに過ごす方が好きらしい。
他に特定の仲良い友達が居なさそうな雨芽くんに対して、俺は割と他クラスにも友達はいる。でも、やっぱり一緒にいて楽なのは雨芽くんかな。
それと…。
実はそんな雨芽くんについて、俺だけの中で密かに思っていることがある。
それは、『俺の片思いしてる幼なじみ女子に顔が似ているということ』だ。


