はぁはぁ はぁ うぐっ
昼過ぎの今、タープは目的地のエルソンで用件を済まして村に向かって走っている。
(急げオレ、ミキに早く会いたい!)
今朝、エルソンの冒険者ギルドで驚くべきことを教えられた。なんとタープの村が勇者に救われ既に問題解決し、死者も出ず平穏無事だというのだ。
(どうして?)
はぁはぁ
(問題解決が早すぎ! 何があった?)
はぁ うぐっ
(勇者様が助けてくれたって? 勇者って英雄ヨシタカ様か?)
タープが異変を察して村を脱出した時、勇者パーティは既に旅立っていた。誰も残っていなかったのはタープが冒険者ギルドや指定宿泊先で助けを乞うために訪ねて不在だったことからも確かだった。
(何はともあれ助かった。手間も凄くかからなかった)
村は走り続けても数日かかるほど遠い。空間転移の魔法を持たないタープは体力強化でMPが消えるまで走り続けるのみ。疲労が蓄積しヒール代わりの魔法のドリンク、ポーションがなくなったら野宿するしかない。
(もう少し冒険者クラスをあげたいな)
冒険者等級がDクラスで年齢的にはやや優秀な彼でも、人々が驚くようなほどの飛び抜けた魔法も戦闘力も持ち合わせてはいない。少し自虐の入った思考が脳裏に現れるが、それをグッと抑えてひた走る。
(ミキ……。ケガもなく無事だろうけど、操の方も無事だろうか?)
平穏無事という村の様子をギルドマスターから聞かされて、今、気になっているのは間男っぽいブラッコス、シローキの動向だった。彼らは勇者様に退治されたのだろうか。
(今なら分かる。ミキはあの二人から僕を引き離そうとしてくれたんだと)
深夜に村で見たあの二人は多数の住民を操り、精力を奪い吸い尽くしていた。人間ではない魔物であることは間違いない。
(ブラッコス、シローキ、あれは魔物なのか? もっと上級の存在に見えた。邪神のような強い存在……)
年齢的に平均以上のスキルを持つD級冒険者のタープでは全く歯が立たないような強烈なプレッシャー、なぜか疎外感を植え付けられ、孤立した感覚が拭えなかった。
せめてCクラスのスキルがあれば何とか出来たかもしれないのに……。
◇
朝にエルソンの冒険者ギルドのマスターに状況を教えられ、それから夕方までぶっ続けで走り、馬車休憩所の空き地で野宿を始めた。中へと足を踏み入れる。そこに広がるのは、夕暮れの淡い光と、どこか懐かしい静けさと風の香り。タープ以外誰もいなかった。
ポーションを飲み、仰向けに横になった。
しばらく目をつむると夜空になり、星が瞬いていた。
ポーションを飲むと時の流れが変化するのか早く時間が過ぎる気がする。
軽く風が吹き、草原から薬草や香草の混じった香りが漂って来る。
ふと子供の頃に遊んだ光景が蘇る。草原を走り回り、石に躓いて転び、膝を怪我した。
なさけないタープを小さな女の子が背負って家まで歩いて送っていく。身体が小さく可愛らしいのに勉強も魔法のスキルも運動も出来た幼馴染。
(ミキ……)
いくらタープを守るためといっても、ブラッコスやシローキを騙すためには話を合わせて、万が一、彼らに求められてしまっても断り躱す術をミキが持っているとは思えなかった。
(流れでベッドインなんてしていたら……僕は後悔してもしきれない……)
一生、背負っていく覚悟を決める。
男なら負けると分かっていても身体を張って愛しい娘を護るべきじゃないのか。
(あの時……)
タープは思い出していた。
自分では勝てない事、それなら勝てる人を呼んでくる事、その選択肢が与えられていて、自分は思わず強者を呼んでくる事を選んだ。
その選択肢は間違ってはいなかったと思い返す。
(ミキと合流したら、恋人になって欲しいと告白するかな)
意地を張るばかりではなく、素直になって幼馴染と相対することを決めた。
ただ……
まだ知らされていないミキとやつらの情事を知っても、ミキを抱き締められるのだろうか? 自問自答する。
◇
(そういえばサトシは大丈夫だったかな?)
村に行くよとタープと別れた野宿中に出会った男子、サトシという名前だった。危険だからと無理に引き留めようとしたタープだったが、彼は大丈夫、昼間に様子見するだけと言って袂を分かった。
(おせっかいで性格が良かったあいつ、また会えるといいな)
サトシという防具すらしっかり身に着けていなかった冒険者、雰囲気としてはEクラスっぽい男子だった。村に偵察に行くとタープとは反対方向へ走って行った。
無謀ではなく慎重な印象の男子だった。
(みんな無事だったという話、良かった……ほんとうに)
夜が深まると共に、タープも目を閉じて眠りに入った。
数日後にはミキに会える。
昼過ぎの今、タープは目的地のエルソンで用件を済まして村に向かって走っている。
(急げオレ、ミキに早く会いたい!)
今朝、エルソンの冒険者ギルドで驚くべきことを教えられた。なんとタープの村が勇者に救われ既に問題解決し、死者も出ず平穏無事だというのだ。
(どうして?)
はぁはぁ
(問題解決が早すぎ! 何があった?)
はぁ うぐっ
(勇者様が助けてくれたって? 勇者って英雄ヨシタカ様か?)
タープが異変を察して村を脱出した時、勇者パーティは既に旅立っていた。誰も残っていなかったのはタープが冒険者ギルドや指定宿泊先で助けを乞うために訪ねて不在だったことからも確かだった。
(何はともあれ助かった。手間も凄くかからなかった)
村は走り続けても数日かかるほど遠い。空間転移の魔法を持たないタープは体力強化でMPが消えるまで走り続けるのみ。疲労が蓄積しヒール代わりの魔法のドリンク、ポーションがなくなったら野宿するしかない。
(もう少し冒険者クラスをあげたいな)
冒険者等級がDクラスで年齢的にはやや優秀な彼でも、人々が驚くようなほどの飛び抜けた魔法も戦闘力も持ち合わせてはいない。少し自虐の入った思考が脳裏に現れるが、それをグッと抑えてひた走る。
(ミキ……。ケガもなく無事だろうけど、操の方も無事だろうか?)
平穏無事という村の様子をギルドマスターから聞かされて、今、気になっているのは間男っぽいブラッコス、シローキの動向だった。彼らは勇者様に退治されたのだろうか。
(今なら分かる。ミキはあの二人から僕を引き離そうとしてくれたんだと)
深夜に村で見たあの二人は多数の住民を操り、精力を奪い吸い尽くしていた。人間ではない魔物であることは間違いない。
(ブラッコス、シローキ、あれは魔物なのか? もっと上級の存在に見えた。邪神のような強い存在……)
年齢的に平均以上のスキルを持つD級冒険者のタープでは全く歯が立たないような強烈なプレッシャー、なぜか疎外感を植え付けられ、孤立した感覚が拭えなかった。
せめてCクラスのスキルがあれば何とか出来たかもしれないのに……。
◇
朝にエルソンの冒険者ギルドのマスターに状況を教えられ、それから夕方までぶっ続けで走り、馬車休憩所の空き地で野宿を始めた。中へと足を踏み入れる。そこに広がるのは、夕暮れの淡い光と、どこか懐かしい静けさと風の香り。タープ以外誰もいなかった。
ポーションを飲み、仰向けに横になった。
しばらく目をつむると夜空になり、星が瞬いていた。
ポーションを飲むと時の流れが変化するのか早く時間が過ぎる気がする。
軽く風が吹き、草原から薬草や香草の混じった香りが漂って来る。
ふと子供の頃に遊んだ光景が蘇る。草原を走り回り、石に躓いて転び、膝を怪我した。
なさけないタープを小さな女の子が背負って家まで歩いて送っていく。身体が小さく可愛らしいのに勉強も魔法のスキルも運動も出来た幼馴染。
(ミキ……)
いくらタープを守るためといっても、ブラッコスやシローキを騙すためには話を合わせて、万が一、彼らに求められてしまっても断り躱す術をミキが持っているとは思えなかった。
(流れでベッドインなんてしていたら……僕は後悔してもしきれない……)
一生、背負っていく覚悟を決める。
男なら負けると分かっていても身体を張って愛しい娘を護るべきじゃないのか。
(あの時……)
タープは思い出していた。
自分では勝てない事、それなら勝てる人を呼んでくる事、その選択肢が与えられていて、自分は思わず強者を呼んでくる事を選んだ。
その選択肢は間違ってはいなかったと思い返す。
(ミキと合流したら、恋人になって欲しいと告白するかな)
意地を張るばかりではなく、素直になって幼馴染と相対することを決めた。
ただ……
まだ知らされていないミキとやつらの情事を知っても、ミキを抱き締められるのだろうか? 自問自答する。
◇
(そういえばサトシは大丈夫だったかな?)
村に行くよとタープと別れた野宿中に出会った男子、サトシという名前だった。危険だからと無理に引き留めようとしたタープだったが、彼は大丈夫、昼間に様子見するだけと言って袂を分かった。
(おせっかいで性格が良かったあいつ、また会えるといいな)
サトシという防具すらしっかり身に着けていなかった冒険者、雰囲気としてはEクラスっぽい男子だった。村に偵察に行くとタープとは反対方向へ走って行った。
無謀ではなく慎重な印象の男子だった。
(みんな無事だったという話、良かった……ほんとうに)
夜が深まると共に、タープも目を閉じて眠りに入った。
数日後にはミキに会える。



