死の呼び声

 冒険者ギルドへ戻ろうとした僕は正門前で門兵に呼び止められた。

『おいタープ、お前いつの間に外に出たんだ? どうして外から来たのか驚いたぞ。まったく神出鬼没な奴め、わははは』

「いやちょっとね。出た時には誰もいなかったから勝手しちゃったよ。申し訳ありません。ところで、ねぇ、何か変わったことはなかったかい?」

『ん、おかしな奴だな。平穏無事、暇でしょうがないぜ』
「そうだよね。ありがと。ギルドへ行くよ。じゃぁ、また」

『おう、新しい依頼仕事もほどほどにな。冒険者は命を大切にな!』
「はい。ありがとうございます」

 会話からしても感じるが、どうやら昨夜のことは記憶にないらしい。
 冒険者ギルドへ急ごう。

 食堂のネコミミ女史に会った。

「今日は食事じゃないんだ。ミキたち来てないかな?」
『ミキさん達ですか? まだ見てないです。お宿じゃないですかね』

「分かった。ありがとう。ところでさ、昨夜、僕と会わなかったかい?」
『えっ? 私とタープさんが二人きりでデートなんてしてません。誘ってもくれないくせに!』

「あ、あ、ごめん、今度また」
『ちゃんと誘ってくださいね。言質取りましたからっ! ふふ』

 くっ……可愛い。

「ごめんね、また食べに来ますね」
『はい、お待ちしています~』

 次はミキたちの宿泊している宿だ。会えるといいけど。

 指名依頼専用冒険者宿泊施設についた。いつ見ても豪華な宿だ。
 正面から入ってフロントへ行く。前回の受付嬢がいた。ラッキーだ。

『あらタープさん、おはようございます』
「おはようございます。今日もミキに連絡して貰えないでしょうか」

 一応、冒険者ギルドのカードを出して身分証明を行う。

『ミキさんならまだチェックアウトされていませんよ。少しお待ちください』

 受付嬢はそう言って魔法電話で部屋への直通内線をかける。

『あ、お休み中に申し訳ありません。フロントにタープさんがお越しになられていますが、魔法電話をお繋ぎしてもよろしいでしょうか?』

 はい、はい、とやり取りして、受付嬢は端末を僕に渡してくれた。

「ミキ、おはよう、あの、大丈夫か?」
『……』

「ミキ……部屋に誰もいない? 会えるなら部屋に行って話したいんだけど」
『ダメ。あのね、逃げて』

「ちょ、ちょっと待って。昨日のことだけどさ……」

『聞かれるかもしれない……急いで逃げて』

『エルソンで助けを呼んで。ミズハさんとユアイに伝えて』

『手遅れになる前に』

『……好きよ、タープ』

『だから私のことは心配しないで』

「そんな……ミキ」

『ミズハさんとユアイに伝えたらタープはここに来ちゃダメよ。敵は強いわ。強すぎる。手に負えない。いいわね、お願いタープ。それじゃこれで』(プチッ)

 魔法電話は、無情にも沈黙した。

 今すぐミキの部屋へ駆け上がりたかった。

 だが――肌で感じる。ブラッコスとシローキが監視している。

「あ、魔法電話が終わりました。ありがとうございました」
『は、はい、お部屋に行かなくても良かったですか?』

「はい、用件は済みました。前回共々、お手数をおかけして、ありがとうございました」
『いえいえ、いつでもどうぞタープさん』

 笑顔で対応してくれる受付嬢さん。仕事のできる感じがした。
 いよいよエルソンへ行って助力を得る、エルソンの冒険者ギルドへ行けば、ひょっとしたら勇者パーティのメンバーが滞在しているかもしれない。

 ミキや住人たちは夜になるとおかしくなるのか。多分そうだろう。
 何らかの精神的支配下に置かれているのかもしれない。最高に手強い死霊リッチを超える存在がいるのかもしれない。

 エルソンへ向かう。

 ミキの言葉を無駄にはできない。

 一刻も早く助けを呼ばなければならなかった。