勇者たちの使命4 死の呼び声

 ループ町に着いたところで早速冒険者ギルドへ行く。

 ミキが寄っていないかどうか。

『ミキさん、寄っていたんですね。良かったです』
「これで方向が正しいことが分かった。後は追いつくだけだな」

 良かった。

 冒険者ギルドの受付嬢に聞くところによると、ヨレヨレの汚れた白いワンピースとカッターで普段着、ビキニアーマーや魔法ハット(帽子)、魔法使いのローブを着ていなかったという。魔法の杖(スタッフオブマジック)だけは持っていたらしい。

 数日ループに野宿で滞在し、昨日の昼になってから出立したという。

 B級冒険者なので冒険者ギルドの指定宿泊施設を紹介したのだが、冒険者資格を除籍されているからと遠慮して辞退し門の外で野宿したという。真面目なミキらしい行動だった。

「よし、今夜は馬を休めて一泊し、明日の朝にミキを追いかけよう」
『はい、分かりました。購入したいものとかありませんか?』
「ミキを確保したら着替えや食料を与えよう。予備の服が必要かな」
『じゃ、すぐに買いに行きますね』

 女性の服を選ぶことは僕には不得手であり、メグミに任せきりだった。一緒について行ったものの、女性のお店に入るのは中々に恥ずかしかった。思い起こせば妹のエリーに付き合って買い物巡りをしたなぁ、でも妹と違ってメグミは恋愛対象にもなりうるので緊張してしまった。

 帰り際、宿泊施設の近所にグレートボアのステーキを出すお店があり、二人で入った。やはりホワイトボアよりグレートボアの方が美味しかった。舌鼓を打ち満足して宿泊施設に入った。これが最も緊張した。

 ◇

「えっと、メグミちゃんは奥のスペースを陣取って。僕は出入り口に近い方にいるから。あと布団は大丈夫かな、ベッドの方がいい? それならお部屋を変えて貰うけど。そうそう、お風呂はあそこだね。大丈夫、洗面台とお風呂は良い感じだよ。それと着替えだけど、えっと、僕から見えないところに集めて貰って、洗濯はどうしよう? 風呂場で洗って乾かす場所は……っと、この辺が良いかな。僕に見られても恥ずかしいでしょ。君のように可愛い娘の下着を見てはいけないんだと僕は……」

 ――やたら早口かつ流暢な言葉にメグミがビックリしている。ごめん、そんな目で見ないで。

『タープさん、気にしないで』

 一言で切って捨てられた。

『あと、最後の言葉は反則です』

 最後の言葉って何言ったんだろう? 一気に話したせいか自分でも忘れてしまっていた。

「メグミちゃん顔が赤いよ、耳まで。熱でもあるのかな」
『そういうところが嫌いです!』

 嫌われてしまったようだ。なぜだろう、解せん。

「め、メグミちゃんの嫌だという事はハッキリと言って欲しい。僕は妹もいるお兄ちゃんだから、細かいことも叶えるよ。下着は絶対に見ないし、お風呂だって部屋の外に出ていようかい? 絶対にメグミちゃんのことは見ないから。大丈夫。それにさ、僕はミキという幼馴染もいるし、妹もいるし、どちらかと言えば女の子慣れしているというかさ、だから心配しないで、遠慮なくリクエストを言って、頼む、いや、お願い、します……」

 タープの饒舌は止まらなかった。寧ろ、その勢いと熱は増してきていた。

『もういいですってばっ! 気にしないですって。見られても平気ですってばっ!』

 また怒られてしまった。なぜだ、解せん。

『お布団、もっと近づけますからね』

「え”っ」

『襲撃された時は近くにいないといけませんから』

「ん”っ」

 どちらが年上なのか分からなくなった。

 ◇

 お風呂を済まして各自、布団の中に入って小さな明かりだけにして眠ろうという時。

『あの、タープさん。ミキさんが見つかった時、力ずくでは無理ですから会話で納得させるんですよね?』

「そうだけど」

『私相手に練習してみませんか? きっと口車ではミキさんに勝てそうにありませんから、何とか突破口を見つけるためにも練習しておきたいと思うのです。それは私も時々幇助できたらと思いますし、失敗は二度と出来ないと思うのです』

「そうだね、失敗できないのは確か。褒めて心の氷を溶かす、感じかな」

『褒めるだけではダメだと思います。褒めるだけではなく、いい所を見つけて言う事が大切かなと思います。多分ミキさんは自信を失っていると考えられますから』

「分かった」
『それでは私で練習してみてください』

(そうだな……)

「以前、例の事件の際、川の中で突っ立っている時のことなんだけど、メグミちゃんはメガネをかけていなかったんだよね。メガネがない顔は新鮮だった。目が奇麗で驚いたよ。可愛いと思ったね」

『え、あの』

「そして何を隠そう、いつもネコミミが可愛くてさ、柔らかそうで、触りたいなと思っていたんだ。でも確かネコミミや尻尾など触られると凄く嫌なんだよね? 恋人なら触れるんだよね」

『いや、その』

「そして頬っぺた。お餅のようでフワフワ。ずっと触っていたい筆頭だね。そして桃のような……」

『ま、待ってください!』

「へっ?」

『ちょっと、なんか、ダメです、これらの会話はダメですっ』

「そうか、瑞々しくて柔らかそうな唇とかキスしたくなるよ……って難しいね」

『む、難しくなんてないです。方向性が違うと言いますか、ダメです減点です。この話は、ここで終わりですっ! お願いします!』

 減点……解せん。

 するとメグミは布団に潜ってしまった。

(なんなの、この羞恥プレイ、う、嬉しすぎるけど、顔が出せないっ)

『こ、こんなセリフ、いつも他の女の子に言っているんですか?』

「言ってるわけないじゃないですか」

 この後も布団の中に潜ったメグミが何やら言っているのだが、声が小さくて聞き取れなかった。

『よ、容姿についてはもういいですけど、内面については如何ですか?』

「内面ですか? 僕は素直で純朴で恥ずかしがりやな性格も好きですよ」

『なっ!』

「寂しがったりしたら慰めたくなりますし、寒かったら抱き締めて温めたいと思うかな」

『はうっ』

(タープさんは天然のおバカさんです、私の気持ちなんて知らないくせに……こんなにチョロくなってしまった私。タープさんのお布団に入って温めて欲しいなんて言いたくなっちゃう、あ、ダメよ、変なこと考えたらいけません――)

 まるで恋人同士のようなピロートークを繰り広げ、最初の練習という目的から逸脱、メグミは真っ赤になってどうしていいのか分からず、色々な感情が身体中を駆け巡って全身が熱を帯び、そのまま寝落ちするのであった。この夜、いい夢を見たのは言うまでもない。

 ◇

 ――なんだか、すごくいい夢をみていた気がする。
 朝、目を覚ましたメグミは真っ先にそんなことを思った。

『お、おはようございます、タープさん』

 タープはまだ眠っていた。

 ミカがいたため控えられていた秋波(しゅうは)がこれからは炸裂する。