門兵の最敬礼でエルソンを出発し、勇者パーティは旅路を急ぐ。
魔王軍、本拠地から最も近いジャッキ村、最強といわれる村に辿り着いた。木製の粗末な門に立つ、警備団の一人に身分証を提示して、今の村の現状と宿泊施設を尋ねる。
「ご勇者様御一行ですかい? それはまたご苦労さんですたい。この村には旅人は来ないですけ、宿泊施設がない代わり、村長の家に泊めてもらって下せえ。あと村は安全ですけぇの」
ミキオ
「あ、ありがとう」
魔王城の入口は、山に向かって五キロメートルほど奥に行ったところであり、異常は今のところないとのこと。村人たちは元気らしく、また、魔王軍の脅威も感じていないように見えた。
村長
「この村は、魔族と人間のあいの子、ハーフばかりじゃから魔族も襲ってこない、安全じゃけん、ゆっくりしなけぇ」
ぼくたちは村長の自宅に宿泊させて頂くつもりだったけど、部屋数の関係で二名だけ宿泊可、そこを女性陣に譲り、男性陣は村長宅の横でキャンプをする事となった。
ぼくは買い出しに行き、一週間分の食料をマジックバックに詰め込んだ。
そして深夜。
ぼくは村長宅の壁に寄りかかって焚火を見つめていた。ミキオが周辺を警戒してくると言い、立ち上がって席を外す。
明日は魔王の最終決戦、にわかには信じられないな。早いものだ。焚火を見つめ続ける。今、サトシはいない。ひょっとして村長宅の部屋でミズハと……。いや、そんな失礼な妄想は止めよう。
長いようで短かった人生。魔王討伐で変化があったのは、いや、この戦いが終わってしまえば、ぼく以外の全員が国の規定に従って結婚する。可愛く美人な幼馴染、可愛すぎる妹、ガサツなミキオ、好青年でリーダーシップ抜群のサトシ。
みんなぼくから見れば眩しいぐらい輝いている。少し劣等感は持ってしまうよね。でもさ、いいんだ。皆が幸せになってくれるのなら。
ガサガサッ
「ヨシタカくん」
サトシだった。
「やあサトシ」一言だけ告げると、彼はぼくの隣に座った。焚火のオレンジ色の光に照らされる彼は格好良かった。
世間での勇者イメージは決して良くはなかった。例えば、王女と同衾し婚前交渉した、婚約者がいる貴族の娘に手を出した、恋人とラブラブな町娘を寝取ってすぐ捨てた、夫婦である若奥様を等々、勇者が通ったら妊娠を調べろ……だなんて笑えない話もあった。
でもサトシは違う。いいヤツそうに見えたのに実は…というイメージとかけ離れている。いくら唐変木のぼくでもそれぐらいは分かる。ミズハとは最後までいったのかな?
サトシ
「いよいよだな、魔王討伐」
考えてることが違ったようだ。
「……」
ぼくは口を開くことが出来なかった。実は、ミズハとの関係が気になって仕方がなかったんだ。だからこそ、モヤモヤを消すために聞いてみたくなった。
「サトシ、こんなこと聞くのはタイミングが悪いんだけど、あのさ、ミズハとは進展したのかい?」
「……ああ。結婚の約束も、先日、しっかり結んだよ」
「そうか……あの日にか」
王都出立時、国の定めた勇者パーティメンバーの婚約は、もしも旅の間に相互で親しくなった二人には、国の定めた婚約を解消できる権利が与えられる、と聞いていたので、ミズハとの結婚に一途の望みを持っていた。しかしながら、不可能になってしまったようだ。
「ヨシタカくん、すまん」
「いいんだよ」
ぼくは、サトシの胸を拳で小突いて、笑った。
「ぼくの大切なミズハを幸せにしてやって欲しい。頼むよ、サトシ」
「………もちろん」
少し間があった。けど、ぼくはスッキリしたのかもしれない。モヤモヤが緩やかではあるが、解消していった気がする。
ガサガサ
「異常なしだった」
ミキオが周辺警戒から帰ってきた。そして三人で焚火を囲む。ゆらゆら揺れる火の輝きをボーっと眺めていると三人ともが無言になり万感の思いを馳せる。
ヨシタカ
「ミキオは今、好きな子はいるかい?」
ミキオ
「勇者パーティで恋バナかよ!」
ぼくは思った。登場人物が少なすぎた。
そろそろ眠ろう「お休み」と互いに言いながら、明日の決戦のために横になった。
下手をすれば人類最強の村にいるのに、最後は恋バナという僕たち何をやってるんだ感を醸しながら夜は更けていく。
◇
ぼくたちは朝早くにジャッキ村を出発し、賄のメイドさんや騎士たちを村に残し、魔王城への地下トンネルを突き進んだ。
魔族の抵抗は蹴散らし、順調に魔王城そばの最後のセーフティゾーンまで辿り着いた。ここまで来たらひと安心。体力の回復などをして休憩をはさみ、最後のMTGを行った。
サトシ
「とうとう魔王城まで無事に辿り着いた。予想よりも順調で、何の不安もなく作戦をこなしている。これほど順調なのは、ぼくたちの友情、絆、各々の努力であったと思う。みんな、つたないリーダーだったけど協力ありがとう」
「「おう!」」
「「はいっ」」
サトシ
「これからパーティの一人であるヨシタカくんが抜ける。彼が地上に行く前に、最後に何か話しておくことはないか?」
ヨシタカ
「?」
ミズハ
「はい。あ、あのね、ヨシタカ君。一緒に加護の授かった教会へ行くという約束、覚えてるかな? ユアイちゃんと一緒で三人だから、二人きりじゃないから、行こうね」
ヨシタカ
「うん、約束だもんね」
ミズハ
「あ、ありがとう、ありがとうね」
泣きそうな顔をしている。どうしたんだろう? 魔王を倒したら直ぐに会えるのに。
ユアイ
「次はわたし。お兄ちゃん、今までありがとう。……うん。あの、その、わたし、ミキオ君と結婚するよ」
ヨシタカ
「な、なんだってぇーー!!!」
ミキオ
「……、あ、すまん! ヨシタカ。おれさ、ユアイちゃんに一目惚れしてたんだわ、言わなくて、すまなかった。今言ったから、許してな」
ヨシタカ
「えぇ~~、そんな、おめでたい事じゃないか。もっと早く言ってくれよ。ユアイもさ。お祝い品を探さなきゃな。忙しくなるぞ」
ユアイ
「う、うん、……ありがと、お兄ちゃん」
どうしたユアイ、うれし泣きか? 決戦前にそんな精神状態になるなんて、修行が足りぬよ。
ヨシタカ
「なんだか全員、シアワセ光線を出しまくってる、ぼくだけ不幸みたいじゃないか。そんな顔しないでよ。ぼくだって、恋人の一人や二人、すぐに作っちゃうからね」
ミズハ
「恋人は同時に二人作っちゃダメだよ、ヨシタカ君」
◇
サトシ
「さてヨシタカくん、今朝の話なんだが、ジャッキ村の精鋭を借りて、地上の警戒をしてもらっているんだ。敵の俊滅も兼ねて。そのおかげで、ヨシタカくんが地上で待っている必要がなくなった。いち早く先に王都へ帰って欲しい。僕らはなるべく早く追いかけるから、先に宿でも取って待っててくれ」
ヨシタカ
「えっ? それじゃ魔王討伐の結果をぼくが確認する前に、王都に行かなきゃならないの?」
サトシ
「ここまで来たら、女神様の啓示と結果が変わらないものなんだ。啓示は的中率100%だからね。王都で遠慮なく羽をのばしてくれ。女遊びはするなよ」
ヨシタカ
「ミキオみたいなこと言わないでくれ」
ミキオ
「まぁ話し込むのは何だから俺は黙っておく」
サトシ
「それじゃ、国王陛下へ僕たちの勝利メッセージを無事に送り届けてくれよ」
ヨシタカ
「うん、了解したよ!」
サトシ
「みんなに強化を付与してくれ」
ヨシタカ
「ぼくの最大級を与えるよ。みんな無敵になるからね。むんっ! 今、付与かけたよ」
全員
「「ありがとう」」
サトシ
「それじゃ、地上で、王都で会おうな。地上へ行ってこい、転送!」
ヨシタカがその場で消えた。転送が上手く行った後で、全員が目を合わせる。強い覚悟の伴った目であった。
◇
サトシ
「よし、作戦通り、乗り込むぞ!」
「「はいっ」」
「おう!」
魔王軍、本拠地から最も近いジャッキ村、最強といわれる村に辿り着いた。木製の粗末な門に立つ、警備団の一人に身分証を提示して、今の村の現状と宿泊施設を尋ねる。
「ご勇者様御一行ですかい? それはまたご苦労さんですたい。この村には旅人は来ないですけ、宿泊施設がない代わり、村長の家に泊めてもらって下せえ。あと村は安全ですけぇの」
ミキオ
「あ、ありがとう」
魔王城の入口は、山に向かって五キロメートルほど奥に行ったところであり、異常は今のところないとのこと。村人たちは元気らしく、また、魔王軍の脅威も感じていないように見えた。
村長
「この村は、魔族と人間のあいの子、ハーフばかりじゃから魔族も襲ってこない、安全じゃけん、ゆっくりしなけぇ」
ぼくたちは村長の自宅に宿泊させて頂くつもりだったけど、部屋数の関係で二名だけ宿泊可、そこを女性陣に譲り、男性陣は村長宅の横でキャンプをする事となった。
ぼくは買い出しに行き、一週間分の食料をマジックバックに詰め込んだ。
そして深夜。
ぼくは村長宅の壁に寄りかかって焚火を見つめていた。ミキオが周辺を警戒してくると言い、立ち上がって席を外す。
明日は魔王の最終決戦、にわかには信じられないな。早いものだ。焚火を見つめ続ける。今、サトシはいない。ひょっとして村長宅の部屋でミズハと……。いや、そんな失礼な妄想は止めよう。
長いようで短かった人生。魔王討伐で変化があったのは、いや、この戦いが終わってしまえば、ぼく以外の全員が国の規定に従って結婚する。可愛く美人な幼馴染、可愛すぎる妹、ガサツなミキオ、好青年でリーダーシップ抜群のサトシ。
みんなぼくから見れば眩しいぐらい輝いている。少し劣等感は持ってしまうよね。でもさ、いいんだ。皆が幸せになってくれるのなら。
ガサガサッ
「ヨシタカくん」
サトシだった。
「やあサトシ」一言だけ告げると、彼はぼくの隣に座った。焚火のオレンジ色の光に照らされる彼は格好良かった。
世間での勇者イメージは決して良くはなかった。例えば、王女と同衾し婚前交渉した、婚約者がいる貴族の娘に手を出した、恋人とラブラブな町娘を寝取ってすぐ捨てた、夫婦である若奥様を等々、勇者が通ったら妊娠を調べろ……だなんて笑えない話もあった。
でもサトシは違う。いいヤツそうに見えたのに実は…というイメージとかけ離れている。いくら唐変木のぼくでもそれぐらいは分かる。ミズハとは最後までいったのかな?
サトシ
「いよいよだな、魔王討伐」
考えてることが違ったようだ。
「……」
ぼくは口を開くことが出来なかった。実は、ミズハとの関係が気になって仕方がなかったんだ。だからこそ、モヤモヤを消すために聞いてみたくなった。
「サトシ、こんなこと聞くのはタイミングが悪いんだけど、あのさ、ミズハとは進展したのかい?」
「……ああ。結婚の約束も、先日、しっかり結んだよ」
「そうか……あの日にか」
王都出立時、国の定めた勇者パーティメンバーの婚約は、もしも旅の間に相互で親しくなった二人には、国の定めた婚約を解消できる権利が与えられる、と聞いていたので、ミズハとの結婚に一途の望みを持っていた。しかしながら、不可能になってしまったようだ。
「ヨシタカくん、すまん」
「いいんだよ」
ぼくは、サトシの胸を拳で小突いて、笑った。
「ぼくの大切なミズハを幸せにしてやって欲しい。頼むよ、サトシ」
「………もちろん」
少し間があった。けど、ぼくはスッキリしたのかもしれない。モヤモヤが緩やかではあるが、解消していった気がする。
ガサガサ
「異常なしだった」
ミキオが周辺警戒から帰ってきた。そして三人で焚火を囲む。ゆらゆら揺れる火の輝きをボーっと眺めていると三人ともが無言になり万感の思いを馳せる。
ヨシタカ
「ミキオは今、好きな子はいるかい?」
ミキオ
「勇者パーティで恋バナかよ!」
ぼくは思った。登場人物が少なすぎた。
そろそろ眠ろう「お休み」と互いに言いながら、明日の決戦のために横になった。
下手をすれば人類最強の村にいるのに、最後は恋バナという僕たち何をやってるんだ感を醸しながら夜は更けていく。
◇
ぼくたちは朝早くにジャッキ村を出発し、賄のメイドさんや騎士たちを村に残し、魔王城への地下トンネルを突き進んだ。
魔族の抵抗は蹴散らし、順調に魔王城そばの最後のセーフティゾーンまで辿り着いた。ここまで来たらひと安心。体力の回復などをして休憩をはさみ、最後のMTGを行った。
サトシ
「とうとう魔王城まで無事に辿り着いた。予想よりも順調で、何の不安もなく作戦をこなしている。これほど順調なのは、ぼくたちの友情、絆、各々の努力であったと思う。みんな、つたないリーダーだったけど協力ありがとう」
「「おう!」」
「「はいっ」」
サトシ
「これからパーティの一人であるヨシタカくんが抜ける。彼が地上に行く前に、最後に何か話しておくことはないか?」
ヨシタカ
「?」
ミズハ
「はい。あ、あのね、ヨシタカ君。一緒に加護の授かった教会へ行くという約束、覚えてるかな? ユアイちゃんと一緒で三人だから、二人きりじゃないから、行こうね」
ヨシタカ
「うん、約束だもんね」
ミズハ
「あ、ありがとう、ありがとうね」
泣きそうな顔をしている。どうしたんだろう? 魔王を倒したら直ぐに会えるのに。
ユアイ
「次はわたし。お兄ちゃん、今までありがとう。……うん。あの、その、わたし、ミキオ君と結婚するよ」
ヨシタカ
「な、なんだってぇーー!!!」
ミキオ
「……、あ、すまん! ヨシタカ。おれさ、ユアイちゃんに一目惚れしてたんだわ、言わなくて、すまなかった。今言ったから、許してな」
ヨシタカ
「えぇ~~、そんな、おめでたい事じゃないか。もっと早く言ってくれよ。ユアイもさ。お祝い品を探さなきゃな。忙しくなるぞ」
ユアイ
「う、うん、……ありがと、お兄ちゃん」
どうしたユアイ、うれし泣きか? 決戦前にそんな精神状態になるなんて、修行が足りぬよ。
ヨシタカ
「なんだか全員、シアワセ光線を出しまくってる、ぼくだけ不幸みたいじゃないか。そんな顔しないでよ。ぼくだって、恋人の一人や二人、すぐに作っちゃうからね」
ミズハ
「恋人は同時に二人作っちゃダメだよ、ヨシタカ君」
◇
サトシ
「さてヨシタカくん、今朝の話なんだが、ジャッキ村の精鋭を借りて、地上の警戒をしてもらっているんだ。敵の俊滅も兼ねて。そのおかげで、ヨシタカくんが地上で待っている必要がなくなった。いち早く先に王都へ帰って欲しい。僕らはなるべく早く追いかけるから、先に宿でも取って待っててくれ」
ヨシタカ
「えっ? それじゃ魔王討伐の結果をぼくが確認する前に、王都に行かなきゃならないの?」
サトシ
「ここまで来たら、女神様の啓示と結果が変わらないものなんだ。啓示は的中率100%だからね。王都で遠慮なく羽をのばしてくれ。女遊びはするなよ」
ヨシタカ
「ミキオみたいなこと言わないでくれ」
ミキオ
「まぁ話し込むのは何だから俺は黙っておく」
サトシ
「それじゃ、国王陛下へ僕たちの勝利メッセージを無事に送り届けてくれよ」
ヨシタカ
「うん、了解したよ!」
サトシ
「みんなに強化を付与してくれ」
ヨシタカ
「ぼくの最大級を与えるよ。みんな無敵になるからね。むんっ! 今、付与かけたよ」
全員
「「ありがとう」」
サトシ
「それじゃ、地上で、王都で会おうな。地上へ行ってこい、転送!」
ヨシタカがその場で消えた。転送が上手く行った後で、全員が目を合わせる。強い覚悟の伴った目であった。
◇
サトシ
「よし、作戦通り、乗り込むぞ!」
「「はいっ」」
「おう!」



