勇者たちの使命

 外見は五メートルもの壁が街を覆っていて随分と大きい。要塞都市といった印象だ。大きな門が正面にあったので、そのまま近寄り、門兵に身分証を見せた。兵は直立不動の敬礼をして説明を始める。

「この街は現在、夜の外出を控えるように領主さまから伝達されております。今までは外部からの侵略など攻撃は完全に防いでおりましたが、街の内部にある炭鉱から悪霊が出てくるようになった為、攻防戦が五か月間継続しております」

 聖騎士ミキオ
「五か月間も!? ……うん、続けて」

「領主さまは王都へ報告し、騎士団の援軍が来ましたが、一週間前に半壊、現在は押されております。敵は死霊系のゴーストと思われますが、出現するタイプは様々な亜種が存在しており、絞り込むのが難しく、弱点を突くという作戦はかなり厳しい状況です」

 勇者サトシ
「なるほど、浄化魔法の効果は?」

「はい。効果はございますが、殲滅するほどの決定打を放てる治癒師がおらず、難儀しております」

 聖女ミズハ
「分かりました。わたしの浄化魔法が期待できます。今夜にも対処いたします。皆さまは他に情報がありましたら、私たちにお知らせください」

 門兵
「イエス! マーム」

 ……ということで通過を許され、宿泊施設の場所を教えてもらって、夜までに更なる詳細な追加情報を提出するよう求めた。

 ミズハは話を聞いただけで容易に俊滅できると判断し、兎にも角にも暗くなるまではゆっくりしようという事になった。

 驚くことに、否、逞しい住民の人たちはお店は出しているし、普通に歩いている。悪霊は、夜以外は出てこないそうで、攻防戦の形勢が圧倒的に悪くならない限りは、愛着のあるこの街が必ず復活するからと、住み続ける覚悟だという。郷土愛が強いんだなと感心した。

 宿で軽装に着替えて、ぼくはミズハとユアイの三人でお店巡りをした。購入するのはペンダント。アクセサリー店を何件も見て、鳥の串や焼き魚、焼き肉の出店などに寄っては買い食いした。

 お祭りの時は特に美味しく感じるよね、さっき食べた串焼きも本当に美味しかった。

 あるアクセサリー店にて、輝くようなペンダントを見つけた。宝石が入っており、側がオリハルコンだった。ミズハとユアイに「どうかな?」と聞くと二人とも「すごく奇麗」、「お兄ちゃん、持ってるね」と喜んでいたので、二人のプレゼントとして購入した。

 店の親父さんが二人を見て「別嬪(べっぴん)さんを連れて、兄さん、羨ましいぞ」と僕に向かって言った。

 少し恥ずかしながら「幼馴染と妹ですよ」と返事をしたら「なぜかもっと羨ましい」と言われた。

 早速、ぼくは回復と基本スキル増強を付与して、彼女たちにペンダントをつけてあげた。

 ヨシタカ
「とても似合ってるよ」

 ミズハ
「相変わらずヨシタカ君の付与魔法はすごいね」

 ユアイ
「お兄ちゃん、ありがとー。大切にするね」

 二人とも、昔の感覚に戻っているのか、ニコニコで、手はつなぐは、腕は組むは、抱き着くは、普通のカップルのようなイチャイチャぶりだった。

 人類を代表するような重要人物とは、とうてい思えないや。

 それからも「ネーネー、あっち~」とか「温泉があるよ、入りたいよね、魔王退治の帰りに」とか、ぼくは引きずられていくのであった。

 ミズハ
「ねぇ、私たちが育ったところの教会、ユアイちゃんやヨシタカ君が勇者パーティに入る女神様が加護を与えて下さった場所。全てが終わったら、教会に一緒に行こうよ」

 ユアイ
「教会、思い出す……、いきなり自分がVIP待遇になって衝撃的だったよ。お兄ちゃんと手を繋いで訪れたいな」

 ヨシタカ
「うん、約束するよ。あの教会行こうね」

 ◇

 ミズハ
「ふふっ、楽しすぎて疲れちゃったわね」

 ユアイ
「わたしもー。今までお兄ちゃんと離れてたから、お兄ちゃん成分を補充しないとね」

 ミズハ
「ずるい! わたしも」

 と言いながら、また二人で引っ付いてくる。

 ヨシタカ
「二人とも甘えん坊さんだな~」

 笑って、ユアイの頭をなでる。ミズハの腰に手を回す。

 ミズハも凄く笑っていた。昔の夏祭りもこんな感じだったなぁと思い出す。またこのタイミングで、ミズハは少しだけ寂しい顔をした。

 ヨシタカ
「なぁミズハ、今一瞬だけど寂しい顔したよね? 何か悩んでいることあるの? 相談に乗るよ」

 ミズハ
「ううん、何でもないよ。疲れただけかな。気にしてくれて、ありがとう。わたし、あなたの事いつも好き。幸せだよ」