いよいよ出発だ。緊張している若者たち。
五人は国王陛下の謁見を終え、そのまま王城から王都のメインストリートを専用馬車で”出立のパレード”を行う。勇者馬車が先頭で、聖女と共に立ち上がって仲良く手を振る、その後列には騎士たちが連なっていて、とても壮大な風景である。
両側には沢山の住民が詰めかけ「がんばって!」と声援を送りながら手を振っている。中にはスラム街の子供たちがいて、粗末な格好ながらも手作りの勇者旗を作り、一生懸命に振っていた。
聖付与師のヨシタカは「うん、ぼくたちも頑張るよ、みんなの笑顔を守るために頑張るよ!」と返礼をする。
「お貴族さまなのにお返事をくれたよ!」と子供たちが喜ぶ。
◇
勇者パーティは全員、貴族になっていた。
ヨシタカと聖女ミズハを除き、勇者パーティのメンバーの全員が子爵を拝命していた。聖女はそのままで社会的地位を示し、王族や公爵クラスの最上位であり、一方の聖付与師ヨシタカだけは残念ながら最下級の”騎士爵”であった。
この世界をはじめとする、ありとあらゆる世界にはテンプレの神という存在がいる。
パーティメンバーより一段実力の劣るものが組み合わされ追放が生じる、冒険者ギルドの登録カウンター直前でチンピラに絡まれる、幼馴染の美少女をNTRにあってフラれると学校一の美女に惚れられる、聖女や美人魔術師は勇者に寝取られる、貴族の馬車が魔物や盗賊に襲われているのに出くわす等々、この世界の隅々に行き渡る細やかな配慮(お約束)は、まごうことなき神の御業といえよう。
国王は聖付与師だけが騎士爵では不当であり、将来に起きる可能性が高まる追放を避ける為、テンプレ神にあがらおうと少なくとも子爵、男爵以上に推薦・推挙したが、聖付与師スキルの評価が低く、周りの理解が追いつかず最下級の騎士爵のままであった。
今回の魔王討伐への遠征が無事に終われば、勇者パーティのメンバーは基本的にそれぞれ伯爵に、残りのヨシタカだけは格の低い男爵に格上げされる予定である。
また、魔王討伐後、勇者と聖女が婚姻を結び、大魔導士が王子殿下と婚姻、聖騎士は公爵家の次女と婚姻、聖付与師は子爵または男爵の娘と婚姻するという取り決めがなされた。
勇者パーティにて、もしもメンバー同士が親密な関係がなされた場合、婚約は破棄され、自由選択の権利が与えられるということだった。
聖付与師ヨシタカは、自分以外の誰もが幸せになってくれれば好いと思っていた。元からのお人好しであり、根っこからの善人であった。
心の奥底にて幼馴染のミズハの事を想う。泥だらけで遊んだミズハが、今では聖女様。いつの間にか凛とした高潔な性格そのものの姿になり自分には眩しすぎると実感、感服している。民衆から支持を受け、美しい姿と慈愛の籠った目と微笑み、惚れ惚れしてしまう。
「勇者サトシなら幸せにしてくれるんだろうな」
ミズハとは幼少の頃とはいえチュッと三回だけキスしていた。ヨシタカは自分の好意を押し込めながら、懐かしさと恋の苦しさを感じていた。
また、大魔導士の妹ユアイを思う。
妹は美人のミズハと比較すると可愛い系であり、小さな体を一生懸命動かし、兄であるぼくの後ろをトコトコついてきていたものだ。目に入れても痛くないほどの可愛さだった。
それが今では大魔導士だという。物凄い出世だ。確かに小さい頃から魔法が得意で一緒に上達しようと野原で頑張った。魔法の勉強も毎日何時間もやり努力家だった。
ぼくは、パレードのイチ主役にも拘わらず、ほんわか懐かしさに浸っているだけだった。
◇
【悪霊の街・エルソン】
魔王城へ向かう馬車の中では、再会の喜びと親交を深め合った。
勇者馬車は五名乗りの仕様であり、サスペンションが効き、馬車特有の辛い振動が軽減されていた。また馬には付与魔法をかけ、体力強化と自動回復で長距離、且つ、早く到着できる。騎士たちの馬車も同様だ。
サスペンションのない普通の貴族の馬車より豪華に出来ているのは、それだけ本気度の高い魔王討伐だからであった。それでも馬は万能ではない。生き物としての限界があるため、途中での水飲み休憩は必須である。
ぼく達は、十二歳で女神様の加護を受け、もう六年間ものパーティとなっている。会話は多少、口の砕けた感じになっている。
聖女ミズハ
「ねぇ、大きな湖があるよっ。奇麗だ~」
大魔導士ユアイ
「ミズハねえちゃん、光が湖に反射して奇麗だネ」
聖騎士ミキオ
「良さそうな魚が棲んでそうだな。釣りしたくなるねぇ」
勇者サトシ
「この自然の美しさ、これらを守らねばと強く思うよ」
聖付与師ヨシタカ
「ぼくは、このメンバーもしっかり守りたいな」
勇者一行は、途中の大きな街であるエルソンにて三日の宿泊をすることに決めた。この街はミスリル、オリハルコンをはじめとする希少価値の高い鉱物が産出することで発展してきた。それなりに街は大きく、宿泊施設も多い。買い物もできるので息抜きには最適な街であった。
ユアイ
「ねぇねぇーお兄ちゃん、街に着いたらさ、一緒に買い物行こっ!」
ヨシタカ
「うん、時間があったらいいね」
ミズハ
「私も行く。ダメと言ってもついて行くからね!」
ヨシタカ
「ダメだなんて言わないよ。一緒に行こう」
ミズハ
「うん!」
ヨシタカ
「二人にはミスリルのお土産を買ってあげようか。自動回復の最上位魔法を付与しておくよ」
ミキオ
「俺の買い替えた魔道剣にも付与頼むな」
サトシ
「聖剣には付与できないのが悔しいよ」
ヨシタカ
「ミキオの剣には重ね掛け、サトシにはペンダントに付与しておくよ。宿に着いたら剣を出してね」
ミズハ
「ふふ……なんだか昔に戻ったみたいだね」
ユアイ
「だったら今日は一緒にベットで寝よ。お兄ちゃんも入れて」
ミズハ
「だ、ダメよっ! 婚姻前の男女が一緒の寝床に入って……同衾するなんて、だって、わたし……ブツブツ」
ミキオ
「ははっ、ミズハちゃんはキスの経験もないんだろ?」
ミズハ
「キ…キス…バカにしないで! 私だって、キ…キ……ちょっと助けてよヨシタカくん」
ヨシタカ
「まぁミズハもユアイもキスの経験ないんだから、許してやってよミキオ」
ミキオ
「そういう事にしておいてやるさ」
サトシ
「お~い皆、炭鉱の街エルソンが見えたよ」
エルソンという街に辿り着いた。
五人は国王陛下の謁見を終え、そのまま王城から王都のメインストリートを専用馬車で”出立のパレード”を行う。勇者馬車が先頭で、聖女と共に立ち上がって仲良く手を振る、その後列には騎士たちが連なっていて、とても壮大な風景である。
両側には沢山の住民が詰めかけ「がんばって!」と声援を送りながら手を振っている。中にはスラム街の子供たちがいて、粗末な格好ながらも手作りの勇者旗を作り、一生懸命に振っていた。
聖付与師のヨシタカは「うん、ぼくたちも頑張るよ、みんなの笑顔を守るために頑張るよ!」と返礼をする。
「お貴族さまなのにお返事をくれたよ!」と子供たちが喜ぶ。
◇
勇者パーティは全員、貴族になっていた。
ヨシタカと聖女ミズハを除き、勇者パーティのメンバーの全員が子爵を拝命していた。聖女はそのままで社会的地位を示し、王族や公爵クラスの最上位であり、一方の聖付与師ヨシタカだけは残念ながら最下級の”騎士爵”であった。
この世界をはじめとする、ありとあらゆる世界にはテンプレの神という存在がいる。
パーティメンバーより一段実力の劣るものが組み合わされ追放が生じる、冒険者ギルドの登録カウンター直前でチンピラに絡まれる、幼馴染の美少女をNTRにあってフラれると学校一の美女に惚れられる、聖女や美人魔術師は勇者に寝取られる、貴族の馬車が魔物や盗賊に襲われているのに出くわす等々、この世界の隅々に行き渡る細やかな配慮(お約束)は、まごうことなき神の御業といえよう。
国王は聖付与師だけが騎士爵では不当であり、将来に起きる可能性が高まる追放を避ける為、テンプレ神にあがらおうと少なくとも子爵、男爵以上に推薦・推挙したが、聖付与師スキルの評価が低く、周りの理解が追いつかず最下級の騎士爵のままであった。
今回の魔王討伐への遠征が無事に終われば、勇者パーティのメンバーは基本的にそれぞれ伯爵に、残りのヨシタカだけは格の低い男爵に格上げされる予定である。
また、魔王討伐後、勇者と聖女が婚姻を結び、大魔導士が王子殿下と婚姻、聖騎士は公爵家の次女と婚姻、聖付与師は子爵または男爵の娘と婚姻するという取り決めがなされた。
勇者パーティにて、もしもメンバー同士が親密な関係がなされた場合、婚約は破棄され、自由選択の権利が与えられるということだった。
聖付与師ヨシタカは、自分以外の誰もが幸せになってくれれば好いと思っていた。元からのお人好しであり、根っこからの善人であった。
心の奥底にて幼馴染のミズハの事を想う。泥だらけで遊んだミズハが、今では聖女様。いつの間にか凛とした高潔な性格そのものの姿になり自分には眩しすぎると実感、感服している。民衆から支持を受け、美しい姿と慈愛の籠った目と微笑み、惚れ惚れしてしまう。
「勇者サトシなら幸せにしてくれるんだろうな」
ミズハとは幼少の頃とはいえチュッと三回だけキスしていた。ヨシタカは自分の好意を押し込めながら、懐かしさと恋の苦しさを感じていた。
また、大魔導士の妹ユアイを思う。
妹は美人のミズハと比較すると可愛い系であり、小さな体を一生懸命動かし、兄であるぼくの後ろをトコトコついてきていたものだ。目に入れても痛くないほどの可愛さだった。
それが今では大魔導士だという。物凄い出世だ。確かに小さい頃から魔法が得意で一緒に上達しようと野原で頑張った。魔法の勉強も毎日何時間もやり努力家だった。
ぼくは、パレードのイチ主役にも拘わらず、ほんわか懐かしさに浸っているだけだった。
◇
【悪霊の街・エルソン】
魔王城へ向かう馬車の中では、再会の喜びと親交を深め合った。
勇者馬車は五名乗りの仕様であり、サスペンションが効き、馬車特有の辛い振動が軽減されていた。また馬には付与魔法をかけ、体力強化と自動回復で長距離、且つ、早く到着できる。騎士たちの馬車も同様だ。
サスペンションのない普通の貴族の馬車より豪華に出来ているのは、それだけ本気度の高い魔王討伐だからであった。それでも馬は万能ではない。生き物としての限界があるため、途中での水飲み休憩は必須である。
ぼく達は、十二歳で女神様の加護を受け、もう六年間ものパーティとなっている。会話は多少、口の砕けた感じになっている。
聖女ミズハ
「ねぇ、大きな湖があるよっ。奇麗だ~」
大魔導士ユアイ
「ミズハねえちゃん、光が湖に反射して奇麗だネ」
聖騎士ミキオ
「良さそうな魚が棲んでそうだな。釣りしたくなるねぇ」
勇者サトシ
「この自然の美しさ、これらを守らねばと強く思うよ」
聖付与師ヨシタカ
「ぼくは、このメンバーもしっかり守りたいな」
勇者一行は、途中の大きな街であるエルソンにて三日の宿泊をすることに決めた。この街はミスリル、オリハルコンをはじめとする希少価値の高い鉱物が産出することで発展してきた。それなりに街は大きく、宿泊施設も多い。買い物もできるので息抜きには最適な街であった。
ユアイ
「ねぇねぇーお兄ちゃん、街に着いたらさ、一緒に買い物行こっ!」
ヨシタカ
「うん、時間があったらいいね」
ミズハ
「私も行く。ダメと言ってもついて行くからね!」
ヨシタカ
「ダメだなんて言わないよ。一緒に行こう」
ミズハ
「うん!」
ヨシタカ
「二人にはミスリルのお土産を買ってあげようか。自動回復の最上位魔法を付与しておくよ」
ミキオ
「俺の買い替えた魔道剣にも付与頼むな」
サトシ
「聖剣には付与できないのが悔しいよ」
ヨシタカ
「ミキオの剣には重ね掛け、サトシにはペンダントに付与しておくよ。宿に着いたら剣を出してね」
ミズハ
「ふふ……なんだか昔に戻ったみたいだね」
ユアイ
「だったら今日は一緒にベットで寝よ。お兄ちゃんも入れて」
ミズハ
「だ、ダメよっ! 婚姻前の男女が一緒の寝床に入って……同衾するなんて、だって、わたし……ブツブツ」
ミキオ
「ははっ、ミズハちゃんはキスの経験もないんだろ?」
ミズハ
「キ…キス…バカにしないで! 私だって、キ…キ……ちょっと助けてよヨシタカくん」
ヨシタカ
「まぁミズハもユアイもキスの経験ないんだから、許してやってよミキオ」
ミキオ
「そういう事にしておいてやるさ」
サトシ
「お~い皆、炭鉱の街エルソンが見えたよ」
エルソンという街に辿り着いた。



