公爵令嬢・オブ・ジ・デッド

 あの公開法廷から3年が経った。
 私は城の窓から世界を眺めた。ここから眺める世界は平穏で、争いの兆しすら見えない。争いは既に遠くに過ぎ去った。
 現在、この近隣諸国が統一されようとしている。
 私の正妻はシャーロットのままだ。私たちの間の裏切りや諍いは棚上げにされている。その他にミラベルの指示した側室が2人いる。隣国の介入によって崩壊しかけた貴族間のバランスを取るためだ。その側室との関係もほどほどに良好に保たれている。

 いや、これで良かったのかも知れない。
 少なくともミラベルが私の妻になることは避けられた。王妃より高い地位に祭り上げたのだから。
 現在、この国の実質的最高統治者はミラベルだ。何故ならミラベルは聖女で、戦神の代理である。国民に崇められているし、そもそも武力では誰も敵わない。死人である故か眠ることもなく油断もない。年も取らないし、あの優秀な死霊術師の魔法のためか、多少の怪我は自動的に修復される。
 そして現在も一騎当千の腕を振るいながらミラベルを狂信する兵士たちとともに。不死の身体で戦場を駆け巡っている。
 まさしくミラベルはこの国に千年楽土を築き上げるのだろうし、それは成功するのだろうな、と思う。

 けれどもそれは、ミラベルが不死となったからではない。私は物心付く前からミラベルを知っていた。小さい時からミラベルの心はこの国の剣であり、それ以外ではなかった。だから本当はミラベルを妻としたくない私がシャーロットの口車にのったのだ。
 冷静に考えればミラベルもわかるだろう。いくらなんでも一男爵令嬢が出来る革命ではない。つまり王族の中に手引者がいない限り。けれどもそれについて、ミラベルからの指摘は未だない。本当に気がついていないのか、気がついていて何も言わないのか、それはわからない。いずれ王家の剣にとっては、過去の事象として意味がないことなのかもしれない。
 美しいミラベルは今も堂々と民衆を率いて、この国のために戦い続けている。その姿は神々しいともいえるほどだ。彼女がゾンビであることは私と数人しか知らない。
 隣国を排除しミラベルとの結婚も防げたという結果は望みうる最良、なのかもしれない。