[超短編]推し語りしてたら幼馴染に迫られた。

人気急上昇中の6人組男性アイドルグループ『アンジェリューク』
『天使の光』というコンセプト通り、全員が光をまとったようにキラキラと輝いている。
つまりは顔がいい。
面食い歴17年の俺、大倉忍(おおくらしのぶ)は『アンジェリューク』こと『アンリ』に完全にドハマリしてしまった。
だって顔がいいんだもん。

「なあなあ、光輝(こうき)!今のリヒトの顔やばくね?」
ライブ映像から目を離さないまま、俺の隣に座る幼馴染に話しかける。
「やばいよな?」
……返事がない。
横を見ると、光輝は眉間にしわを寄せて、食い入るように映像を観ていた。
よしよし、光輝もアンリにハマりかけてるな。
このまま沼に引きずり落としてしまおう。
そうしたら、一緒にライブ行ったり、グッズを集めたり、絶対楽しいだろうな。
「忍、加藤カイトはどうした?」
妄想を繰り広げている俺に、光輝は静かな声で言った。
加藤カイトは少し前まで、俺が推してた俳優なんだけど……
「だって、金髪にしたじゃん」
拗ねたように言うと、光輝は俺の顔を見て、目を丸くする。
「それでやめたの?髪色変えただけで?!」
「だ、だって……」
金髪にしたらなんか違ったんだよな。
自分でも意味分かんないけど、金髪にしたとたん、興味がなくなってしまった。
「その前の浅野アリサは?」
「あの子は清純派からジャンル変えたし」
「その前の前の山口ヤマトは?」
「あぁ、だって熱愛報道があったから」
「その前の前の前の―――」
光輝って、俺の歴代の推し、よく覚えてるよな。
感心しながら、一人一人理由を答えていく。
こうしてみると、俺の好みって一貫している。
黒髪で肌が白くて、目がぱっちりしていて鼻は目立たない。
唇は薄くてエクボがあったら最高だ。
でも、恋人の存在がチラホラしだしたら、もうアウト。
一気に冷めてしまう。
「忍、許容範囲狭すぎ」
光輝がため息をついて、呆れた顔をする。
「そんなこと言われたって……」
「熱愛はともかく、推しってそういうんじゃないだろ?髪色変えたからって、そんな簡単に冷めるもんじゃないって」
「いや、リヒトだけはもう永遠に推す。顔が俺の理想すぎる」
「金髪にしても?」
俺は力いっぱい頷いた。
光輝は信じられないというように、腕を組んでいる。
「あの目!横幅も二重幅もまつ毛の生え方もいい。笑ったときの口角の角度も完璧だし。それに、あのエクボ見ろよ。芸術的だろ?」
早口でまくしたてると、光輝が口だけでニッと笑った。
なんだ?と思っていると、自分の頬を指差す。
「俺もエクボあるけど?」
「そうだな」
「黒髪だし」
「……うん」
「肌も白い」
「………」
「それに、恋人いない歴17年」
「モテるのにな」
「一途だから」
「……なんだよ!」
最悪だ。俺の顔、絶対赤くなってるじゃん。
光輝は満足そうに「ふふ」と笑う。
薄い唇から白い歯がのぞいた。
「忍の『理想の顔』って、最初から俺だったんだろ?」
完璧すぎるその目に覗き込まれ、俺はいたたまれなくなって両手で顔を覆った。
「っ!そりゃそうだろ!保育器にいたときからお前の顔見てるんだから!」
光輝はそんな俺の手をとって、「俺に落ちてるって、いい加減認めなよ」と愛おしそうに笑った。



fin.