君との恋は放物線を描くように

 ◇

 二泊三日の合宿も無事に終わり、いつもの日常が戻ってきた。
 天津と正式に付き合ってからも変わらず朝練は続いているし、一緒に登校したり、帰ったりしている。
 俺としては天津との関係に新たな名前がついただけだ。天津と本当の恋人同士になった。ただ、それだけ。
 でも想いが通じ合っているという安心感が、俺の気持ちを強くも、柔らかくも、温かくもした。



「ねぇ、先輩。俺と先輩で順番にシュート打って、俺が最後までミスらなかったら、キスしてもいいですか?」
「は?」

 部活終わり、片付け当番のローテで天津と一緒になった日の夜。
 天津は突然、そんなことを言い出して綺麗なスリーポイントシュートを放った。お手本みたいな放物線を描いてボールがリングに吸い込まれていく。
 どうやら今日も絶好調みたいだった。

「いま、なんて?」
「だから、俺と先輩で順番に」
「じゃなくて、最後」
「キスしてもいい、って聞いたこと?」

 天津の口からさらりととんでもない爆弾が投下されて、俺は持っていたボールを落とす。
 天津と付き合い始めたとはいえ、何も変わらない日々が続くと思っていたのに。
 どうやらそれはいまこの瞬間に塗り替わろうとしているようだった。

「俺、言ったじゃないですか。先輩と付き合ったらしたいこと」
「あー、うん、言ってた、けど……」

 そのときの発言を思い出して、じわりと背中に汗が滲む。もう暑さも落ち着いた秋の夜長だというのに、一気に体が火照った。

 いや、でもそうか。そうだよな、付き合ってるんだし。
 それに、俺だってそういうことに興味がないわけではない。
 俺だって、天津とキス……してみたいんだから。

「ってことで、俺からいいっスか?」
「……わかった。今回は絶対に勝つ」
「本当に俺に勝てるんスか?」
「うわ、生意気〜」
「てか、先輩が俺に勝っちゃうとキスの話が流れるんで絶対に勝ちます」

 先行を選んだ天津がボールを構えて、ぽーんと高くボールを放つ。
 俺も負けじとボールを放った。一回目は、二人とも成功だ。

「いーや、今回は俺が勝つよ。ていうか、俺が勝って、天津にキスしてもらうんだから」
「え」

 綺麗なシュートモーションに入っていた天津が、驚いた目で俺を見る。
 体勢を崩していても綺麗に入るはずのボールが、今回はリングから外れた。

「やった。もーらい!」
「……先輩、ズルい」
「なんとでも言え。勝負は勝負なんだから。てか、いいの? 俺のシュート邪魔しなくて」
「しませんよ、むしろ絶対に入れてください。なにがなんでも入れろ」
「うわ、顔こわ……」

 天津のご要望通り、俺は綺麗なシュートを決める。
 そのあと、リング下でバウンドするボールには目もくれず、天津が俺の体を引き寄せた。

「本当にいいんですか?」
「あ、改めて、聞くなよバカ……。っていうか、別に勝負しなくたって、いくらでもするし」
「……へぇ、俺といくらでもしたいんだ?」
「渉!」

 ニヤニヤと笑って、天津が俺の頬に手を伸ばす。
 焦らすようにサイドの髪を耳に掛けられて、優しく顎を指先で引き上げられて。

 思った以上に睫毛が長いだとか、天津の影が顔に落ちてくるだとか、そんなことを思っているうちに柔らかな感触が唇に振ってきて、俺は目を閉じたのだった。