運命の歯車が狂った。

「……おかえりー、杏子(あんず)。……あ、そうだ。さっき、神喰(かみじき)の当主さまがうちに来たのよ。鳳凰邸(ほうおうやしき)に来て、ってさ」
「鳳凰邸?うん、分かった」
 鳳凰邸は、神喰(かみじき)一族の所有地の中心にある“運命の歯車”の近くにある邸だ。
 運命の歯車は、皇之邸(すめらぎのやしき)と呼ばれる邸にある。
 その邸の隣の邸だ。
 荷物を置いて、家を出る。
 ――神楽之本邸(かぐらのほんやしき)。
 神楽(かぐら)家は筆頭分家だ。
 他の分家の邸よりも大きくて豪華。
「あ、杏子(あんず)ちゃん」
「梢(こずえ)さん……。お久しぶりです」
 神盛(かんもり)家の梢(こずえ)さん。
 神盛之西邸(かんもりのにしやしき)が神楽之本邸(うち)の隣にあるのだ。
「もう大学生?」
「はい、そうです」
「そっかー。……楽しんでね、大学生活」
「はい」
 楽しめる、だなんて思っていないけれど。
 整備されている道を歩く。
 神達之蔵(かんだちのくら)、神田之北邸(かんだのきたやしき)、白虎館(びゃっこかん)……。
 色々な建物を通り過ぎて、やっとたどり着いた。
「杏子(あんず)?」
「桜羅(さくら)!」
「杏子(あんず)も、おじいさまに呼ばれたの?」
「え、桜羅(さくら)も?」
 鳳凰邸の近くに、神喰中央本邸(かみじきちゅうおうほんてい)があるから、そっちに行くところなんだと思っていた。
 神喰中央本邸には、桜羅(さくら)のお父さんがいる。
「うん。『話したいことがあるから、鳳凰邸に来い』って」
「桜羅(さくら)も、当主さまに呼ばれたんだ……」
「……杏子(あんず)も?」
「うん」
 私たち二人に用事って、一体何なんだろう。