花を生けるはずが、恋が育ちました。〜幽霊部員だった俺が、部員二人の華道部で一軍男子に完全敗北するまでの話〜

 『りょ! 部屋番おなしゃす!』

 送った瞬間、秒で返ってきた返信をみて、スマホをベッドに放り投げた。
 ノリが軽すぎる。見てるだけでこっちの調子が狂う。

 なんなんだよ、あいつ。
 久しぶりに部活に来たかと思えば、用意された見本を見ただけで、なんの迷いもなくハサミを動かして、ものの五分で見本そっくりの花を生けて終わらせる。

 天才肌なのか、ただの器用貧乏なのか。

 俺がどれだけ悩んでも決まらなかったリンドウの角度を、あいつは「ノリと勢い!」とか言って、俺の手に自分の手を重ねて一瞬で決めた。

 そんなサボり魔に、ぬいぐるみを取ってやる俺も大概どうかしている。
 たまたま部活に来ただけ。花を生けるのが上手かっただけ。ゲームの話が少し合っただけ。

 それだけなのに。

 ――また明日な、柊珂。

 別れ際、あのデカいパンダの手を掴んでぶんぶん振ってきたあいつの顔が、「吾妻って噛みそう」なんてガキみたいな理由で俺の名前を呼ぶあいつの声が、頭から全然離れない。

 絶対に何も考えてない。いつもの陽キャのノリで、誰にでもやってる距離の詰め方だ。分かってる。

 「……意味不明。あいつ、マジでなんなんだよ」

 不満を口にしてみても、胸の奥のモヤモヤは消えない。

 シャドギの画面を開いては閉じる。

 ただのサボり魔の陽キャ。
 そう切り捨てたいのに、気づけば二一時までの時間を、俺は指折り数えて待っている。