2.
ペンギンは、悪夢にうなされて目覚めた。
「なんだ今の夢」
ペンギンは、よちよちと机の上に登る。
「どうしたんですか」
向かいからシロクマさんが現れた。
「なんか、ものすごく悪い夢を見たんです」
言うと、シロクマさんは驚いたように、大きな手を叩いた。
「奇遇ですね。僕もです」
「嘘でしょう。同じ夢など科学的にあり得ないじゃないですか」
「ですよね。ちなみに、ペンギンさんが観た夢の内容って聞いてもいいですか。野暮なことだとは思うんですが」
「ホモサピエンスが集団でプールにいて、幾人かは不快な笑い声をあげていました。とてもとても不快で、なんだか自分が仲間から笑われているような気がして、心がキュッとしたんです」
ペンギンは、羽で、胸の辺りを擦った。ドクドクと心臓が音を立てていた。
シロクマさんは、口をあんぐり開けていた。
「ペンギンさん、僕も同じ夢を観ています。ケタケタと数人から笑われて、身動きが取れなくて。金縛りってやつですかね。ところで、僕らのお友達はどこに行ったんですか?」
「どこに行ったんだろう。用事でもあるんじゃないですか。ところでシロクマさん、ここ数日、二人の様子って変じゃなかったですか。どこか、ずっと怯えてるというか」
ペンギンは羽で頭を掻いた。気のせいだっただろうか。
回想していると、シロクマさんは深く頷いた。
「変でした、変でした。どうしたのかって聞いてみたくなるぐらい暗かったですよね。二人でいるときは、楽しくお喋りしていますが、樹くん一人のときは、ブツブツ呟いていました」
「シロクマさん、私も同じです。悠未ちゃん、私に対して呪いをかけてるのかなって考えたくなるぐらい、一人でブツブツ呟いていました。シロクマさん、樹くん、なんて言ってました?」
「ブツブツって」
「違います。内容ですよ。本当、シロクマさんのんびりしてるんだから。ちゃんと話聞いて下さい」
「すいません。ペンギンさん。ペンギンさんほどすばしっこく動けないんですよ。えっと、今度、また落とされるって言ってました。試験でも不安だったんですかね」
「近々のテスト予定はない気がしていましたが」
「ペンギンさん、悠未ちゃんはなにか言ってましたか」
「頑張らないといけない、耐えなきゃいけないって、切迫した様子でした。抜き打ちテストでもあったんですかね」
「あらら、近頃の若者は心配事が多くて困りますね。そのせいで、僕たちの扱いが雑になってませんか。机の暗い場所に放り投げたり、びしょびしょの手で触ったり。生活の土台を地上に鞍替えしたんですから、やめて欲しいですよね」
シロクマさんは腕を組んで、不満を表明した。ペンギンもなんとはなしに追随して、腕を組んだ。そして、ビチョビチョの手で触られるの、本当嫌だよな、と感触を思い出してため息をついた。その瞬間、頭の中でピカンと光るものがあった。
「シロクマさん、夢の中に私たちのお友達はいませんでしたか?」
シロクマさんは、怪訝そうに眉をひそめた後、手で口を抑えた。
ペンギンは続ける。
「なんだか悪い予感がするんです。私たちが観る夢って、良好な漁場の記憶であったり、天敵の居場所であったりだとか、生死に直結する夢が多いじゃないですか。シロクマさんも同じですよね」
「ええ、そうですね。予感は当たる方です。スポーツを観ていて、点入るなって感じた時、大体点入るんですよ」
「私たちは、飼い主兼お友達である二人の夢を観ている。二人に可愛いがってもらえなければ、私たちは死にます」
「ペンギンさん、なにが言いたいんです?」
「お友達に危機が迫っているのではないかということです。お友達が死んでしまえば、私たちもぞんざいに扱われるでしょう」
「いや、ペンギンさん、ちょっと飛躍しすぎているのでは。核心に迫ってないですよ」
「シロクマさん、正しい論理に意味はあるのでしょうか。私たちは生物です。直感は生き延びるために存在しているのだ、と私は思います。だって、適応的でないのなら、必要がないから。直感に従わず、どうやって生き延びるんですか。シロクマさん。勇気を出しましょう。あの不快な笑い声、無視できません」
一息に言い切ったペンギンは、呼吸を整える。シロクマさんは嬉しそうに微笑んでいた。そして、耳を掻きながら恥ずかしそうにする。
「流石ペンギンさん、そう言ってくれると思ってたんですよ。準備はいつでもできていますよ」
ペンギンは頷いた。流石シロクマさん。付き合い長いだけある。
「どうやって、プールまで行きますか?」
「僕がペンギンさんを背中に乗せて、全速力で走りましょう。普段はのろいかもしれませんが、最高速は中々速いんですよ。四足歩行で行きます」
「頼もしいです。シロクマさん」
ペンギンは、シロクマさんの背中に乗った。
ペンギンは、悪夢にうなされて目覚めた。
「なんだ今の夢」
ペンギンは、よちよちと机の上に登る。
「どうしたんですか」
向かいからシロクマさんが現れた。
「なんか、ものすごく悪い夢を見たんです」
言うと、シロクマさんは驚いたように、大きな手を叩いた。
「奇遇ですね。僕もです」
「嘘でしょう。同じ夢など科学的にあり得ないじゃないですか」
「ですよね。ちなみに、ペンギンさんが観た夢の内容って聞いてもいいですか。野暮なことだとは思うんですが」
「ホモサピエンスが集団でプールにいて、幾人かは不快な笑い声をあげていました。とてもとても不快で、なんだか自分が仲間から笑われているような気がして、心がキュッとしたんです」
ペンギンは、羽で、胸の辺りを擦った。ドクドクと心臓が音を立てていた。
シロクマさんは、口をあんぐり開けていた。
「ペンギンさん、僕も同じ夢を観ています。ケタケタと数人から笑われて、身動きが取れなくて。金縛りってやつですかね。ところで、僕らのお友達はどこに行ったんですか?」
「どこに行ったんだろう。用事でもあるんじゃないですか。ところでシロクマさん、ここ数日、二人の様子って変じゃなかったですか。どこか、ずっと怯えてるというか」
ペンギンは羽で頭を掻いた。気のせいだっただろうか。
回想していると、シロクマさんは深く頷いた。
「変でした、変でした。どうしたのかって聞いてみたくなるぐらい暗かったですよね。二人でいるときは、楽しくお喋りしていますが、樹くん一人のときは、ブツブツ呟いていました」
「シロクマさん、私も同じです。悠未ちゃん、私に対して呪いをかけてるのかなって考えたくなるぐらい、一人でブツブツ呟いていました。シロクマさん、樹くん、なんて言ってました?」
「ブツブツって」
「違います。内容ですよ。本当、シロクマさんのんびりしてるんだから。ちゃんと話聞いて下さい」
「すいません。ペンギンさん。ペンギンさんほどすばしっこく動けないんですよ。えっと、今度、また落とされるって言ってました。試験でも不安だったんですかね」
「近々のテスト予定はない気がしていましたが」
「ペンギンさん、悠未ちゃんはなにか言ってましたか」
「頑張らないといけない、耐えなきゃいけないって、切迫した様子でした。抜き打ちテストでもあったんですかね」
「あらら、近頃の若者は心配事が多くて困りますね。そのせいで、僕たちの扱いが雑になってませんか。机の暗い場所に放り投げたり、びしょびしょの手で触ったり。生活の土台を地上に鞍替えしたんですから、やめて欲しいですよね」
シロクマさんは腕を組んで、不満を表明した。ペンギンもなんとはなしに追随して、腕を組んだ。そして、ビチョビチョの手で触られるの、本当嫌だよな、と感触を思い出してため息をついた。その瞬間、頭の中でピカンと光るものがあった。
「シロクマさん、夢の中に私たちのお友達はいませんでしたか?」
シロクマさんは、怪訝そうに眉をひそめた後、手で口を抑えた。
ペンギンは続ける。
「なんだか悪い予感がするんです。私たちが観る夢って、良好な漁場の記憶であったり、天敵の居場所であったりだとか、生死に直結する夢が多いじゃないですか。シロクマさんも同じですよね」
「ええ、そうですね。予感は当たる方です。スポーツを観ていて、点入るなって感じた時、大体点入るんですよ」
「私たちは、飼い主兼お友達である二人の夢を観ている。二人に可愛いがってもらえなければ、私たちは死にます」
「ペンギンさん、なにが言いたいんです?」
「お友達に危機が迫っているのではないかということです。お友達が死んでしまえば、私たちもぞんざいに扱われるでしょう」
「いや、ペンギンさん、ちょっと飛躍しすぎているのでは。核心に迫ってないですよ」
「シロクマさん、正しい論理に意味はあるのでしょうか。私たちは生物です。直感は生き延びるために存在しているのだ、と私は思います。だって、適応的でないのなら、必要がないから。直感に従わず、どうやって生き延びるんですか。シロクマさん。勇気を出しましょう。あの不快な笑い声、無視できません」
一息に言い切ったペンギンは、呼吸を整える。シロクマさんは嬉しそうに微笑んでいた。そして、耳を掻きながら恥ずかしそうにする。
「流石ペンギンさん、そう言ってくれると思ってたんですよ。準備はいつでもできていますよ」
ペンギンは頷いた。流石シロクマさん。付き合い長いだけある。
「どうやって、プールまで行きますか?」
「僕がペンギンさんを背中に乗せて、全速力で走りましょう。普段はのろいかもしれませんが、最高速は中々速いんですよ。四足歩行で行きます」
「頼もしいです。シロクマさん」
ペンギンは、シロクマさんの背中に乗った。



