あおいと呼ぶにはまだ早い

3学期
宮世とは、クリスマス点灯式以来、何もない
僕が見てるだけ

どうやら、2月にある、記録会というのに出るらしく、忙しいそうだ
「俺らとは住む世界が違いますから」
ハヤトが、宮世の噂話をした後は、必ずこう締めくくった


バレンタインの朝
教室に入ると机には、リンゴの飴…
宮世!?
僕は急いで、2-2へ走る
だけど、後一歩の勇気が出ず、入口でモジモジしていると、それに気づいた宮世が、出て来てくれた

「ごめん、これって」
飴をみせる僕
「あげる」
「あっ、ありがとう」
バレンタインだから?
「辞書持ってる?」
「えっ?」
「英和」
「あー持ってるよ」
「貸してもらえる?」


「それで今、2-2に辞書を届けてきた。って訳ね」
ハヤトと卓に、今までの僕と宮世の、飴の話?をした
「宮世、完全に確信犯だな。飴を置いとけば、山中が探しに来るって分かってんだよ」
「パブロフのイヌ」
と卓が呟く
「それか、あれだな、餌付け」
「桃太郎」
「卓?お前、桃太郎を餌付けだと思って読んでたの?」

また、2人の話はズレていく

「山中、桃太郎て言うよりは、白雪姫だよ。リンゴ味だし」
「白雪姫って毒リンゴの話でしょ。僕は、仮死状態になって無いよ」
「なってるよ。宮世見てる時、目がハート」
「恋患い」
「卓、正解!わずらってるわー山中」
「患ってませんー」


昼休み廊下ですれ違った陸上部顧問が
ダンボールいっぱいのチョコを、運んでいた
例えば、チョコを渡したとしても、
僕の気持ちは、あのダンボールの中で
埋もれていただろう

教室ではハヤトが騒いでいる
「バレンタインなのに、チョコもらってないんですけどーー」
クラスメイトの笑い声が廊下にまで響いていた
僕は、ポケットの飴を大切に握っていた


期末テスト期間

「静電気!3回もだよ」
僕は、宮世と廊下で、すれ違うたびに、バチッと静電気が発生した話を、2人にしていた
「だから?
お前は、いいよなー
雛ちゃんと、昨日は、一緒に帰ったらしいじゃん。
こっちは、期末で頭がパンパンなのに!」
言うだけ言って、ハヤトは、すぐに机に向かう
「雛の部活が休みだから、イヤでも時間が被るんだよ!とにかく、3回は多いよね?だって廊下はあーんなに広いのに」
「超常現象?」
卓は、すぐに飛躍する
「そうじゃなくて」

「ちょっと待って!」
卓が、神妙な顔で
「この感じ、前にも見たことある。予知夢かも」

ハヤトは呆れて
「卓、しっかりしろ!山中にとって、宮世は特別で、すれ違うことにさえ、意味を持ちたいんだよ。
山中、宮世を特別だと思ってるのは、全校生徒だ。そして、宮世にとって、お前は、全校生徒の一部」
卓はポツリと
「宮世も柊太朗のこと見てるけどな」
「そんなこと…」
「ないよ!2人ともよく聞け」
ハヤトの饒舌は止まらない
「宮世は、俺ら全校生徒のことなんか、なーんとも思って無い。
卒業して、実業団に入り、日本代表になり、オリンピックでメダルをとっても、俺らのことなんて、1ミリも思い出さない。
感謝を伝えるのは、家族、コーチ、一緒に練習したチームジャパンの仲間だ。
ここは、宮世にとっては、ただの通過点。俺らは、残念ながら記憶に残る景色じゃない」