あおいと呼ぶにはまだ早い

文化祭当日
「誰?は、ウケる!宮世、やるなー。
それで今日は宮世と山中で、ゴミ拾いをするってことね」
僕は、廊下で昨日の、委員会の話をハヤトとにしている
「だけどさぁ、なんで僕なのかな?」
「そんなの決まってるじゃん!女子とやるより、お前とペアの方が害がないだろ」

教室の中は、お化け屋敷の最終確認中
お化け役もする、卓が出てきた

ロジャースのTシャツ、必勝のはちまき、左手に竹刀、右手にはサッカーボール

「変な、怖さだな」
僕はフォローのつもりで、コメントをした

「卓だけ、お化け屋敷のコンセプトが違うんだよなーウチのお化け屋敷、江戸時代らしいよ」
それを受けても、仁王立ちの卓は、揺るがない
「ハヤト、江戸時代に、"スポーツお化け"が出たら怖いだろ」
「うん、別の意味でな。だから、"スポーツお化け"ってなんだよ」
「スポーツの化身だよ」
「ありものみたいに、言うなよ!」

いつもの、アホなやり取りが始まる

「スポーツってなんだよ、広過ぎるだろ。せめて、球技の化身とか」
「ハヤト、歩み寄って、余計に変になってるよ」
僕は熱くなりだした、ハヤトの服を引っ張る
卓はポーカーフェイスのまま
「たしかに、球技に絞るのは行き過ぎだが、ハイキングやラジオ体操が入ってきたら、違う気がする」
「そうだろ、広過ぎるよ。スポーツの化身には、担いきれない!」

ハヤトと目が合う

「「何を?」」
僕らは、同時に言って吹き出してしまった
卓はポーカーフェイスを崩さない

背後に視線を感じた


「仲いいんだな」
「…うん」
宮世君と僕はゴミ袋を持って、校内を歩いている
始まったばかりで、ゴミなど無い
無言の2人…この空気…苦手

「あっ、1ヶ月前くらいにダンボールぶつかったよね?ごめん、大丈夫だった?」
「なんで山中が謝んの」
「…はい」

気まずい…
左側の視界に、入ってくる宮世君は、特に気にしてる様子もない

「やっぱり、ゴミ落ちて無いし、後10分あるけど、終わりにしようか?」
僕は、宮世君への気遣いのつもりで、そう提案した
「山中って、サボったりするんだな」
と、ニヤリと笑われた

えーサボらないタイプだけどぉ
だって、この空気どうすんの!
後10分…
あっ、ハヤトの噂話!

「宮世君」
僕は、宮世君の横顔に話しかける
「宮世でいいよ」
宮世君は、足元のゴミを探しながら言う

「あ、ありがと…宮世って、インターハイ4位だったんだね。すごいね」
「1位狙ってたから」

ヤバい!
挽回!

「でも、日本4位って、やっぱり凄いし、なかなか出来ることじゃないし、カッコいいし」 
僕は必死で褒め言葉を探す
宮世君は立ち止まる

「それ、本気で言ってるの?」

振り返ると、真顔の宮世君と目が合った
周りの生徒の、ひそひそ声が聞こえてくる
「ケンカ?」とか「宮世君カッコいいー」とか「宮世君と誰?」とか

早くこの場を立ち去りたい

「本気!超本気!凄いし、僕にはできないし、カッコいいし」
早口で、パーっと褒めきった
宮世君はニコッと笑って
「ありがと」
と言ってくれた

柔らかい表情
宮世…ってあんな顔、出来るんだな


教室に戻ると卓が、廊下で呼び込みをしていた
"スポーツお化け"は、却下されたらしい

「僕らは、どこか見に行く?」
「腹減ったしな」
ハヤトと僕は、他のクラスを回ることにした

2階の窓から中庭を見下ろすと
人、人でごった返している

ハヤトは、廊下を走って中庭に向かう女子に、声をかけた

「中庭で何してるの?」
「2-2の屋台。今、宮世君が店員なんだって」
ハヤトは、振り返って
「だって」
と、呆れたように言った

そういえば、さっきのゴミ拾い
いつもより、視線を感じることが多かった様な…
そういうことか
宮世は、いつも、こんな視線の中にいるのか
「大変だね」

「えっ?何が?」
「何でもない、向こうの焼きそばに行こうか」
「だな」
ハヤトが歩き出す

僕は、もう一度、窓から中庭をのぞく
一瞬、宮世と目が合った気がした