あおいと呼ぶにはまだ早い

中間テストの惨敗を嘆く暇も無く、文化祭準備は進められる
明日は、文化祭本番

「山中、委員会だろ、もう行っていいよ」

放課後、教室の飾り付けが急ピッチで始まっている
僕は、美化委員
文化祭での活動について話合いがある

廊下では床にダンボールを広げて
卓がカボチャの胴体を仕上げている
カボチャの胴体は
どっしりと腰を落としたゴールキーパーだ

「なんで」
つい、口から出てしまった
「…」
卓の、真剣な目
「いや、なんでもない。行ってくる」

僕は急いで、委員会のある教室まで走った

 
ギリギリセーフ
教室には、長机にパイプ椅子
席は、いくつも空いている

「では、始めます。明日から」
 
入口の引き戸が開く音
全員の視線が入口に集中する
そこには…

みやせくん?!

宮世君は、スタスタと、全員の視線を引き連れて、座った

僕の隣に!
なんで?
全員の視線が僕に移る

そうだよね?
知り合い?とか思ってるよね

全然知らない
入学してから、1回もしゃべったこと無いから
 
前では委員長が
「皆さん、宮世君は、委員会活動を免除されているんですが、今回、美化委員に参加してくれます」
と、説明するが

だから、なんで?
みんなの不思議そうな顔

視線を集める宮世君は、我関せずな様子
委員長が進行するが
メモを取るにも、肘が宮世君の腕に、ぶつからないか?気になって仕方ない
だって、絶対半分じゃないよねぇ?机…
宮世君が7、僕が3

宮世君は僕に背を向け、ほおづえをついている

華奢な背中
横顔だけでも、女子達が騒ぐのが
よく分かる

大きな目
髪は、サラサラでセンター分け
前髪が目に入りそうだが、長いまつげが防いでる
スラっとした足は、通路に投げ出されている

「ですので、明日は二人一組で、30分づつゴミ拾いをしましょう」

…二人一組…2人?
僕はつい、宮世君を意識してしまう
隣同士で、ってことになったら…

急な展開に、僕の心臓がうるさい

「では、どうやって二人一組を決めますか?」

「俺は、コイツで」

急に、宮世君が発言した

俺は、コイツで
…コイツ
…コイツって

僕を見てるよね?

目が合ったまま、宮世君は

「だれ?」
と言った

誰?
御自分で指名されてますけどー?

僕は、小声で
「山中です」
と答えた

宮世君は立ち上がり
「俺は山中とで」
静かな教室に
ハッキリとした宮世君の声が響き渡った

どういうこと!?

立ち上がった瞬間
宮世君の左手は僕の右手に触れた
僕の全神経が右手に集中する

長い指が、僕のちんちくりんの小指を押さえていた