あおいと呼ぶにはまだ早い

「宮世、数学どうだった?」
今日は、35度を超える暑さだ
体育館は天国だー
「だから、ダメだった。けど気にしてないから、しゅうも、気にするな」
「だけどー」
僕は、準備する宮世の隣で
モジモジしている

だって宮世とは、違うんだよ
僕も期末テストなんて、どうでもいい!って言いたい
「これ」
落ち込んでいる僕の目の前に、宮世の手から、キーホルダーが差し出された

「えっ、どうしたの?」
昨日、見つからなかったのに…
「たまたま、家の近くで見つけたから」
僕はキーホルダーを受けとり、じっくりと見る
そこには、5センチほどの柴犬のぬいぐるみが
ゆらゆらと揺れていた

可愛すぎ

しゃがんだままの宮世の視線を感じる
感想を言わなきゃ
だけど幸せすぎて、今、喋ったら、変な声が出そう
顔もニヤついてるし…

「デカすぎか、嫌だったら」
と、宮世の手が、僕の柴犬を回収しにきた
僕は、急いで、柴犬を脇の下に隠し
「これ、かわいい。大好き」
嬉しさがだだ漏れの、ニヤつき顔で宮世に伝える
宮世に引かれてないと、いいけど…

宮世の長いまつげが微動だにしない
えっ、引いてる?
宮世は、目線をシューズに移し、紐を結びながら
「よかった」
と、呟いた
少し口角が、上がったように見えた

よかったなら、こっちもよかったけど…
僕は、キーホルダーの柴犬を見る
見れば見るほど、味がある顔
自分の鞄につけてみた
存在感のある、いいキーホルダーだ

お揃いって、自分が、お揃いだよーって、言いふらさなくても、その物自体が、言いふらしてくれるような物がいい

「宮世のは?」
「鞄の中」
「つけていい?」
「あぁ」
僕のつけたキーホルダーをチラッと見て、宮世は軽く走りに行った

僕は、宮世の鞄の中をガサガサと探す
鞄の中もキチンと整理されていて、僕がガサガサしたことで、散らかった
あった!

宮世の柴犬は、首に黒いリボンを付けている
僕のは白
宮世の鞄に付けたあと、2匹を並べる
仲良く揺れる2匹を見て、ふと、お似合いだと思った
なんでもいい2匹の設定だけど
僕には、親子にも友達にも見えない
それは、僕の願望が入っているのかもしれない

宮世にも、この2匹が
お似合いに見えていたとしたら

「見すぎ」
「えっ?」
2匹を見ながら物思いにふけっていると、
宮世に、声をかけられた
宮世は、しゃがみ、自分の柴犬を、もふもふ触る

「ほら、柴も言ってるぞ、見すぎだぞワンって」
と、照れながら、柴犬を揺らした
照れてる宮世は、柴犬より、愛らしい
僕も、自分の柴犬を持って

「そうだなワン、ずっと見られたら恥ずかしいワン、宮世をずっとワン、見るっていう仕事をワン、忘れてるワン」
と言った
「長文(笑)」
「そっちはゴロが悪かったよー」
「ゴロ悪いのは、しゅうもだろー」
僕はキーホルダーを揺らしながら

「十四番目のできること、教えて欲しいワン」
とお願いした

もっと、力になりたい
もっと、仲良くなりたい
もっと、近づきたい

宮世は真面目な顔になった
僕も改まって、正座した
よし!なんでこい
宮世の役に立ちたい!

宮世は、少し間を置いて
「俺はもう本当に、大丈夫。…大丈夫だから」
「…」
僕は、宮世に突き放された!
そんな感覚になった
もう大丈夫…
僕と宮世の間に、正式に、線を引かれた
これ以上入ってくるな!と
宮世には、入ってはいけない、領域があることは薄々、気付いていた
だけど僕は、それに、気づかないふりをしていた

僕は、逃げ出した

「しゅう」

宮世の呼び止める声
現実が怖くて止まれない
僕だけが、宮世をこんなに
こんなに、好きで
もしかして、宮世も?勝手にそう思って
浮かれてドキドキして、
嬉しくて、ニヤニヤして、
皆の憧れの宮世を独り占めしてるって優越感に浸って

僕ってバカ過ぎる