あおいと呼ぶにはまだ早い

グラウンドは、ムッとする暑さ
宮世は――いた!

僕の胸は高鳴る

"見かける"ではなく
"見ていられる"宮世に
気を取られながら、ベンチに鞄を置く

30メートルは離れているから、見ていてもバレない
宮世の走る姿をちゃんと見るのは始めてかも…
おっ、……走った!

――僕は、息をのんだ

風を切って走る宮世は、大きく見えた
競走馬の様にダイナミックだ
グングン進む宮世は、力強い
自然と調和するつもりなど毛頭ない
堂々と我が道を行く
宮世の人生とリンクする走り

ゾクゾクした
胸が握りつぶされるほど苦しい
 
ヤバ!こっちを見た?
視線をそらした先は職員室
斉藤と目が合った
分かったよ、走ればいいんだろ

僕は、グラウンドを走り始めた
1周500?600?の、このグラウンドを
だから、何周したら、帰っていいんだよ
違うか…
時間?
時間なら、もっとゆっくり走った方が特だよな
いや…
量?でも時間?でもなければ
質?
質だと!真剣に、早く、走れと!
えぇー、疲れるー

僕は、記憶した宮世を思い出す
胸の痛みをしずめながら…

サラサラだった前髪に、少しうねりがあった
パーマを、かけたのかも?
制服では分かりにくい体格
ガリガリでは無く、綺麗な筋肉をバランス良く、
まとっている
全身、日焼けしているが、本来は色白なのが、
たまに見える、襟あしで分かる
背は、僕と同じくらい
多分80は無い
だけど、足が長いため、僕より、高くみえる

宮世のことを考えていると、あっという間に30分は、過ぎた
流石にもういいか
僕は、ランニングをやめて、ベンチに戻りながら、宮世を視界の隅に入れる

話しかけようか
いや、何を話す?

共通の話題など無い


「すげー、あの宮世と、一緒に練習したの?」
「ハヤト、話を聞いてた?こっちは邪魔にならない様に…」
「見てたの?また」
「またって」
「いつも、見てるじゃん。コソコソと」
「コソコソって」

昨日の居残りの、てん末をハヤトと卓に話している
「宮世をコソコソ見ている柊太朗は、正解だ。キャーキャー言ってる女子は、睨まれてるからな」
「よかったな、山中。宮世を攻略できて。
攻略法をみんなに、ポチッと教えてやったら」
と、ハヤトは僕の携帯を操作する
「攻略って」

昨日の全速力の宮世を脳裏に浮かべる
全方位どこをどう切り取っても、全力な宮世に
僕の心は持っていかれた

「山中、この飴って」
「あー何でもない!」
僕は急いで、ハヤトから携帯を取り返した

昨日僕は
宮世から貰った、三つの飴を
携帯の待受にしていた