私はベルガモットたちに説明した内容を、理由としてメールに書き足す。
「雨村さん、お願いします!」
送信した後、PCに向かって両手を合わせる。この対応をしてくれるかどうかで、恐らく最後まで残ってくれるユーザーさんの数がきっと変わる。
(そうすれば、私の書く最後のシナリオを見てくれる人も……!)
「そこまでわかっていながら、なぜ今まで声を上げなかった、愚物」
突然背後から飛んで来た四人目の声に、私はびくんと身を強張らせた。
「ちゅ、チュベローズ。いつからそこに……」
ソファにゆったりと腰かけたチュベローズは長い足を組み、気だるげに頬杖をついていた。銀髪の間からエメラルドの瞳でこちらを冷ややかに見ている。
「か、勝手に部屋に入ってこないでよ」
「何度も声をかけたが、おしゃべりに夢中で気付かなかったのはお前だ、愚物」
また愚物って言った、むかつく。
「お前はこの世界が崩壊に向かう理由に気付いていた。しかし、改善に向かう手立てを何も講じなかった。責任者に伝えようともしなかった。自身の命がかかるまでだ。何故だ」
(う……)
イケボの厳しい言葉って、なんでこんなに突き刺さるんだろう。
「わ、私は一介の雇われシナリオライターに過ぎないもん。関わっているのは物語だけ。世界を構築するシステム面に口を出す権利なんて本当はないんだから、仕方ないじゃない」
「ふん」
チュベローズは心底呆れたと言わんばかりに鼻を鳴らす。
「この状況になって初めて、しっかり意見が言えているようだがな」
「それは……」
「命がかかっているからだろう。つまりこれまでは、所詮他人事だったというわけだ。この世界を作り上げた創造主の立場でありながら」
チュベローズの言葉がいちいち胸に突き刺さる。冷ややかな刃に、胸が切り裂かれる。
「やめろ、チュベローズ!」
強めの口調で言って、ベルガモットが私を庇うように前に出た。ネロリとクラリセージも私をチュベローズの視線から遮るように側に立つ。
「千枝はやれるだけのことをした。だが、さらに上に立つ者の意図によって、どうしようもなかったのだ。これ以上彼女を責めるな」
「そうそ。女の子いじめるなんて、かっこ悪いよ」
「チュベローズ、ただ創造主さんを責めたくて来たのなら、出て行ってよ」
チュベローズは皮肉っぽい笑みを浮かべると、スッと立ち上がる。足の長さにちょっと見とれてしまった。
「……そうやって甘やかして、事態が好転するといいのだがな」
光を受けた銀髪を輝かせながら、チュベローズは部屋から優美な足取りで出て行ってしまった。
「……っ」
私はその場にへたり込む。胸が本当に痛かった。深く、深く、刃物で抉られたように。
「千枝!」
すぐさまベルガモットが、私の側に膝をついてかがむ。
「大丈夫ですか?」
「……ん」
チュベローズの言葉が的外れであれば、ここまで傷つかなかっただろう。全て図星だから、何も言い返せなかったし刺さったのだ。
「顔色が悪いね。ベルガモット、創造主ちゃんをベッドに運んであげた方がいいよ」
「そうだな。千枝、失礼する」
返事をする間もなく、私はベルガモットの逞しい腕に掬いあげられる。そして速やかにベッドへと運ばれてしまった。
「創造主さん、今、ハーブティーを入れるから少し待っててね」
「……うん」
三人が優しくしてくれるのも、今は少し辛かった。
(私は、彼らにこんなにしてもらえる立場じゃないのに……)
その時、軽やかな電子音がメールの着信を告げた。
(あ……)
―――――――――――――――――――――――
風間ちぐさ様
システム面に関するご提案、ありがとうございます。
こちらに関しましては、社の者で判断いたしますので、
風間先生はシナリオの執筆に集中してください。
株式会社クプアス
雨村美果
―――――――――――――――――――――――
メールからは少し怒っているような気配が伝わってきた。
(口を出すな、ってことかな……)
「雨村さん、お願いします!」
送信した後、PCに向かって両手を合わせる。この対応をしてくれるかどうかで、恐らく最後まで残ってくれるユーザーさんの数がきっと変わる。
(そうすれば、私の書く最後のシナリオを見てくれる人も……!)
「そこまでわかっていながら、なぜ今まで声を上げなかった、愚物」
突然背後から飛んで来た四人目の声に、私はびくんと身を強張らせた。
「ちゅ、チュベローズ。いつからそこに……」
ソファにゆったりと腰かけたチュベローズは長い足を組み、気だるげに頬杖をついていた。銀髪の間からエメラルドの瞳でこちらを冷ややかに見ている。
「か、勝手に部屋に入ってこないでよ」
「何度も声をかけたが、おしゃべりに夢中で気付かなかったのはお前だ、愚物」
また愚物って言った、むかつく。
「お前はこの世界が崩壊に向かう理由に気付いていた。しかし、改善に向かう手立てを何も講じなかった。責任者に伝えようともしなかった。自身の命がかかるまでだ。何故だ」
(う……)
イケボの厳しい言葉って、なんでこんなに突き刺さるんだろう。
「わ、私は一介の雇われシナリオライターに過ぎないもん。関わっているのは物語だけ。世界を構築するシステム面に口を出す権利なんて本当はないんだから、仕方ないじゃない」
「ふん」
チュベローズは心底呆れたと言わんばかりに鼻を鳴らす。
「この状況になって初めて、しっかり意見が言えているようだがな」
「それは……」
「命がかかっているからだろう。つまりこれまでは、所詮他人事だったというわけだ。この世界を作り上げた創造主の立場でありながら」
チュベローズの言葉がいちいち胸に突き刺さる。冷ややかな刃に、胸が切り裂かれる。
「やめろ、チュベローズ!」
強めの口調で言って、ベルガモットが私を庇うように前に出た。ネロリとクラリセージも私をチュベローズの視線から遮るように側に立つ。
「千枝はやれるだけのことをした。だが、さらに上に立つ者の意図によって、どうしようもなかったのだ。これ以上彼女を責めるな」
「そうそ。女の子いじめるなんて、かっこ悪いよ」
「チュベローズ、ただ創造主さんを責めたくて来たのなら、出て行ってよ」
チュベローズは皮肉っぽい笑みを浮かべると、スッと立ち上がる。足の長さにちょっと見とれてしまった。
「……そうやって甘やかして、事態が好転するといいのだがな」
光を受けた銀髪を輝かせながら、チュベローズは部屋から優美な足取りで出て行ってしまった。
「……っ」
私はその場にへたり込む。胸が本当に痛かった。深く、深く、刃物で抉られたように。
「千枝!」
すぐさまベルガモットが、私の側に膝をついてかがむ。
「大丈夫ですか?」
「……ん」
チュベローズの言葉が的外れであれば、ここまで傷つかなかっただろう。全て図星だから、何も言い返せなかったし刺さったのだ。
「顔色が悪いね。ベルガモット、創造主ちゃんをベッドに運んであげた方がいいよ」
「そうだな。千枝、失礼する」
返事をする間もなく、私はベルガモットの逞しい腕に掬いあげられる。そして速やかにベッドへと運ばれてしまった。
「創造主さん、今、ハーブティーを入れるから少し待っててね」
「……うん」
三人が優しくしてくれるのも、今は少し辛かった。
(私は、彼らにこんなにしてもらえる立場じゃないのに……)
その時、軽やかな電子音がメールの着信を告げた。
(あ……)
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風間ちぐさ様
システム面に関するご提案、ありがとうございます。
こちらに関しましては、社の者で判断いたしますので、
風間先生はシナリオの執筆に集中してください。
株式会社クプアス
雨村美果
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メールからは少し怒っているような気配が伝わってきた。
(口を出すな、ってことかな……)



